穏やかなある日のこと。
戦闘異変で活躍した6人が行方不明になった。地名伊代によると、異次元にいるという。いますぐにでも行きたいが、そこに行くのは不可能。強い結界がはられているため、どう足掻いても入り込めない。
伊代、星羅、幽以、草花、夜姫の5人は異変を解決するために異次元へと向かう。
続きを読む
閲覧設定
名前変換設定
この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります
1 /
目次
異変解決! 〜異次元消息異変〜 壱
「で、遊びに行くの?」
「はい」
由有さんが地霊殿に遊びに来てくれた。さとりさんの許可も取れたから、いまから遊びに行くのだ。
わたし・幽以はいまから泡影界へ行くのだ。紅さんとか、ムーンさんとかに久しぶりに会いたいな。
そう思い、わたしは泡影界にやってきた。
「久しぶりだなぁ」
「ま、ゆっくり見物していきなさい。時間はたっぷりあるからね」
一週間休みをもらえたんだから、思う存分楽しもう。
「きゃっ!?」
由有さんの悲鳴が聞こえた。振り向くと、闇があって、そこへ由有さんだと思う手が吸い込まれてゆく。
そのことを認める頃には、もう闇そのものが消えていた。
「由有さんっ!?」
とにかく、紅さんのところへ。ムーンさんのところへ。花音さんのところへ行かなくちゃ。
---
「昼食のご準備ができましたよ〜。…あれ?ムーン?」
もうムーンを「お嬢様」とか呼ぶことはなくなった。メイドというか、同棲してる友達みたいだった。
「昼食!」
食いついてきた彼女・和川堂故。堂故はご近所さんだが、いまは堂故との家をくっつけておっきな家にしている。種族は妖怪で、能力は川を紡ぐ程度の能力。
「ムーンに言ってるんだけど?」
「あ〜、ごめんごめん。っていうか…ムーンはいなくない?」
「そうなのよねぇ」
ムーンが勝手に外出するなんて、あったのかな。でも、まだ一緒に住み始めてから何ヶ月も経ってないし…
---
「こんにちは、文ちゃん」
はなねクリニックに遊びに行く。お目当ては病気の治癒ではなく、文ちゃんと花音さんだ。
がらんとしているクリニックは、真っ白。
「…文ちゃん?花音さん?」
「文っ!!」
花音さんの声だ!
わけもわからず、声の場所を探しに行く。
「いたっ、花音さん!!」
闇に吸い込まれそうになっている花音さん。
「異次元…にっ…」
「異次元?どういうことですか!?」
そう言っている束の間、花音さんは吸い込まれて、跡形もなく消えた。
---
伊代に集められたわたしたち5人は、戸惑っていた。わたし・茨木夜叉鬼姫は、さっき紅を探していたところなのだ。
「いなくなった人がいると思うのじゃ。ついさっき」
「わたしも。わたしのところは、由有さんが。一緒に遊ぼうってなってたのに。闇に吸い込まれて」
「え!?わたしのところもです!花音さんが。異次元、って。文ちゃんもたぶん」
「わたしのところはムーンが。闇、は見なかったけどそうなってたのかも」
「紅もいなかった。探してたけど、集まれって言われたから」
「実は、儂のところもサニーがいなくなってたのじゃ」
由有、紅、ムーン、サニー、花音、文。
この6人の共通点と言えば__
「__戦闘異変」
「え?」
「戦闘異変で、解決した6人」
そうつぶやいた。
「まさか、またみつが?」
「嘘!」
とりあえず、行くしかないよね…
異変解決! 〜異次元消息異変〜 弐
伊代さんの能力で、わたしたちはみつさんのところへ来た。
花音さんが吸い込まれてゆく光景を見たとき、なかなかダメージがきつかった。でも、戦闘異変?を解決したという6人。みつさんの逆襲と考えれば納得がいく。
でも、今回は本当に「欲を操る程度の能力」で異次元に放り込むことができるのだろうか。みつさんは魔法使いではなく鬼だし…
そんな思考がぐるぐる頭を駆け走る。
「あそこにいるのがみつじゃ」
伊代さんがそう教えてくれた。
「ふぇぇえ〜?どうしたのぉ?」
「はぁ、また酔ってるのね」
また、というあたり、みつさんはいつも酔っているらしい。
「お主が起こした戦闘異変。その異変を解決した6人が異次元へ、行方不明になっておるのじゃ。お主が関係しているのか?」
「冗談じゃないなぁ。あたしは関与してないよぉ。異変の元凶が、あたしの逆襲みたいに見せかけた。それだけでしょぉ」
「ふぅん…本当?」
「そうだよ〜」
酔っているあたり、だいぶ疑わしいけど…
「んじゃ、取り敢えず、信じる方向性で。でも、見当もつかないわね」
「危険森のあたりに、そんな能力、持っている人はいないと思う」
「それか、協力者がいるか。協力者がいれば、実行犯と計画に分かれてやることができる。これは、不思議なことじゃないと思うわ。ムーンみたいに、いろんなものを操ることもできるし」
じゃあ、一体誰が?
「こんにちは」
「わ?…えぇっと…」
「座敷堂李子。由有は?」
由有さんのことを知っているんだ…
といっても、わたしはまだまだ新入りだからな。
「李子…さん…?」
「ひょっとしてだけど。あなたが草花?」
「はい」
「あの異変の時の」
あ、と思い出す。あれは申し訳ないことをしてしまった。
「すみません」
「いえ、いいの。それより、ヒントを与えとくね。彼女は異次元に放り込む能力を持っていない。並々ならぬ魔力の持ち主だから」
「え…?」
何を言ってるんだろ。
「じゃあね」
ふっと、李子さんは消えていた。
異変解決! 〜異次元消息異変〜 参
「あ…ここは?」
気づけば、わたし・由有は不思議な場所にいた。幾何学模様がずらりと、四方八方に描かれている。彷徨っても彷徨っても無限空間。でも、お腹もすかないし眠くもならない。
「おい、由有。これ、異変か?」
「そうみたいね。なんとか空間を捻じ曲げられないかしら…飛符『天駆ける一撃』!」
秘技をしてみても、近くみえる壁を足はスルリと抜けてしまう。
「姉さん、ここは一体…新しい異変だ」
「サニー、ひとまず落ち着きなさい。こういう時、如何に冷静でいられるかが、生きるか死ぬかの境目だから」
「むぅ」
隣りにいるサニーとムーンの声、そして文と花音の声もする。
「花音さまぁ、どうにかして捻じ曲げられないですか」
「しょうがないじゃない。伊代みたいに瞬間移動もできないし。わたしたちの能力を覚えてる?空を飛ぶ、放ビーム魔法を使う、星空とかを操る、天気を操る、念じたことを書き起こす、医学に長けている、よ?」
花音の言葉ひとつひとつが、わたしたちの希望を打ちのめす。
「しかも、ここでは時が経っているかわからない。現実と同じスピードか、長いか、早いかさえも」
「…」
どうしよう、とつぶやく。こんなとき、誰なら何をするだろう?
「星符『夜空の魔法姫 スター・ドレイン』!!」
「姉さん、無茶はやめなって!」
ムーンが幾何学模様に攻撃する。もちろん、遠く遠く、星型の弾幕が飛んでゆく。
「なんでそこまでするの、姉さん!?」
「煩いわね、サニー!人間、妖怪、関係なく守る。それが姫の務めだから」
「ったく、姉さんは謎に真面目なところがあるなぁ」
サニーが呆れてムーンの方を向く。
「天符『天象の吟遊詩人 警戒の雷』」
ゴロゴロゴロッ、と雷が降り落ちる。
「一応、わたしも由緒正しきスター・サファイア家の末裔。もう性は変えちゃったけど、血筋はまだ現役だから!」
「我が妹よ、それがいいわ」
フッ、とムーンとサニーが口元を緩ませる。
「魔符『ハイパービーム』!!」
「紅…はあ、あんたまで」
ビームがまた、果てしなく遠いところまで飛ぶ。
「はぁ…ほんと、やなっちゃうわ。人間は不思議ねぇ…出来もしないことを力技でできるようにしちゃうから」
そう皮肉ってつぶやく。
アメジストのように、紫色に輝く幾何学模様。ずうっと続いていく様を、わたしは静かに眺めた。
異変解決! 〜異次元消息異変〜 肆
一体何があったのだろうか…
紅がいなくなったことと、みつの戦闘異変には、関係がなさそうだ。それに、李子は「とんでもない魔力の持ち主」と言っている。わたし・茨木夜叉鬼姫は、聞き込みを行っていた。今、みんなが分かれて捜索を進めている。
パッと思ったのは、ミウェイとかの魔法使い。でも、そんなことはしなさそうだし…
でも、なんとなく、ここには気配がする。ヒントをもらいたいけど、いない。
「こんにちは…」
「わ!?」
どろろろ、という感じに、幽霊が出てきた。わたしですら見慣れない霊。
「皆さん、お困りのようですね…。わたしは日名川みどり…。日名川家の幽霊です…」
日名川家、とはこの世界でいちばん大きな家族のことだ。人間の日名川普、エルフの日名川ルリィ、幽霊の日名川みどり、神の日名川一音、アマビエ(幻想獣)の日名川幸で構成されている家族である。
「みどり、さん?この異変について、何か知らない?」
「知りませんが…わたしの家族はやっていません…わたしの家族と関わりの深い人も…違います…。わかるのは…これくらいです…。頑張ってください…」
彼女はまた、能力を使って存在を消した。
---
「こんにちは」
見るからに若そうな魔法使い、というのが儂の第一印象だった。
淡い紫の髪を、ふんわりと結っている。少なくとも、大妖怪で年老ている儂には無理だと思う。
「お主は…」
「アバター・ドッペルです。どこの落ちこぼれビーム使いじゃなく、わたしは試験に合格してちゃあんとした、正魔法使いです。これでも、分身を作って操ることができるんですよ」
「ふぅん…」
この丁寧な言葉使いは嫌いじゃないが、ちょっと合わない気がする。
「何か異変を知らぬか」
「いいえ、知りません。よければ、分身を作って手伝いましょうか?お金、頂きますけど」
「いや、いらぬ」
最近の若者はお金にがめつい気がする。少なくとも、儂はそう思う。
「じゃあ、こっちは捜索を続けるのじゃ。さようなら」
「そうですか」
去る時に、ドッペルの声が聞こえた。
「チッ、お金を搾り取れると思ったのに」
やっぱり、最近の若者はお金ばかりだ。
異変解決! 〜異次元消息異変〜 伍
いろいろと探し回る。わたし・空踏星羅は、ムーンたちを探し回っていた。
「やっほー!何してるのっ?」
ウサ耳をもつ、男の子?女の子?が話しかけてきた。
「貴方、誰?」
「…わたしは空踏星羅。ムーンの同居人兼メイド…といった感じかしら?」
「なかなか変わったメイドさん。君はどうして危険森に入ろうとしているの?」
深い深い森。黒っぽい緑の葉っぱが生い茂っており、ところどころ枯れている。
「知ってるよね?ここはとっても危険な森なんだ。今日、ミノタさんは休み。花音様もいない。ってことで、まずは実泉から。実泉に勝って、僕に勝って、蒼泉に勝ったら、通してあげるよ。くれぐれも、花音様のご親友みたいにならないでね」
「ご親友…?」
花音さんに、親友なんていたのか。
オレンジの服を着た子は消えて、今度は紫っぽい、水色っぽい服を着た子。この子が実泉さんなのかな。
「私に勝ってみてくださいね。風符『ウィンドブレイク』」
風の塊みたいなのをさっと避けて、攻撃の姿勢を取る。
「星符『|星の流星雨《スターダストレイン》」
「雪符『|雪の華《スノーソアーズ》」
雪に見える弾幕だろうか。わたしは気合で避ける。
「星符『|星の流星雨《スターダストレイン》!!」
「わっ!」
青い星型の弾幕を降らせ、実泉さんを直撃させる。
「強いですね。まだまだいけますが、こういうのはテンポよくいかないとですよね。ということで、次は泉希の番です。頑張ってくださいね」
そう言って、実泉さんは行ってしまった。捨て台詞に聞こえない。
そして、泉希さんも頑張って倒す。さっきと同じような感じ。
「やっほー。僕は蒼泉。さ、頑張ろ」
「は、はい」
なんだか、さっきの人?たちよりも幼い。でも、この子が一番強いのだろう。
「初手で決めさせてもらうよ!岩符『岩の雨』!」
ズドドドドと、岩が降ってくる。
「きゃっ!?惑星符『ウラヌスとネプチューンの衝突』!!」
避けるのにも精一杯。当たるとすっごく痛い。
蒼泉さんを大玉の弾幕で囲む。すると、レーザーが降ってくる。でも、蒼泉さんは30%くらいを避ける。これで倒しきれるはずもなく、まだまだ岩は降ってくる。
こうなったら、毒にしてじわじわ削っていくしか___
「星座符『12の|虹の流星群《レインボーシューティングスター》』!」
この弾幕は、半分の確率で毒になるから…
「うわ…君、結構強いね。入っていいよ」
「あ、そうですか。良かったです」
「僕のことは気にしないでね。じゃあね」
蒼泉さんは通せんぼをやめ、道をあけてくれた。
異変解決! 〜異次元消息異変〜 陸
わたし・幽以は危険森に来ていた。兎医さんたちを撃破し、危険森に踏み込む。
「同居人兼メイドさんが行ったよ。合流できるといいね。くれぐれも、花音様のご親友みたいにはならないでね」
おそらく、星羅さんが先に行ったのだろう。結構強かったから、それなりに強いのかもしれない。
深い森、黒い葉っぱ、ボロボロのツタ。いかにも、おとぎ話にでてくる怖い森、といった感じだ。
ザッ、ザッ、ザッ…
「きゃっ…?」
何やら足音がする。引きずっているみたいな歩き方だ。
「__…君は…__」
「ひっ…!?」
微かな声。怖い、怖い…いっそ戻ってしまおうか…
「__助けて…__」
「助けてっ?」
意外な言葉だった。遭難者?こんな森なんかで…
星の力を使って、明かりを灯す。彼女は身なりはボロボロで、髪もボサボサだった。明かりを頼りに、取り敢えず森を出た。そのとき、明かりに気づいた星羅さんがついてきた。
「この人、遭難していたみたいで」
「へぇー。じゃ、この人は花音さまのご親友なのか」
「私たちで手当しなきゃ」
「その前に水だよ!」
せっせと水を飲ませ、食べ物を与え、ベッドに寝かせる。
彼女が起きたのは10分くらい後。文さんが書いた新聞のコーナーを読み、なんとか手当てを終える。
「花音は!?」
「花音さんのことを、知っているんですか?」
「うん。花音はあたしの親友。XXXX年X月X日、わたしはあの森へ旅に出かけた。未だ解明されていない森の探索に。あたしの趣味はランニングとか、そういうのだったから。でも、出かけたきり、道に迷った。手前のほうには人が住んでるみたいだけど、あたしは彷徨って深いところまで来たみたい。ありがとう」
「はい…」
多分、この人は何も知ってないんだろうなぁ。
そう思いながら、わたしは地縛霊なりに手当てを進めた。
異変解決! 〜異次元消息異変〜 漆
「はぁ…本当、どこにいるのかなぁ」
森育ちのカンは、森についてはよく当たる。危険森にいないと睨んだが、的中した。ぶらぶらと人里を歩いてみるけど、絶対こんなとこにはいない。
「そこのお嬢様」
「はい?」
新手のナンパか…と思って、ふりかえる。
「こんにちは」
教徒の服を着た人だ。わ、逃げなきゃ、と思う。
「はい…ちょっと急用があって…すみません、では!」
「逃げないでくださいね?」
金縛りにあったように身体が動けない。だんだんと、ゆっくりと、彼女のもとへ行ってしまう。
「わたしの能力は人を誘う程度の能力ですから。まあ、ちょっと聞いて下さい。わたしはプロジョン・レリジオ」
「ひっ!?」
逃げなきゃ、という本能が叫ぶ。
「草符『桜吹雪』!!」
桜吹雪を舞わせて、彼女を怯ませる。レリジオ、だったっけ___
「洗脳『操り人形』」
「きゃあ?!」
「プロレット様!」
怪しげな紫っぽい色を放つ網が、わたしを襲う。桜吹雪、多分効かない…
「草符『リーフストリート』!!」
「依符『ディペンダンス・アロー』」
「っ!?」
濃いピンクと紫の間の色の弓が、プロレットを直撃する。
「キャハハハ!可愛い!新しい依存道が見つかったわ❤じゃあ、あの娘も捕まえちゃおっと❤」
「ひぃ…!?」
救ってくれた彼女は、確かリーシュさんだったっけ。怖い。
プロレットは行動不能状態だった。なんか気絶しているみたいだけど…。精神攻撃と物理攻撃どっちもあるのかな。
「依符『ディペンダンス・アロー』」
「きゃ!?…プロレット様と同じ道を…それだけで幸せです…」
ふふふ、きゃはは、とリーシュさんは笑った。怖…
「わぁい、今日は2人も❤嬉しいなっ❤依存することに依存しちゃったぁ❤」
とにかく、逃げなきゃ…色んな意味で怖すぎる!逃げて逃げて逃げなきゃ!!