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目次
蛇
一歩、一歩が凄まじく重くなっていく。
歩いていくごとにカラダに纏うものを全て捨て置く
わたしは一体いつまで
"この感情"を抱えていなければならないのだろう
"----"から生を授かってもう幾年
時間というものは
ワタシのようなモノにもどうやら有限らしいが、
一体いつになればその限りが訪れるのか
「…待ちくたびれて朽ちてしまいそう」
いつも気がつけばここで目が醒める。
ここは言わば、遊女の階級の最上位____
「花魁」の個室___、普段から実生活を送る部屋なのだろう。
広くて豪勢な柄を催したお客のための大きな布団に
ぽつんと、独り
深く眠りこけていたワタシのその姿は
酷く滑稽であったろうな。
淡々とした動作で、いつものようにカラダを起こし、布団から出る。
ふと、あたりを見回すと"あの道"に脱ぎ捨てたはずの仕掛※や前帯※がすぐそばにある__
身に纏うのは|襦袢《じゅばん》※のみ。
お目汚しも|甚《はなは》だしい。
|己《おのれ》の醜さ、浅ましさに打ちのめされるも、
もう"|彼《あ》の方"は去った後。
ワタシみたいな醜い心根を持ち合わせた者にも
手を差し伸べて下さる"彼の方"
せめてそのお優しい手の温もりさえわかれば、
彼の方を初めて目にしてから随分と時間が経った気がする。
ワタシが"あの道"を辿ると、気づけば意識が消え失せている。
そして、あの時もまた、意識が_____
うつらうつら、薄暗く、朝焼けのような中
もう見飽きた景色に囲まれ、布団の上で目を醒まそうとした時だった。
彼の方の後ろ姿がこの重苦しい籠の中のような部屋から去っていく、
微睡んだ瞳に差し掛かる日のように。
今も記憶に残っている。
今では彼の方だけがワタシのーーー。
望みのない希望を抱えることもワタシには
|赦《ゆる》されないことであるのだろうが、
仕掛…羽織
前帯…豪勢な魅せる帯
襦袢…肌着のようなもの
3/13加筆修正等
鶏
お前がこの世に堕ちてきたときに、
俺はとても恐ろしくて仕方がなかったさ
ただ同時に、_______
俺とお前そしてあいつは切れることがない
深く互いの体を傷つけ、蝕まれる程の繋がり
廻り続けるこの因果、きっと終わりが訪れるとき
それはヨツギモノ含めた人間が全て朽ちて、かえる
という事なのだろう。
包み込むようで研ぎ澄まされた美しい姿、
張りつめた微笑みに見舞われて、
その妖艶なる瞳に吸い込まれていくように
皆、釘付け
欲望とは本能的なものだと勘違いする馬鹿がいる。
だが、それは違う
欲望とは、
理性という本能を制限する首輪によって
誘発されるもの。
つまり、「支配にみちる、その範囲内で唯一の無制限が通る望み」
それこそが欲望なのだ。
嗚呼、気分が良い
全てが望むまま
美しくも汚れたこの"俺"に
皆が翻弄されていく
欲する心は純なるもの。
こたえる心も清いもの。
だが、その行為は汚れに満ちたものでもある。
惜しいことだが、
_もう、そこまで奴等がきているようだ
---
広々とした空虚な箱庭に地面に低く大きな音が伝わってくる
突如として巨石でできた玉座があらわれた
そこに多腕の男の体をした化け物が腰を落とす。
そのまま頬杖をついて俺の顔をじっと見つめたかと思えば、
飄々とした態度で俺に言葉をかけてきた。
「どうやら、お前が今世の俺の"ヨツギモノ"で間違いなさそうだな」
「……はぁ、男であったならそう云え。女の姿で出迎えてやったというのに」
「は?」
しまった。もう少し慎重に接触すべきだったのに思わず、
嫌々この状況での対応措置に関してはもっと酷いパターンがあったはず。
それにあの化け物の容姿を見るに、「三毒」の中でもかなり友好的なやつでなかったか?
あいつは確か___
………っああ!駄目だ、名前がでてこねぇ!!
でも、こうして無事会えたんだ。
|楊志《ようし》と|寧々《ねね》も他の二体との接触はひとまずあいつ曰くできたらしいし、
この場で焦って墓穴を掘るのが一番危ない。
慎重にいこう。頭を休めて、落ち着こう___
「ふぅぅぅぅ___欲しいのは女じゃない。俺たち"人"が欲するのは、」
「わかっているわ!そんな事!大体すぐに本題に入って仕舞えば、つまらないだろう?こういうのは、焦れったくも互いをためす時間が大事なんだよ!!」
「……………はぁ……俺はお前たち"ヨツギモノ"との紡がれる時間をとても大切にしている…………」
「…………わかるか?俺の言いたいこと、…………」
ドンッと大きな音とともにどこからか、杖がそいつの手元に飛んできた。
あたり一面に砂埃が舞う。
俺は反射的に強く目を瞑ってしまった
風によって砂埃がまた荒々しく舞う
瞬間、どこからか頭上に吹き抜ける感覚があり、目を向ける。
それは、大きな陶器でできた、
「え、皿?」
それは獅子や蓮の花が美しく描かれた器だった。
ガキィィィィン
勢いよく後ろからあの化け物が持っていた杖が大きな器に向かって飛んでいく。
金属と金属がぶつかり合うよな耳や頭に嫌に響く音が鳴る。
あまりの杖の飛んでいく速さに俺は避けきれず、
耳をかすめた。
「!!!いぃゔぅっっっ!!!!」
思わず耳を両手で覆い隠して、俯いてしまう。
地面にボタボタと赤い血が垂れていく。
鉄臭い匂いが鼻腔を通って、自分が今いる状況がどれだけ危機的なものか知らしめられるように思った。
「んん?………俺はこの貧相な人の子しか招いていないはずだがぁ、何故お前らのようなモノがここに?……………」
「は?え、このデカい器ってもしかして、………」
「…………………我は三善根に名を連ねし者。穢れた三毒なる者ら___人々を惑わせし、邪気よ_この"離欲なる器"のこの|盈済《えいずい》が捨て去ってしんぜよう」
不味いことになった。
よりによってこのお方に_____