三年前、自作小説の外伝というか過去編として作った話です。本編は収集ついてないので、一区切りついたコレだけ載せてます。本編ありきの外伝なので、よくわかんねーよってところがあるかもです〜
舞台は室町後期、架空の国・統和国です。日本の旧国があった時代の話。
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目次
一、家出
三年前、自作小説の外伝というか過去編として作った話です。本編は収集ついてないので、一区切りついたコレだけ載せてます。本編ありきの外伝なので、よくわかんねーよってところがあるかもです〜
舞台は室町後期、架空の国・統和国です。日本の旧国があった時代の話。
のちの細谷小町‥‥‥細谷壱、十六歳。代々刀職人である、細谷家の一人娘。
父は今日もまた、鉄を打っている。音が響く。十六年間聞いてきた、慣れた音だ。
壱は部屋の壁にもたれかかるように座る。目の前には、輝く刀の山。
父の作る刀は傑作だ。美しく反った曲線、その先にはつんと尖る鋒。それが、刀に沿った形の鞘の中に収められる。これが世に出れば、いい値段がつくであろう。
だが然し、刀の山は減る様子を見せない。増える一方。
売れないのである。父の作る傑作の刀は、売れない。
「壱や」
不意に、横から声をかけられる。
母だ。母は、父の師匠の娘だ。彼女は厳しい家計の為、街に働きに出ている。だが話によれば、どれも上手くいかず職を転々としているらしいのだが。
「おかっさん」
「壱、何をしとるの。暇があるなら街に出て働けばどうや」
「つまらんものはしたくない」
「そうか? おとっさんの作業見とる方が退屈やと私は思うてる。あの人の作業は私の父よりも凄いもんでな、どんだけ集中してんか話しかけても何も応じん」
母は嗤った。
壱は父の姿を見遣る。作業部屋の戸は乱暴に閉めて跳ね返ったのか、何故か中途半端なところで止まっている。
「街に出て働くといっても何をするわけ」
「さあな‥‥‥」
「さあな、って何」
「何、じゃない。考えとる」
そう言いながら母は壱の横に腰を下ろした。背を壁につける。
暫くして、母はやっと口を開く。
「のう壱。やりたい事はあるか」
「何を、急に」
「言葉の通りや」
やりたい事?
「ない」
「即答か」
「じゃあ何」
「私みたいに刀職人の娘に産まれ刀職人に嫁ぐ人生は嫌じゃろう。一生刀職人から離れられん。然しお前には未だこの人生から逃れることのできる時間がある」
何故、今この話を? 急に人生の話をされても困る。
別に今死ぬ訳でもあるまいし。
母はそんな壱の心を読んだかのように続けた。
「壱、私はな、遠くで働きに出ていく。もう帰れんかも知れない、今生の別れや」
「え」
壱は、自分は毎日刀の音を聞き、父と母そして後を継ぐ兄と刀職人一家として暮らし、死んでいくものと思っていた。それでいいとも思っていた。
楽しくないわけでもない。
陽気な母と話すのは面白いし、職人の父から聞く刀の話も興味深いし、修行の辛さを延々と語る兄の愚痴も聞いていて何故か苦にならず寧ろ暇を持て余す自分にとってはいい暇潰しだ。
だが、これから母が居なくなればどうなる。
「壱。ちと早いやも知れんけど、夜飯にせんか。おとっさんの作業も一区切りついたようや」
いつのまにか、刀を打つ音は聞こえなくなっている。
「おにっさんは」
「多分直ぐくるさ」
兄は、軈て家業を継ぐのだろう。既に、父を師匠として修行を始めている。
壱は考える。
彼は、やりたいことがあるのだろうか‥‥‥。
壱はない。もし兄にやりたいことがあるなら、譲ってやりたいくらいだ。
母は既に、竈門の前に立っている。多分、今日の夜飯は雑炊だ。積んだ食べることのできる草を小さく切って入れ、少量の米を煮炊く。つまらない料理だ。
然し、今の自分達の食べることのできるものはこれくらいだ。
壱は立ち上がり、母のいる台所に向かった。
布団の中で、壱は目を覚ました。起き上がり、台所の方へと向かう。
そこには、兄が立っていた。母の姿はない。
「おかっさんは?」
「もう仕事に行ったらしい。当分は帰ってこないだろう‥‥‥いや、当分処ではないかもしれないな」
壱は、兄の前に立ち尽くす。
もう行ったなんて、早すぎるだろう。
最後くらいは、何か一言、あってもよかった。それとも、最後の別れが嫌だから、敢えて言わずに去った?
「壱。兎に角‥‥‥朝飯は」
「今日は要らない」
壱は兄に「御免」と呟きその場を駆け出す。なけなしの小遣いを持ち、刀の山から一本刀を取る。黒くなめらかに光る鞘を握りしめて、壱は玄関を開けた。
2022/7/16 作成
文面がなんか変なのは小6のときだからです👍いまもおかしいけどな👍
二、転々
壱が向かった先は、知り合いの家だ。第一、頼れるのは彼女しかいない。
家を飛び出して帰るのももどかしく、なんとなく立ち寄る事にした。
「あ、壱」
大きい戸を開け出迎えてくれたのは、まえ。隣街の人気刀職人の娘で、彼女の父親は壱の父とも何かしら交流を持っている。
「まえ」
「どうしたの急に、刀なんて持って‥‥‥真逆、まえ達を殺しに来たのね!」
これは彼女なりの冗談である。が、その部分だけを耳にしたまえの母は焦り奥に逃げていった。
「母さんはまえの冗談も本気にしちゃうんやおねえ」
「あ‥‥‥そりゃ大変やねえ」
『母さん』という言葉に、壱の耳が反応した。
まえの母親は、普通に暮らしている。
「それでどした」
「私は家出した」
「御目出度う!」
何でやねん。心中でつっこみを入れる。
「祝うところではないんやよねえそこ」
「え、そうなの」
「そうだよ」
まうはふうんと言いながら、壱を部屋に通す。
「それで? まえに家を貸して欲しいって?」
「いや‥‥‥何となく立ち寄っただけや」
「ほんなら帰ってー」
笑顔で言われた。まあ、帰ることにする。
「じゃ」
壱は立ち上がる。と、足元でまえは「え待って、え待って」と何か戸惑っていた。流石に冗談を間に受けられると思わなかったらしい。抑も壱は冗談だと気づいて態と立ったのだが。
「冗談やって」
「知っとるわい」
「じゃあ何で立った」
「面白かったから」
まえは外方を向いた。
「というか、来た理由は何となくだけどあったわ。話があったんや」
「話?」
まえが此方を向き、訊く。壱は頷く。
話だけはしておきたかった。
「私のおかっさんが仕事で遠くに行った」
「あ、小母さんが‥‥‥」
まえの家と壱の家など刀職人の集まりで交流があり、その中で親同士も仲良くなった。まえの母と壱の母も仲がよく、それでまえも壱の母の事は知っていた。
「うん。それも、昨夜仕事に行くっていう話をされて、今日起きたらもう既に居なくて。昨日聞いた内容だと、遠くで働くから帰れないかもって」
「帰れない‥‥‥大変だね」
まえはそう答えた。そのまま言葉を続けようとしたが、結局何と云えば良いかわからず口を閉じる。
「こんな話されても困るやろ、御免」
「こちらこそ、力になれず申し訳ないねえ」
壱は首を振った。
そして、今度こそ立ち上がる。
一旦は家に帰ろうと思った。
だが、やめた。帰ってもいいことはない。
『のう壱。やりたい事はあるか』
『私みたいに刀職人の娘に産まれ刀職人に嫁ぐ人生は嫌じゃろう。一生刀職人から離れられん。然しお前には未だこの人生から逃れることのできる時間がある』
母の言葉が、何度も蘇る。
私のやりたい事は、刀職人を支えるつまらない人生じゃあないのかもしれない。
他を頼り、先ずまえの元へ行った。でも求めるものは得られなかった。
壱は城下町を歩く。
山城・萌木統和城。統和国を治める大名の居城が、山の上に佇んでいる。
と、馬の蹄の音。きっと、萌木家の元服したばかりの若君‥‥‥信秋が城下町の視察といい、また来たのだろう。信秋は、よく町に出る。町を見回り、町民の様子を見て声をかけたりしている。時期当主は良い方だ、と評判もよい。彼が城下町を訪れるのは、その評判を得るためだろう。
壱は裏道に入る。
裏道には、大きい寺院。ひっそりと建っているが、中からは子供の笑い声が聞こえた。
この寺院は、孤児を引き取っている。この周りには国主もどうにもできない貧民街があり、寺院はそこから小さい子供を保護していた。
「あらお壱ちゃん。どうしたの」
壱に声をかけてくれた気さくそうな小母さん‥‥‥朝は、箒を動かす手を止めてこちらに駆け寄ってくる。
「朝さん」
「お壱ちゃん、お母さん、遠くに行ったみたいね。聞いたわ」
「情報通だね」
「それでお壱ちゃんは家出かな」
一瞬で見抜かれた。
壱は頷く。
「あれまあ」
朝は云った。そして笑った。
「お壱ちゃんも家出する程大きくなったのかい。それなら、うち泊まってくか」
「あー‥‥‥」
一瞬、泊まろうと思った。
でもやめた。
「大丈夫です」
朝は、「そうかね」と朗らかに笑う。
「ほんなら、気おつけやあね」
「わかりました」
壱は、寺を後にする。
泊まってもいいと思った。だがやめたのには、勿論理由がある。
家から離れたかったのだ。
いちど、兄が母と喧嘩して家出した時、此処で匿って貰っていた。そのため、父はここを知っている。知られていれば、いつか迎えに来るかもしれない。
しばらく歩いて、壱は足を止めた。賑わう城下町の大路から入った細道。ひとりの同年代の女子が倒れていた。着物からして、町民だろう。壱はすかさず彼女のもとに走った。
「だ、大丈夫ですかっ」
「ひっ!」
反応があった。意識がないわけではないらしい。
「かっ、刀‥‥‥」
彼女は、壱の手元に視線を落とした。
殺されるとでも思ったのか。
「ち、違う! 安心してください。というか、あなたはなんで」
「ずっと、何も食べとらんくて‥‥‥お腹が空いて」
空腹か。壱は女子を助けながら立ち上がると、団子屋に向かった。先ほど、そこで団子を食べたのだ。値段が低めなその店は、すこし奥まった場所にあった。
『甘味処』と書かれた看板に、女子は嬉しそうな顔をした。団子を二本買ってやれば、申し訳ないといいつつも遠慮なく受け取った。
「おいしい、っぐ」
もはや泣きながら食べている彼女に、壱は問うた。
「あの、名前は?」
「お、小野です‥‥‥うぐっ、あなたは」
嗚咽をのみこみ、彼女はそう名乗った。
「私は壱です。今は家出中でして」
「そうなんです、ね、っ、助かりまひた」
かくして、壱は小野と仲良くなったのであった。
ここで五十年後、少女たちのかの出会いがあるとは、まだ誰も知らない。
2022/7/18 作成
五十年後どうこうのくだりは、本編とちょっとリンクさせようとしたっぽいです。たぶん。
まえが出てくるのも、本編で小町(壱)と一悶着あるからですね。漢字がおかしいのは文ストにハマってたからかな
三、邂逅
壱の口調が変わってます。
壱→訛りなし
小野→訛りあり
小野は、商人の娘だと語った。でも、と彼女は続ける。
「えっと、昨日店に、諜報組織を名乗る二人組が来て、それでお父さんとお母さんが連れてかれてまって」
「諜報組織って」
「彼岸花、ていう」
壱は首を傾げた。純粋に聞いたことのない名前だ。
「ど、どうすればいいんやろ」
「わ、わかんない」
ここは、小野ら家族の営む反物屋だ。布に囲まれた長屋で、二人は途方に暮れていた。
ここでの所持品といえば、壱の小遣いと太刀、小野の反物くらいだ。
「とりあえず、店は続けんと‥‥‥」
「手伝うよ、なんかできることあれば」
壱は、にこりと笑っていった。
「家出して、身よりもないからさ」
「あ、ありがと‥‥‥たすかる」
小野は、弱気に口角を上げ、感謝を述べた。
反物屋の経営は順調である。なかなか名のある店だそうで、店頭に並んだ反物は日に日に減っていく。いつもなら取り寄せをしていたらしいのだが、それは彼女の父がやっていたそうだった。
「これが売り切れたら、どうする?」
壱は、小野にふと訊く。
「それなんよ。壱は実家に戻る?」
「戻らないよ。二人で働いて、考えてこ」
「そか。壱には手伝ってもらっとってさ、ほんと申し訳ないよ」
「いいの、私が好きで働いてるだけだから」
残り少ない反物の在庫を見ながら、二人は会話を交わした。
季節は夏。扇子を仰ぎながら、壱と小野は店頭でせわしく語り合う。実家のこと、反物のこと、面白いかったこと、好きな物、街の様子。
辛い話はしないという暗黙の了解がそこにはある。小野の親がどうなったか、彼女はいつも頭の片隅にはそれがある。それは当たり前で、だからこそ壱は楽しい会話をと心がける。それが小野にとってよいことなのか、それとも苦しいだけなのか、壱にはわからない。
「小野は、将来どうするの?」
「えっ、しょうらいのゆめってやつ」
「そうそう」
壱は木箱の上に乗りながら話をふる。店の軒先に、風鈴を飾りつける作業だった。常連だという、身なりのいい男性からの頂き物だった。これですこしでも暑さを和らげるといい、という台詞に従って、店頭に飾りつけることにした。
「なんやろう、名前を天下に轟かすとかどうや」
小野は尾張訛りの言葉でそういった。彼女は尾張国の出らしいと、これまでの話で知った。いたのは十くらいまでというが、幼い頃の訛りというのはどうやら抜けないらしい。訛りが恥ずかしいと言った小野だが、壱はそれを彼女の特徴だといいふうに認識している。
この反物屋も、もとは親戚の店だったと彼女は語った。親戚から彼女の両親が、この店を受け継いだという。
「おお、どうやって」
「やっぱ時代は武士やろっ」
そういって、小野は太刀を振る真似をした。
戦乱の多い世の中だ。幕府が二分したという応仁の乱から三十年はとうに経っているが、戦火というのは城下の街のどこかしこに漂っていた。
「あと、私は、お母さんとお父さんを見つけたい」
あ。と壱は後悔した。
会話の内容を間違ったと思った。両親の話は、彼女の心の底に触れてしまう話だと考えていたから。
どう返せばいいのだろう、どういうのが一番ましな答え?
「君たち」
男性の声に、壱と小野ははっと振り返った。
いつもの常連の男性だった。風鈴の礼をしなければ、と思い出す。
「すみません」
いやいい、と男性は首をふる。そうして、微笑みを浮かべてみせた。
「君たち二人の境遇は、よく知っているよ」
壱と小野は、顔を見合わせる。
男性は続けた。
「小野が両親を連れ去られたことも、壱が母親が遠くに働きに出たことを機に家出してきたことも」
「あなた、なんでそれ」
「この反物を売り切ったあとには、計画なんて何もないことも」
「それは」
男性はそこで、「君たちに一つ、提案をしよう」といってみせた。
「『彼岸花』に入らないか」
2025/4/29 作成
今年作成。どうにかして一本でもケリをつけたくなったので。
ちなみに「彼岸花」は本編のほうでメインになる忍者組織の名前です。この外伝でも多分大きく関わる。
邂逅っていう言葉が大好きだぜ
四、組織
その男は、その組織の長を名乗った。
「小野、お前の両親を連れて行ったのはわが組織だ。もちろん命は保証してある、反物屋の知識を欲しただけだ。壱、お前も共に来い。いま、わが組織は膨張期を迎えている、人手が足りないんだ」
すらすらと並べたてられた言葉は、立板に水のよう。その剣幕に、一歩あとずさりたくなる。
小野は、彼の話を聞くなり、納得したという顔をしていた。彼がそもそも常連であったことと、両親の無事を伝えてくれた信頼からなのだろうか。
それでも、壱はこの話を不審と感じていた。
「でも、その彼岸花という組織ですけど、私は諜報組織と聞き及んでいます。危ないことには、私も小野も関わりたくない」
「それなら心配は無用。何も君たちは刀を握るわけじゃない」
危ないこと、というところに否定はしない。君たちは、の言葉も気になる。
組織がそういううものであること、それに嘘はつかないらしい。あくまでも事実で、二人を誘おうとしている。
「でも、なんで私たちなのですか」
「君たちの将来を案じたまでだよ」
悪意のない表情に見えた。いつもの常連のそれである。
「私、入ります」
人見知りのある小野の口から、その言葉が紡がれる。壱は素早く小野の顔をのぞいた。決意の目だった。
「そうか。壱は」
「えっと」
小野がこうやって選択をした今、壱には選択肢が残されていないと考える。
それしかないのだ。
「私も、そうします」
ーーー
はじめ、壱と小野は侍女に配置された。洗濯をしたり物を運ぶだけの簡単な仕事である。給料はそこそこで、組織の大きさを改めて理解した。
膨張期だ、という長の言葉を思い出す。確かに拠点の屋敷はどこか慌ただしく、人がひっきりなしに動いていた。
動く人はそれぞれで、二人のような侍女から帯刀した武士姿の男、黒い装束の人間、旅装束の女性と身なりは多種多様。諜報組織であることはもはや間違いなく、それでも長には情報を与えらていないのだから、無用な詮索はしなかった。危ないことには自ら足を踏み入れまいと行動する壱だが、それをよそに控えめながらも興味に足を向けていく小野に、壱はすこしの危なっかしさを持っている。
「ね、出世したらああやって忍びになれるんかな」
「侍女は侍女だよ多分。刀とかさ、使えないじゃん」
壱が実家から持参していた刀は、組織に引き取るという名目で奪われた。内部の反乱の芽を一つ残らず摘んでいるのだろう。
「あー、洗濯て面倒や」
反物屋の娘として育った小野だ。少なくともそこそこに上質な店であったことに間違いはなく、洗濯などの経験はそんなにないはずだ。侍女としての仕事に、早くも飽きを感じているらしい。
「まあ、私たちはそれしかやれることはないよ」
そうやけど、と小野は呟く。彼女は終始、浮かない顔をしていた。
部屋の外が慌ただしい。いや、いつも慌ただしいのだけれど。
「なにかありましたか」
寝泊まりしている部屋の引き戸を滑らせれば、宵闇に行灯の光が行き交っている。
人の動きが忙しい。部屋の前を通った少し上くらいの侍女にそう問えば、律儀にも立ち止まって返してくれた。
「組織が敵襲に遭ったんだよ」
話を聞けば、発端は大名家同士の争いだとのこと。この組織が与力している大名家があるらしい。その大名家と敵対する領地に、彼岸花は侵入し情報収集などをしていた。しかしそれが露呈、夜な夜な組織を襲いに来たという。
「しかしまぁ、ウチの密偵が気付かれるなんて…相手も相当の手練れか、いや、ウチと同類の手の者だろうな」
「同類って」
「まあ、忍びだろうな」
これから物騒になるぞ、と言葉を残して彼女は立ち去っていった。
「壱?」
「小野。起きた?」
「ん」
話し声で起きたらしい。寝ぼけている小野に、壱はさっき聞いた話を説明した。
「ここが襲われてるんやな…」
そのとき。
「裏口からも敵襲が! 逃げろ」
先ほど状況を教えてくれた侍女だった。ガラリと勢いよく引き戸が開く音で、壱と小野以外の侍女も起き出す。
さっきより一段と騒音がする。近づいてきている感じに、体が震えた。
「ど、どうすれば」
ここにいる侍女たちは、みな壱と同じく刀を握ったこともない者ばかりだ。指示がないと、どう動けばよいのかわからない。
そんな様子に、戸に指をかけていたその侍女が言葉を投げる。
「中心の屋敷に向かって。ここは危険だ」
彼女は指を左に向けた。そっちに行け、と促して、それから彼女は右へと足を向ける。
壱は訊いた。
「あなたはどちらに?」
「私?」
その右手には、どこからともなく匕首が握られている。張った糸のような細さの鋒が、鈍く行灯の光で煌めく。
「敵の方に」
大勢の足音が、こちらに迫っていた。
長が上座に現れた。一斉に皆が首を垂れる。
「面をあげよ」
長らしい、ずっしりとした声だった。
彼に直に勧誘された壱と小野だが、長というものは普段、侍女なんかの声の届く場所にはいなかった。そんな距離があってようやく、彼がほんとうに長であることを実感した。
長が語ったのは、敵の情報。
襲撃はどうやら、敵が雇ったこれまた諜報組織ということだ。
敵は、ここ統和国で下剋上を目指す一派らしい。
「俺たちは、萌木家に長年仕えている立場。雇われなんかに滅ぼされることなんて許されないでしょうぞ、なあ長殿よ」
「奇襲してきた組織を、こちらが潰すくらいの気迫で臨まなければなりますまい」
「抱えてくれている萌木家への恩を忘れることはあってはなりません。今こそ、萌木に仇をなす者を滅ぼす時かと!」
組織の幹部らが、それぞれ長に進言をしたり皆に呼びかけたりと声をあげていく。組織の面々は、そうだそうだと応じたり、暑苦しいのが嫌いな部類の者は傍観したりと様々であった。だが、思いは一つである。
「奇襲勢力など我々の足元にも及ぶまい! 萌木家への恩を思い出せ、今こそ敵を蹴散らす時ぞ!」
応、と男たちの声が揃う。その様子は、忍び組織というよりも大名家の軍議のようだ。
屋敷内に集められた侍女らの手も借りねばならぬほどの、大きな争いとなった。水を張った桶を、壱は持ち上げる。
そのとき、縁側のほうから歓声が上がった。敵の頭目の首があげられたという。
「忍びも、こうやって戦うんやね」
桶を運びながら、小野はそういった。
「いや、うちの組織は忍びというには少し変わっていてな」
後ろからひょいと顔を覗かせた男に、二人は揃って振り返る。
長だ。装束はところどころ赤黒く固まっていた。
「驚かせる気はない」
にこりと人のいい笑みを浮かべて、長は続ける。
「諜報組織というのは、つねに主君を変え続ける。でも、うちは萌木家から分裂してできた組織だから、萌木家の一つの家臣のようなものだな」
「萌木家、ですか」
萌木家は、ここ統和国を治める幕府の守護大名だ。
そういわれると、組織の幹部らの「萌木家への恩を返すべきだ」とかいう言葉も、忍びよりかは家臣のようだった。
「今回は若君の初陣となる戦いだからな」
若君というのは、現当主の嫡男・萌木信秋のこと。
長は背を向ける。
「勝つために、一つでも目は摘んでおくべきだ」
ーーー
組織に入って、そろそろ一か月である。
かの夜の争いの後から、侍女らにも刀の指南がされるようになった。護身として身につけるのだ。
「最近は下剋上も多いからな。自分で自分の身を守らねば」
この前の敵襲で、誘導してくれた侍女だった。実は本来侍女であるわけではなく、侍女らを守る役として配置されていた忍びのようで、今回は自ら指南役に買って出たらしい。
「壱、なかなか筋がいい。持ち方がなっている」
「ありがとうございます」
横の小野に目を向ける。
「小野は…」
「どうです?」
侍女忍びと壱は顔を見合わせた。
ついで、木刀振るう小野を見る。
まっすぐな筋立ちは、壱の目の前の空気を真っ二つに切り裂いた。
「うわぁ、手にタコできとる」
彼女は、そういって小指の付け根のタコをさすっている。
小野は、刀において、筋がいい。壱は意外な才能だなと思った。
2025/6/12 作成
五、信秋
今回の戦における組織の任務はいくつかある。
一つ、情報収集と伝達。
一つ、敵の闇討ち。
一つ、若君の護衛。
「では、持ち場へ参れ」
長のひとことで、忍びたちは飛ぶように去っていく。
残ったのは、長と、それから壱ら平伏を続ける侍女や下男の類だ。
「今回は屋敷周辺も戦場となるだろう。御館様に頼んである、|萌木《もえぎ》本家へ移るとよい。小次郎、頼んだぞ」
応、と声だけが闇から聞こえる。小次郎と呼ばれた、忍びのものだ。
萌木本家というと、萌木|統和《とうわ》城のこと。萌木家は、室町幕府の守護を務める由緒正しい家で、ここを百年ほど本拠としている。
城の敷地内の|曲輪《くるわ》にある屋敷に、小次郎についてゆくまま入る。
「若君」
小次郎が頭を下げた。あわてて、侍女らもそれにならう。
「萌木大次郎|信秋《のぶあき》だ。わざわざ徒歩で申し訳ないな」
「滅相もございません」
小次郎は即座に返す。
「それほどひれ伏す存在でもない。頭を上げよ、此度の戦は手伝いを頼む」
ははっ、と一同が返事すれば、信秋は頷いた。
侍女らは、あらかじめ決めていた持ち場に分かれる。壱と小野は、負傷した者の手当てをするためのさらしの手配をするように頼まれていた。
菌を消すため、さらしを大鍋で茹でる。しばらくして、厠へ行くために小野と交代した。
体を大きく伸ばす。
「そなたは彼岸の手のものか」
後ろから、男の声がした。さっき聞いたばかりの声。
そこで、はっと気がついて振り向いた。
「若君! えっ、と、わたしでしょうか」
「そうだが」
「はい、わたしは彼岸花で侍女を、やって、おります」
緊張で手がべたべたしてきた。まずいこと言うと首がとびかねない。
しかし、麗しき若君は衝撃の言葉を口にした。
「ふむ。気に入った。わたしの相手をせい」
「は?」
一部始終を見ていた男がいる。小次郎だ。
「若君の女好きは知っていましたが、よもやここまでかと」
「よいよい。そちらの方が面白いわ」
長は、小次郎の報告をかっと笑い飛ばす。長は、萌木家の軍議に出るため登城していた。
「しかしよいのですか。壱のほうは、ついで、だったのでは」
「……事情が変わったな。しかし、若君の比較的近くに小野を配置するようにしていたのだが。ついでで配置していた方をとるとは、豪胆なかたである」
まったく、小野の親を攫うのも難儀だったというのにと、小次郎は愚痴を漏らした。
「おや、お前が愚痴をいうとは」
「そりゃあ。若君の命令だって文句はあります。わざわざ親を拐かして、小野が組織に入るしかない状況を作るようにしたっていうのに」
「どうせならと思って、壱も入れてしまったのは誤算だったかな」
「小野とは、何度かすれ違うなどをするよう仕向けておりましたが、どうやら反応はなく」
「これはもはや、ついでになるのは小野の方だな」
長はまた、愉快に笑った。
ーーー
本格的に合戦が始まったのは、早朝のことであった。奇襲をかけたのはこれまた敵軍である。
「枯野下野守、お討死!」
「敵将が首ぞ! 首化粧ができる者はあるか!」
男たちの怒号が入り乱れる。
先日の長の予想は外れ、戦場は城のすぐ近くとなった。負傷者は、屋敷内に運び込まれている。
「聞いた? 萌木家優勢やって、夜ごろには決着するって」
小野が走ってくるのを、壱はすこし呆然としながら眺めた。
あのあと、信秋からは特に何もされていない。でも、|妾《めかけ》に迎えさせてくれといわれた。
「やっぱりそれはおかしいだろ…」
「なんて?」
「なんでもない」
とんだ若君である。しかし名家の嫡男である、血筋か顔は整っており、雅な男であった。
壱は、小さく息をつく。今は合戦のゆくえが大事だ。
ーーー
「壱。そなた、私の侍女となれ」
そう告げられたのは、彼岸花の本拠屋敷に戻ってすぐだった。長に呼び出され駆けつけてみれば、こんな提案をされていた。
「はい、お受けいたします」
断る理由は特にない。
しかし、気になるところがある。
「あの、小野はいかがなされます」
「ああ、あの侍女はまあいい」
「……いい、と言いますと」
長は、すこし顔を歪めた。
「まあよい。今日から私専属の侍女と生活を共にしてもらう。荷物があればすぐに持ってこい。小野にはお前のことを伝えておく、案ずるな」
そして今日である。天気は快晴、いま壱は、またもや萌木統和城内にいた。
今から行われるのは、合戦後の評定である。長の後ろを、ぺたぺたとついていく。
「なぜ私なのですか」
壱はいま、荷物持ちをしていた。しかし荷物といったら、侍女がするような仕事ではない。
「まあ、私が誰を連れようが勝手だろう」
何度か聞いたが、その度に跳ね返される。そして、当主の間に足を踏み入れた。評定で出したい荷物だそうで、長の背後に控えていればよいらしい。
しばらくして当主が座り、萌木家の評定は始まった。
「それでは、合戦の褒美だが……」
「此度の戦、一番槍を挙げたのは我が隊」
「今回の戦で下剋上を目論むものも減るであろう」
皆が意見を述べていく。
そんななか、壱はただ視線を感じていた。当主の傍に控える美丈夫、萌木信秋である。
ひたすらに視線が鬱陶しかった。なんて若君だ。
2025/6/12 作成
人物たちの役職名は適当です。
六、理不尽
このへん、バカかってぐらい駆け足で話が進んでいきます。登場人物の心情がどうしたんだよっていうレベルで雑。
「なんで壱だけ長付きの侍女になるんやって…」
「そんなの、私が聞きたいよ」
屋敷の末端部分の洗濯部屋。会ったのはたまたまだった。出会い頭、小野は暗い声でぶつけた。
小野はうつむく。
「私じゃだめやったんかな」
「そんなこと」
「剣は壱より上手いし! 組織に入るの決めたんも私やし! それでも私じゃだめやったんやな」
彼女は泣いていた。子供のように地団駄を踏む。
壱はそれをどうすることもできない。わからなかった。
このとき、彼女を慰められていたら。納得してもらえていたなら。私は、この時のことを後悔することになる。
何年経っても消えない。私はどうしたらよかったのだろう。
ーーー
「長」
小野は、ひたすら歩く。長はどこにいるのか聞けば、組織の奥深くにある、長しか入れぬ間といった。
護衛はいない。不思議に思いつつ、小野は歩を進めた。
「長っ」
引き戸を勢いよく開けた。
「なぜ来た」
「壱と私はなんで、こんなにも待遇が違うんですか。壱は、あなたについて萌木様の城に行っていると聞きましたが」
長は、小野をじっと見つめた。
「何か言ってくださいよ!」
小野は部屋に立ち入る。そのまま長に詰め寄る。
長は、静かな瞳をしていた。
「何で…」
「君、この部屋に入ったね」
ちゃき、という音。刀が鳴る音。
少し高くくぐもった音が、次いで鳴る。中途半端に開け放たれた戸から漏れる光は、鋒を怪しく照らした。
「あっ」
「君が誰かは心得ないが、ここの部屋に入ったものの命はない。斬らせてもらおう」
済まなんだ。そう言いながら、太刀を構える。
「まっ、まって」
腰の抜けた小野は、床を手で後ずさる。手が震える。
「しらなくて」
「待ってください!!!」
声を上げたのは、駆け込んできた壱だ。はぁ、はぁ、と壱は肩で息をする。
刃が光を反射している。斬ろうとしているのは、一目見ただけで明らかだった。
「なんでこんな状況になってるのかはわかんないけど! 長、あなたも、そんなに早まることはないんじゃないですか!」
禁忌をした人を守る行為は、同じく斬られるかもしれない。でも壱は、小野が斬られることだけは承知できない。
「壱……」
長は、無言で刃を鞘にしまう。壱は、胸を撫で下ろした。
「君がそうまでいうのなら、な」
長はうすく笑った。小野は反対に顔を歪める。
「君たちに一つ、提案をしよう」
刀を握る手は、こまかく震えている。それは、対する相手も同じだ。
壱と小野は、長の間で、|鋒《きっさき》を向け合い対峙している。
『君たちが長の間に入った事実は変わらない。でも、二人とも殺してしまうのは私も心苦しい。だから、君たちが戦ってくれ。生き残った方は、私が手塩をかけて次期の長に育て上げよう』
長は、光の差し込む障子を背に、床几に腰掛る。こちらを試すような瞳は、どこか楽しげだ。
『君の持っていた刀を返そう』
今手にあるのは、父の打った刀だった。よく手に馴染むのは、十六年共にしてきたからか。
死にたくない。
逃げられない。
長が、不敵に微笑んだ。
片手を軽く持ちあげて、指を鳴らして、
「はじめ」
ぱちん、という小気味良い音。
それでいて、二人をどん底へと突き落とすような音。
「…わたしが、私が、勝つ」
小野が、刀を振るって走ってきた。避けなきゃ死ぬ。斬らなきゃ自分が死ぬ。
「はあっ」
間一髪避けた。小野は後ろに回っている。早く後ろを。
「はああああああっ」
小野は、ひたすら一直線に走る。
その先は、壱ではない。
「なんと」
長だった。
小野の振り下ろす、美しい曲線は、長に吸い込まれるように思えた。
「馬鹿をするなよ」
「な……」
長の右手にいつのまにか握られた刀。
それは、小野の腹部を、しずかに貫いていた。
2025/6/12 作成
ストーリー、駆け足にもほどがある。
終、おのの
一応PG12です。
嫌だ。
そんなのは、ない。
「いち…………」
小野の振りかぶった腕が、だらんと正気をうしなう。赤が、じんわりと彼女の侍女小袖を染め上げていく。貫いた鋒も、鮮やかな赤で濡れている。
ごふっ、と血を吐く音。
見ていられない。
「小野っ」
間に合わないのはもうわかる。これで生きていることはない。いや、まだ生きていたとして、今後普通に生きられるはずがない。
なら、せめて、ひとおもいに。
長が、目を少し見開いたのがわかった。
壱は、刀を構え直した。
もう迷うことはなかった。
そしてそのまま、肩の高さで、横に流れるように右手を動かした。
ごとん。
ーーー
「壱様」
側近に呼ばれて、ふと意識が飛んでいたことに気がつく。
「お入りになられないのですか」
「いや、今入るよ」
私がはじめて、ひとをころした場所だった。
あれから四年たっているのに、あれから何度も同じことをしてきたというのに、足がすくむ。
私一人で入らなければならない。
「では」
側近が、入り口前に跪いた。
がらり、と乾いた音を立てて開いた戸は、かつてとなにも変わらない。
部屋の間取り、光の角度。あのときとぜんぶがおなじで、めまいがした。
柱が目に留まった。墨のような色が、飛び散っているのがわかる。
「ひっ……」
よくみると、赤黒い。
吐き気がした。壁に手をつき、俯く。
気がつく。その床にも、壁にも。その赤黒いしみは散っている。
「おえっ」
胃液が逆流する。もう駄目だった。
その恐ろしさが落ち着くことなんかなくて。
「壱様!」
そうやって呼ばないでくれ。壱、と呼ばれれば、いやでもあの日の彼女のこえが蘇る。
やめてくれ。
壱はそれから、本拠地を破棄した。
ーーー
「小町?」
「いい名前でしょう」
壱は、長となるにあたって、名前をあらためた。それを言えば、長、いや先代は顔を歪めた。小野とつながる名前だから。
大広間には、まだほのかに白木の香が漂っている。新築の拠点には、新頭目を前に、配下が犇めき合う。
「次期頭目となった小町である」
配下は一斉に頭を垂れる。
刀鍛冶の娘、壱は、あの日あの時にいなくなった。
ひとごろしは、彼女の名を背負って、小町として生きていこう。
2025/6/12 終
小5のときの授業中に書いてたプロットが出てきたので、それ参考になんとか仕上げました。ストーリーはプロットとほぼ変わってないはず。
素人がそんなかんたんに首落とせるかっちゅー話なんですけどね…ここは想いの力なんですよ←適当
出てくる人
出てくる人を適当にまとめたけど多分わかりづらい。
人物
・壱
刀鍛冶の娘。兄は父に弟子入りしている。母親が遠く仕事へ離れたことをきっかけに家出。小野の反物屋を手伝い、彼岸花に見出される。
流されやすい。状況を把握することには長けているが、人の気持ちを考えるのは下手。しかし、人を救わんとする優しい心を持つ。その気持ちは、六話の事件を機に復讐心へと変化していく。二十一歳で長より権利を譲られ、頭目となった。小町と名を変える。まえとは旧知の仲。
・小野
反物屋の娘。尾張訛り。一人っ子。初めて会った人には人見知りがあるが、何度か会って打ち解けると相手に信頼をおく。人見知りのない相手にはよく喋る。意外と勇気ある行動をし、危なっかしい人物。扱いづらい人ともいえる。彼岸花の諜報活動に興味を抱き、壱を連れて長の間に立ち入ってしまう。そこで提案されたのは、死か後継となるかだった。
・長
本編時空における「先代」。反物屋の常連である。~~小野をあることに利用しようと考えた。そのために、彼女を引き渡すまいとする両親を連れ去り、一人になったところをうまく乗せようとした。が、計算違いで壱が来る。壱も引き取り、いつか消そうとしている。が、途中で小野よりも壱に興味を抱くようになる。~~
→組織の仕える萌木家の若君、信秋が城下町を散策中、小野に一目惚れする。そして、小野を連れてこいと信秋は組織に命令。長は小野を怪しまれず誘うため、親二人を拐かし、身寄りをなくした上で組織に加入させようと目論む。しかしそこに計算外の壱が現れ、二人を同時に引き取った。
小野と壱が一対一をさせる。勝った方を組織の後継者として育てる。
反乱の芽は摘むタイプ。小野と壱の決闘でもその思考だったが、のちに反乱を起こす小町を育てるのは皮肉ともいえよう。←この外伝より20年くらい後、本編時空よりちょっと前の話。先代(外伝時空での長)と長である小町(壱)との間で組織内で派閥が形成されてしまい、争った結果小町派の勝利となり、彼は小町により反乱の首謀者という建前で処刑された。小町は小野の仇討ちを成功させている。
・萌木大次郎信秋
若君。小野を組織に連れるように命令した張本人。だが、心移りして壱を妾にしようとする。女好き。当主としての器を持ち、統和国を下剋上させることはなかった。壱が小町となり組織長となったあとも、小町へ信頼をおく。四十年来の昔馴染みとなる。息子で次期当主となる萌木信実は、実は小町との間の子供である。本編時空で主役となる萌木アヤメは、信秋と小町の孫にあたる。