夜や寝る前に読みたくなるような短編集を目指しています。ゆるく行きます。
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目次
幸せ探し。
読み切りです。
私、古田 凛(ふるた りん)は夜、寝る前の秘密がある。
みんなには秘密。誰も知らない。
私は今夜も秘密の音楽を聴く。今日の音楽はどれにしようかな。
私はこの|瞬間《じかん》が一番幸せを感じる時間。
音楽を選ぶと次は飲み物を考える。お茶かホットミルクか。ココアもいいかもしれない。
最後に読む本を何冊か選ぶ。地下にある書庫から気分で選ぶ。
そして部屋に行き音楽をかけながら本を読み飲み物を飲む。
でも、こうしていると自分は透明人間で誰にも知られずにいなくなってしまうんじゃないかと思ってしまう。
そんな時普通の人なら人の温もりを感じにいくとか寝るとかをするのかな。
でも私にはそんな人はいない。
親もいるし学校では友達もまあいる方だとは思う。人は「恵まれている」とか言うけれど私にはその一文字でも似合わない。
何処でも「いい子」の仮面を被り続けているからきっと誰も私の本心なんか知らないんだろうな。
私はその一言を言えずに何年も何年も生きてきた。
「辛い」
何年も溜めた一言は自分だけの空間で仮面を外している時にぽつりとよく出てくる。
そうすると決まって涙が溢れ出てくる。
私は考えるのも辛くなりたまに現実から逃げ出したくなる。その逃げ場がこの時間。
曲に惹かれるように自分の体が翼が生えていて飛べるのではないかと錯覚しそう。
私は引き出しを開け手紙を2つ書いた。
「拝啓 幸せを追いかけてた頃の私へ」
と。
そしてもう一つはーーーー
---
数年後。
私はあの手紙をすっかりと忘れていた。
でも。昨日、昔の私が伝えに来てくれた。
「拝啓 幸せを追いかけていない頃の私へ」
と言う手紙片手に。
「はい、これ。忘れ物。」
「幸せを追いかけていない頃の私、幸せをもう一度追いかけて。幸せはずっと近くにあったものだから。」
一文だけ書かれた手紙。でもそれで私は気づいた。
私は引き出しから便箋を2つ出す。
「拝啓 幸せを追いかけてた頃の私へ」
そして
「拝啓 幸せを追いかけ直した頃の自分へ」
届くかな、私の気持ち。
私は幸せを探して走り出す。
読んで頂きありがとうございました!
キミと君と月と私。
読み切りです。
私,月夜 狼(つきよや ろろ)はあの古びた思い出ーーあの一瞬のようで永遠でもあった夜のことを思い返していた。
その時の私はよく分からなくて。
いや、分からないから無邪気に笑って。
時間は不公平で過ぎ去っていくばかり。こっちの事情とかも無視して過ぎていく。
届きそうなのに届かないこの距離。
今夜も抑えられない気持ちと矛盾する。
君を邪魔したくなくて。君のその笑みを壊したくなくて。
でも後悔はしたく無い。
自分は絶対に騙せない。
また月が全てを奪っていく。
忘れたいのに。
忘れられない。
君にこの訳を気づいて欲しく無い。
この夢のような瞬間が覚めても君を探してしまいそうで。
私がついた嘘に気づいても、あの涙の意味に気づいても。
全てを奪っていった月のように変わらなく君を照らす光になりたかった。
君はきっと全てを知っていた。なのに知らないふりをして、また自分を傷つけて。
---
あの夜は1番泣いて笑って、1番永遠のような時間を過ごした。
全てを知っても変わらなかったキミの事がまだ追いかけてしまって。探してしまって。
時間は本当に不公平で届いたのか届いてないのかも分からない。
抑えきれないこの思い。
自分に素直になる、予定だったのに。
でもキミへも君にも邪魔は出来ない。
運命にでも逆らって全てを吸い込んだ月のようになれたらどれだけ楽か。
もう後悔はしたくない。絶対に自分は騙せないから進まなくちゃ。
また月が全てを照らしていく。
もしあの時私がついた嘘に気づいても、私があの時流した涙の意味をわかっても。
あの夜の月のように変わらず君を、キミを照らす光であれたらな。
本当に、分かってるんだよね。知ってるよ。でも君もキミもあの月も私が照らせるのなら。
私は君に会うために息を吸う。
キミに会う為に走り出す。
そしてーー
月に会う為に空へ飛ぶ。
読んでいただきありがとうございました!
bad day.
読み切りです。
上手くいかない日は本当に何もかもが上手くいかないという事が今日の運の悪さからよく分かった。
私、木実(こみ)は何もかもが今日は上手くいかなかった。
友達とか、みんなは調子が良さそうなのに私だけが気分は下がりっぱなし。
気丈に振る舞ってみるけど全然元気は出ないし。
君は何をしても振り向いてはくれないし。
親には怒鳴られちゃうし。
もう誰かに邪魔されてるんじゃないか、というところまで妄想が広がってしまう。
そんな自分に嫌気が差す繰り返し。
最悪すぎる今日。
この分明日はいい日になるよとか友達は言うけれど。
本当にそうなるの?
今日は悪い日。
この言葉を何度呟いたか。
そんな時は叫ぶ。叫んで叫びまくる。そうするとギリギリの所で耐えれるのかな?
---
君に彼氏ができたよとか。
聞いてもないのにわざわざ教えてくる友達が正直鬱陶しい。
聞いてもないのに教えてこなくていいよ。
この一言が出てこないのが私。
何を聞いてもぼーっとしている今日も何をしたってだめ。
歌詞を書いてみたり、小説を書いたりしてみてもゴミ箱行きばっかりのものしか書けないし。
神様はいつも意地悪で。
私にだけこんな日を多く作る。
何でなの?
この質問を何度したことか。
私にも、明日くらいは見方してよね。
言えたらいいのに。
---
神様は信じるものしか救わない。
いや、信じるものすらも救わないのかもしれない。
でもね、
ちゃんと救ってくれたよ。
ちゃんと今日は良い日。
お陰で今日は気丈に振る舞わなくても済む。
心から笑って過ごせる日。
読んで頂きありがとうございました!
今、大空の下で
読み切りです。
今日も一瞬で閉ざされる空を見上げて。私はーー
---
私、美空(みそら)は答えを探し求めるたびに。何度自問自答したことか。
いつの日か笑えるように。笑うために歩き出す。少しづつでも。
虹が掛かる空。
光射す方には何がある?
霞む空を少し睨んで掴み取るためにも。
「掴み取れるさ」
って君は言うけど。新しい今日は認めてくれなくて。
諦められない、どんな時も。
美しい未来は儚いけど。辛い過去は強く残る。
でも、私たちが生きているこの時代は。この瞬間は美しく強いはず。
---
この光景。この空気。私は心に刻む。
何度でも挑む。もう、チャンスは逃したくないからーー
光も影も輝く雨が連れて行ってくれる。
でも、降り止まない雨は無くて。痛みを残して消えて、散って。
---
「今は美しい」
君は言うけど。美しくても次の瞬間には霞むかもしれないのに。
雨が降り続く空の下光射す方を私は強く睨む。
新しい明日はどんな風に待ってるんだろう。
でもーー
私たちが生きているこの|瞬間《いま》は美しいはず。
私は美しい空の下、君を探して走る。
読んで頂きありがとうございました!
星の数。
読み切りです。
しし座、乙女座。あ、あれは夏の大三角?
そういえば今日は七夕。織姫と彦星は出会えてるかな。
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私、星羅(せいら)は夜空が大好き。
望遠鏡から見る星も好きだけど、肉眼で見るぼんやりとした空も好き。
夜空は吸い込まれそうなくらい美しい。
でも、その分殆どが黒と白で私がそっと消えるような気もしていく。
七夕、たなばた、タナバタ、TANABATA。七夕の一言でも印象は大きく変わる。
私は窓に駆け寄る。
家は23階建てのマンションの最上階の端。
屋上のすみっこは私の隠れ家。
そこからは星空が1番綺麗に見える。
私はコンクリートに寝そべり空を眺める。
程よい暖かさが心地よい。
上を見れば満天の星空。下を見れば人のざわめき。
「何で星羅ちゃんは空が好きなの?」
何度聞かれたか。
「うーん。なんでだろね」
誤魔化し続けたけど。誤魔化しきれないのが自分の心。
「現実逃避」
漢字にすると4文字。声にだしたら7文字。
たったそれだけなのに。私はずっと苦しめられた。
でもーー
星空は大好き。
吸い込まれそうで。自分を救ってくれそうで。
私は手すりへ駆け寄る。
今日の星空を見るまでは今日こそは、とか思ってたのに。
現実から確実に逃げる予定だったのに。
でも。
私はもう少し。
いや、もっと。
この星空を見ていたいみたいだから。
読んでいただきありがとうございました!
そこにいた。
読み切りです。
永遠なんて物は無いって。
あの瞬間私は全て分かっていたはずなのに。
---
私、永那(えな)は昨日起きたあの事について頭を占領されていた。
届くはずもない雲に手を伸ばしてみたり。
でもーー
触れられた瞬間千切れて消えて。
もう少し君と笑っていたかった。
あの日は自然に出来なかった。
君が、私が振り向いた。
でも、もうそこにはいなかった。信じたくない|現実《いま》に涙が溢れる。
君と分け合った過去。独り占めになった未来。
太陽が慰めに来るけど、私はそれすらも無視する。
寂しく響くアラームの音が遠くで聞こえる。
---
目が覚めたらこの現実という名の悪夢から醒めますように。
願っても聞き入れる訳が無いのにーー
もし、悪夢の中から醒められなかったら答え合わせから、君と私で始めよう。
---
でもね、まだ君と居たいな。
笑い合いたいな。
一緒に頑張りたいな。
明日になれば何事もなかったみたいに君が隣にいるような気がする。
手を伸ばしても届かないのに。
夕焼けは暗闇を連れてくる。
今、私は寂しさを抱えたまま暗闇を迎える。
確かにそこにいた。のに。
---
居たいな。まだ君と居たいや。
会いたいな。
明日、どこにも君は居ないんだ。
でも、確かに君も私もそこにいた。
読んでいただきありがとうございました!
共鳴
読み切りです。
私はーー
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悲しいことがあると私、舞(まい)は夜道を一人で歩くのが癖。
背中を丸め、俯いているので知り合いにあっても絶対にバレないし誰からも怪しまれない。
行くあてなんかはないのに。
誰かの生活音や光のなか私はどこかへ行く。
すれ違う名前も知らない見ず知らずの人達。
私の事情なんかは知らずに楽しそうに笑い合ったり家族が待つ家へ急いだり。
少しだけでも私のこの辛さを分けれたら。
私は少しでも楽になるのかな、
信号を待つ間だけでも。
少しだけでもいいから。
察して欲しかった。
私は気づいたら泣いていた。
誰だってあるはずなのに。
見ず知らずの通行人は何も知らない顔をして通り過ぎていく。
理由ははっきりとは思い当たらないのに。
涙が溢れてくる。
そばにいるのに遠い君のせいで。
言葉を交わさなくても。
心は通じ合ってる訳でもないのに。
勝手に心が共鳴しだす。
---
君が信じてこないこの世の中も。
思ったより愛に溢れてるのかもしれない。
話しかけては来なくても。
世界中の誰かは君のことを考えて幸せを願ってるかもしれないのに。
だからーー
1人では負けそうな突然やってくる悲しみでも。
一緒に泣いてくれる誰かが、君がいて。
乗り越えられるようになってる。
いつのまにかーー
心は通じ合うはず。
---
抱え込んだ憂鬱とか。
胸の痛みとか。
理由はあるのに思い当たらずにまた涙が勝手に溢れる。
何も気づかないふりをして涙を流したかった。
読んでいただきありがとうございました!