閲覧設定
名前変換設定
この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります
1 /
目次
Prologue
貴方にはわからない.この痛みも,思いも.
今日も僕らは“助けて”の代わりに“死にたい”と叫ぶ.
暗闇
小中,といじめを受けた僕は,トラウマを覚え,不登校,いや,引きこもりになった.未だにに覚えている.元親友に刃先を向けられた瞬間を.信じていた人に裏切られた瞬間を.そして,僕がいじめられてるのに関わらず,見て見ぬふりをしてきたアイツらを.
今日もまた,自分にナイフを向ける.
翔「今日こそ,死ねますようにッ,」
そう言いながら,いつもビビってナイフを手放してしまう.やはり,あの刃先がトラウマだ.
ナイフがダメならロープ.自分の首に巻き付け,強く縛りたいところだが,筋力が衰えてるせいで,苦しいと思えるほどの力も出ない.
後ろのベットに寄りかかる.朝なのか,夜なのかさえもわからない.いや,知らなくていい.カーテンを開ければきっと,また来てるだろうから.インターホンを鬼のように押す,《《アイツ》》が.
《《アイツ》》というのは,精神的に傷を負った子供たちをなんとか元気づけようとするカウンセラー.なぜコイツが嫌いなのか.その訳は,僕の話もまともに聞かずに金だけを奪い去って行くから.
母親はシングルマザーで一日中仕事.そんな母が全力で稼いだ金をアイツなんかに払わせる気はない.
教師やカウンセラーなんて,悩んでる子供に寄り添うようにプログラムされただけの人間だ.何を言っても返ってくるのは同じ解答ばかり.
「そうだよね」
「辛かったよね」
お前らにはわかんねーつーの.僕,いや,《《僕ら》》の気持ちは.
コンコン
珍しく,僕の部屋をノックする音が響いた.母親が帰って来るにはまだ早い時間だろうに.
翔「誰?」
僕が投げかけた言葉に反応はなく,しんとした空気だけが流れる.
翔「誰かいるんでしょ?」
さっきよりも大声で言うと,反応が帰って来た.
???「ふふっ」
可愛らしい女の子の笑い声が聞こえた.
僕には妹もいとこもいないのに.誰かの悪戯だと思い,ナイフを手に取りドアの前で構える.
翔「からかってんだろ!何かすれば殺す!」
再び静粛に包まれる.ナイフを持つ僕の手も,カタカタと震えていた.
???「からかってなんかないよ」
翔「わ!」
急に耳元で声がした.慌ててナイフを振り回すが,誰かがいる気配はない.
次の瞬間,部屋の照明がつけられた.眩しい.ずっと暗闇にいたためか,焦点が合わなくなってくる.目を細め,なんとかその正体をつきとめようとした.
???「こっちだよー?」
手を振るのは僕より小さい女の子.ピンク色のドレスを着ていて,年は…6歳くらい.
翔「君は…誰?何しに来たの?」
僕の問いに対して,女の子はくすりと笑った.
???「貴方をリアル人狼ゲームに招待するわ.」
翔「リアル人狼ゲーム?」
???「「死にたい」って言ってたでしょ?だから,同じ死にたいコ達を集めて,人狼ゲーム!」
意味がわからない.いきなり現れてから招待状を渡してくるなんて.
???「死にたいんでしょ?ここのセカイでは,キミみたいなコをたくさん集めたから!」
???「あ,でも」
少女は不気味な笑みを浮かべた.
???「要は“殺し合い”だけどね!」
翔「,は?」
はしめまして,死んでください.
空白がある方が読みやすいことに気づいた
理解が追いつけない俺を見て,奇妙な笑みを浮かべる彼女.広角は皮膚が引きちぎれそうなほど上がり,その瞳は白眼まで真っ赤に染まっている.まるで,俺の間の前には呪いそのものがいるように見えた.全身が震え上がり,腰が抜けてしまった.彼女はその奇妙な笑みで俺をしばらく見つめた後,姿を消した.
翔「ッ,はあ,はぁ,」
彼女が消えたとたん,息が楽になる.胸をきつく縛っていたものが,ほどけたように.床には,俺が落としてしまったナイフと,赤い封筒が.
翔「は?色が...変わった?」
さっきまで真っ白だったはずの手紙が血のように赤く染まっていた.抵抗心はあるが,震えた手で封筒の中身を覗く.その瞬間,眩しい光が封筒から飛び出し,俺の体を封筒の中へ連れ込んだ.
彼女だ.彼女のあの笑い声が聞こえる.甲高い,鼓膜を突くようなあの笑い声.
耳を塞ぐ.もう,あの子の笑い声が聞きたくないからだ.こんなの,Jアラートを耳元でずっと聞かされてるのと同じだ.
長い.いつまでこの光と笑い声に苦しまなければいけないのだろうか.封筒の中は光しかなく,体ははずっとぐるぐる回っている.
翔「出せよ!!」
不意に叫ぶ.
彼女に届いたのか,乱暴に床に落とされた.
翔「痛」
痛む腰を抑えながらもあたりを見渡す.知らない場所だ.協会みたいな壁.赤く上品な床.真ん中には大きな長テーブルと,その周りに椅子が間隔で置かれている.
翔「どこだ...?ここ」
俺の独り言に応えるように,どこからか声がした.
紫苑「君も,迷った人?」
見上げるとそこにいたのは高身長イケメンでスタイルのいい,モデルみたいな男子高生.彼もここへ,彼女から正体されたのだろうか.
きょとんとする俺の顔を見て,彼は美しく笑う.
紫苑「ごめん,自己紹介がまだだったね.俺は相沢|紫苑《しおん》.高校3年生.」
まだ落とされたままの俺に手を差し出す.こんなザ・イケメンな彼の前でこの体制は普通に恥ずかしい.あのクソ少女め.変な落とし方しやがって.紫苑の手をとり,立ち上がる.改めて見るこの場所はやはり一度も来たことのない,新鮮な空気がした.
翔「俺は|東海寺《とうかいじ》|翔《しょう》.高校1年...のはず.紫苑でいい?」
軽く自己紹介をし,紫苑と握手した.
紫苑「これで全員かな,」
翔「全員て?他にもいるの?」
紫苑「いるよ.ほら.」
紫苑が指を差した方を見ると,せいぜい10人はいるだろう.一箇所に集まっていた.男女関係なく.共通点があるとするなら,全員高校生に見える.
翔「あ」
その中には,俺の幼馴染の姿もあった.幼稚園の頃から一緒であり,俺がいじめられてるにも関わらず,見て見ぬふりをした,幼馴染.最後に見たのは中2の夏休み.その時に比べれば,顔も大人びでいる.成長していないのは俺だけのようだ.紫苑に視線を移す.広い肩幅.身長は俺とは10センチ以上差がありそう.今の俺はきっと,女子と同じくらいの身長なんだろうな.
???『`あれ,一人いないや`』
再びあの子の声が,脳内に直接語りかけるように聞こえた.姿はなく,声だけで.その声は全員に聞こえているらしく,俺だけじゃないらしい.
???『`連れてきたはずなんだけどな~.`』
ほぼ独り言じゃねぇか.そんなんみんなに聞かせてどうするんだよ.
俺が抵抗したときは反応がなかったのにと若干腹を立たせる.
ボト
俺と同じようにいや,俺よりも痛そうな音を立てて現れたのは,俺より少しだけ身長の高い,銀髪の少年だった.
零「なんか用?」
しかも態度も悪い.いや,高校生なのか?細いし.何も食べてなさそう.
彼は名乗らずに俺の隣に静かに立った.少しでかめのフードを被り,顔が見えにくくなっている.不思議に思いながらも引き続き,彼女の声を聞くことにした.
???「`さて,集まったところで,貴方がたには人狼ゲームをしてもらいます.`」
ざわつく.
人狼ゲーム,?そんなの,カードゲームのことしか知らない.こんなわけもわからない場所に連れてこられてカードゲームしろと言われたって.彼女は俺達に何をさせる気なのだろうか.
⁇?「`カードゲームとか簡単なものではないよ`」
俺の問いそのままを返すように彼女は言う.
⁇?「`君達には,リアル人狼ゲームをしてもらう.もちろん,人狼に殺されたら即死.現実世界でもお前らは死んだことになる.`」
翔「殺し合いってこのことだったのか⁉︎」
思わず口に出てしまった俺に視線が集まる.不意に恥ずかしくなった俺は身をひいた.
⁇?「`だって君達,`」
???「`死にたいんでしょ?`」
突き刺さるような一言に,場が凍りつく.毎日気安く放っていた「死にたい」の言葉の重みを改めて感じた.きっと俺達にとっての「死にたい」は「助けて」の代わりになる言葉だったからだ.
わ.終わり方こわ٩(๑´0`๑)۶
呪遊,始動.
ここで一つ説明を入れておく.カードゲームの「人狼ゲーム」とは,一人ひとりの役職があらかじめ決まっており,参加者はそれを全うする.例えば,自分の役職が人狼だとすれば毎晩誰か一人を食べていく.市民側はそれを阻止するために毎昼の会議時間に人狼を追い出さなければいけない.
もしこの彼女が作り出した|呪遊《ゲーム》がこの人狼ゲーム通りならば,確実にここにいる2人以上は死を迎えなければならない.
???「役職は,貴方の中にいるわ」
中…ポケットか?
自分のポケットを漁るが,カードらしきものは見当たらない.ベタベタと自分のポケット中を漁る俺を見て,隣の少年は呆れた口調と目つきで言った.
零「心の中って意味じゃねぇの」
先程までバカみたいにカードを探し回った自分が恥ずかしい.
翔「あ」
少年の目がちらりとフードの中から見えた.日本では珍しい,瞳が空色の中に青や緑がマーブル色に輝いている.吸い込まれそうな瞳をしばらく見つけめていたかったが,少年は素早くパーカーを目を隠すようにして覆った.
零「見んじゃねぇ」
そう告げた彼の目は、睨んでいるように見えて、怯えていた。
* * *
役職は自分の心の中にいる....どうやって探せばいいか目処がつかない.いきなり俺の中で「俺は人狼だ」なんてピンと来るわけでもない.他のみんなはもう自分の役職を理解しているのだろうか.気になった俺は,紫苑に声をかけてみる.
翔「紫苑は,自分の役職の意味はわかった?」
紫苑「ん~,わかんない.きっとここで過ごしていくうちにわかっていくんじゃないかな.」
確かにいつまでここにいるかはわからないが,紫苑の意見には納得だ.
蘭「健太?大丈夫?」
不意に振り向いた先には,うつむきながら自分の拳を握りしめる1人の男子高生と,同級生らしき女の子がいた.
女子高生の方が,彼を心配し,顔を覗こうとすると,
健太「クソがッッ‼︎」
突然怒りの声を上げた.それも大声なので,全員の視線が一箇所に集まる.
彼は,枯れそうな声で,そのまま続けた.
健太「こんなとこに連れて来られて,挙句の果てにはみんなで楽しくゲームしろ?ぶさけんな‼︎」
そばにいた女子高生も,ついその場を離れる.彼の目は血走り,拳はいっそう強く握られた.
彼の意見に納得する者も次々と現れた.正直言えば,俺もなんだけど.
健太「おい!聞いてんのかよ!クソガキが」
怒鳴り散らかす彼の前に,彼女は現れなかった.
菜々「やめなよ」
雷太「そうだぞ」
遂には無理矢理彼を取り押さえるハメになるところまで来ていた.こんなことをしても,彼女はまだ現れない.
健太「早く出せよ‼︎」
⁇?「`あら.ご不満?`」
前言撤回.俺らの脳に直接語りかけて来た.
健太「聞いてただろ.俺はくだんねぇゲームするためにこんな所に連れて来られたんじゃねえ」
⁇?「`ふふっ`」
言い終わるか終わらないうちに彼女の甲高い笑い声が彼の話を遮った.俺達は何故か身体が動かず,ただ呆然と2人の会話を見ることしかできない.
健太「何がおかしい」
少し息詰まりながも抵抗し続ける彼.
⁇?「`だって,`」
⁇?「`「死にたい」と叫んだのは貴方でしょう?`」
彼だけじゃない.正論をぶつけられた俺は,いや,ここにいるやつら全員は何も言い返せなくなっていた.
健太「だからッ,」
--- `ブシャッ` ---
翔「え」
彼の腹部から血が大量に破裂した.真っ白なカーペットの上に,彼の血がみるみる滲んでいく.どさっと重苦しい音を立てて彼は倒れ込む.その後も血は止まることを知らずにカーペットを紅色に染めてゆく.
場は,一瞬水を打ったように静かになり,
蘭「け、健太」
悲鳴が部屋を揺らした.
⁇?「`早めに楽にならせてあげただけだよ?さ,`」
來太「何すんだよ‼︎」
彼女の話を遮るとは勇気があるな,と心の中で思う.よくこの光景を見た後にそんなことができるもんだ.
來太「いくらなんでも殺す必要なんか...」
⁇?「`君も,死にたい?`」
さっきとは低めの彼女の声が追い討ちをかけるように全員の神経を乱れさせる.
叫んだ彼は,首を大きく横にふり,悲惨な死体を見て腰を抜かした.
茉莉「ねぇ,もうそろそろ椅子に座ってもいいんじゃない?」
彼女が消え,場が少し落ち着いたあと,向かい側で茉莉が言った.皆,目の前の長テーブルに目を移した.長テーブルの周りを囲うようにここにいる人数分の椅肘掛け子が綺麗に並べてある.しかもよく見ると指定席だ.一人ひとりの名前プレートが椅子の前に置いてある.
そのうちの一人が自分の名前の椅子に静かに座った.
「上田來太」
さっきの抵抗した男の子の名前がプレートにそう書いてある.こうして他人の名前を知れるのか.と心の中で呟く.
俺の肘掛け椅子を見つけ,座る.座りはじめた俺達を見て,周りの席もだんだん埋まっていく.紫苑は俺と2,3個離れた先の椅子に座り,あのフードの男の子は俺の向かい側に座った.
翔「零って言うのか」
誰にも聞こえない声で独り言をこぼした.
全員が各自の椅子に座ると,彼女の声が部屋全体に響いた.
先ほどの出来事あってから,彼女には抵抗してはいけないと,痛いほどよくわかった.
だが耳に入ったのは,彼女の明るすぎる声ではなく,低くだが彼女の高い声混じりの,不気味な声だった.
--- `昼の時間` ---
下手すぎるので寝ます.∠( ᐛ 」∠)_
昼の時間
嬉しいファンレターありがとうございます.投稿遅れました(._.)
彼女の声とともに壁一面にカウントダウンの時計が映し出された.その時計は,5分を切っている.どうやら話し合いの時間は,300秒しか設けられていないらしい.
カエラ「本当に,ガードゲームの人狼と同じなんだね.」
セミロングに伸ばした髪の女の子が,吐き捨てるように呟く.そして視線は彼女へと集められた.はっとした彼女は慌てて自己紹介を済ます.
カエラ「あ,私菊池カエラ.お母さんがフランス人なの」
確かに.納得できる,美しい西洋の顔立ちをしていた.女の子らしく,髪はハーフアップに結られている.カエラに続いて,カエラと真反対に座る男子が自己紹介を始めた.
勇斗「俺は|麗日勇斗《うららかゆうと》.高2の千葉出身.バスケやってます.自己紹介とか,みんなでしたほうがいいんじゃね?」
今度は高校生らしい,献身的な男子高生.カエラと反対側に,長テーブルの一番右端に座っている.ほぼ集まった高校生が制服の中,彼だけはジャージ姿だった.その姿から,きっとスポーツをやっているんだろう,と読み取れる.彼に続き,の隣に座っていた金髪のいかにもやんちゃそうな男子が賛成した.
悠楽「だな!まだ誰が誰かわからんけん.あ,名前プレートあるじゃん.」
天然なのだろうか.全員が「当たり前だろう」と言う目で自分の名前プレートを上から覗き込む彼...いや,|乃木悠楽《のぎゆうら》を見つめている.そんなことは気にせず,無邪気な笑顔で悠楽は続けた.
悠楽「俺乃木悠楽.広島から来た高1じゃあ!好きなもなぁアニメとスター◯ォーズで!」
勇斗「じゃあ隣に回してこ」
生の広島弁は初めてなので,こんなものなのか,と関心する.標準語とは違うが,味が出てていい.悠楽は隣に座っていた零の肩をぽんと叩き,零に合図を送った.零はまだオーバーサイズのフードを顔が見えないほどすっぽり被っている.
零「|睡蓮零《すいれんれい》.高1.」
あまりにも短く暗い自己紹介に場の空気も暗くなる.零はお構いなしに,「ほら,次」と左隣の女子高生を見るまでもなく冷たく急かせた.次は...
俺は,その名前プレートを見るだけで,気分が悪くなりそうだった.
|秋山茉莉《あきやままり》.先程も説明しただろうが,俺の幼馴染であって,俺がいじめられているのを6年間知らんぷりし続けた,俺が憎んでいるやつの一人.もちろん一番はいじめの主犯人だが,見て見ぬふりをしてきたやつらだって,許せない.
茉莉は,もじもじしながら,緊張...いや,恐怖で固まった口を動かした.
茉莉「あ,秋山茉莉です.東京から来ました...高校1年です.好きなものは―」
変わっていない.緊張すると頬を照れくさそうに赤く染めるところも,指を組むところも.茶色がかった髪も,白い手肌も.俺が好き《《だった》》頃と変わってない.
変わってないのは,それだけじゃないだろう.俺を知らないフリをしたこと.誰かを救う勇気もない.そんなところも,《《絶対》》変わってない.
自己紹介は続く.
* * *
來太「上田來太.さっきは取り乱してごめん.高2.鹿児島から来た.よろしく.」
軽く謝罪を入れてから,來太は頭を下げた.ツーブロックに横髪を刈り上げた,純粋そうな少年だ.切れ長の瞳は,まださっきの殺された男子高生のことを気にしているようだった.
* * *
由美「阿久津由美言います.京都から来ました.」
関西弁の,まさにのほほんとした女子.左目の下にほくろがある.
由美「父が霊能者で,母が占い師やっとります.うち,霊媒師や.今んとこわかってるのはうちだけ?」
もう自分の役職がわかっている人も,少なくはないらしい.由美は両親が霊関係の仕事だから...家柄によって役職は決められるのだろうか.
* * *
菜奈「仙台出身の高2,阿部菜奈です.サッカー部のマネージャーやってます.推しは,カラ◯ルピーチさんです.」
直毛な艶だつ黒髪をポニーテールに結い上げた,明るそうだが,いたって静かで真面目な子だ.すごく熱心そうなマネージャーだと,心の中で呟いた.
* * *
続いて,1番始めに自己紹介をしたカエラを飛ばし,紫苑へと移る.
紫苑「宮舘紫苑です.」
爽やかな見た目と一言だった.この場にいる女子,男子もかも知れないが,誰もが紫苑に釘付けになった.
紫苑「山形から来ました.高校3年生です.好きなものは―」
紫苑「...アニメとか,漫画かな」
紫苑の好きなものを一つも聞き逃すまいと,誰もが耳を傾けていた.
* * *
水希「黒種水希.16.」
それだけ?と思わせる,零と似たような男子だった.黒髪マッシュで,漆黒色にハイライトはない.が,顔のパーツといい,大きさといい,整った顔をしていた.
...零が,水希の自己紹介で,目を丸くしたのは,気の所為だろうか
* * *
翔「あ,俺」
みんなの自己紹介を見ている間に,自分のターンが回ってきていた.
翔「東海寺翔...です.高校1年かな,.小中でいじめられて,今は不登校です.」
ちらりと茉莉の顔を見る.恐怖を押し殺しているようだった.こんなに気分がいいのは,いつぶりだろうか.
* * *
蘭「三上蘭です.健太...さっき死んだ子の幼馴染です.高1です.よろしくおねがいします」
ひどく震えているようだった.無理もない.目の前で幼馴染が《《吹き飛んだ》》んだ.セーラー服に涙が滲んでいるのがわかる.
* * *
佳澄「藤原佳澄.高1.サンリオとか好きです.よろしくお願いします.」
これもまた,いかにも女子らしい,あざとい子だ.
* * *
光「新木光です.宮崎から...」
話が遮られ,重いアラームが鳴った.ふとタイマーを見ると,0が4つ並んでいる.時間切れのようだ.
--- `夜の時間` ---
カエラ「夕方は,まだないんだね.」
--- `プレイヤーはそれぞれの自室で夜を明かせ.恋人,協力者以外は夜に起きることを禁ずる.` ---
説明
--- **時間割説明** ---
<`朝の時間`:プレイヤーは,朝の時間を迎えるとともに起きて,中央の長テーブルに集まること.その時に他プレイヤーが殺されたもしくは,自害したことがわかる>
<`昼の時間`:プレイヤーは,昼の時間でお互いの意見,もしくは情報を交わすことができる.制限時間は300秒で,意見がまとまっていなくとも強制的に夕方へと移る.>
<`夕方`:プレイヤーは,昼の間で情報を集め,人狼と疑わしきプレイヤーを追放する.追放は多数決で決め,選択肢は「指定するプレイヤー」か「無投票」か>
<`夜の時間`:プレイヤーは,それぞれ各自の自室で眠りにつく.特別な役職があるプレイヤー達は,合図と共にその役割をこの時間の間に済ます.>
--- **役職説明** ---
<*市民*:市民チーム.特別な能力はない.夕方の投票で人狼をすべて追放すれば勝ち.>
<*占い師*:市民チーム.夜の時間に,疑わしきプレイヤーを指定し,その役職を知ることができる.結果を昼に報告するかしないかは本人次第.夕方の投票で人狼をすべて追放すれば勝ち.>
<*騎士*:市民チーム.夜の時間に,守りたいプレイヤーを`一人`指定し,プレイヤーを人狼から身を守ることができる.夕方の投票で人狼をすべて追放すれば勝ち.>
<*霊媒師*:市民チーム.夜の時間に,夕方に追放されたプレイヤーの役職が何だったのか知ることができる.使えるのは3日に一度.夕方の投票で人狼をすべて追放すれば勝ち.>
<*独裁者*:市民チーム.夕方の時間に自ら姿を現すと,他プレイヤーの投票関係なく追放者を決めることができる.ただし,効果は1回のみ.夕方の投票で人狼を全て追放すれば勝ち.>
<*人狼*:人狼チーム.夜の時間に,喰いたいプレイヤーを指定し,殺す,いわばゲームから排除することができる.市民チームと同人数になるか,全員を殺せば勝ち.>
<*影武者*:人狼チーム.人狼のメンバーを把握しており,疑われたメンバーの代わりに追放される.普段は市民を装っており,いざというときにメンバーの生き残らせる.人狼チームが勝利すれば,同じく勝ち.>
<*恋人*:個人.必ず2人存在する.お互いに誰かを把握している.片方が死ぬ,もしくは追放された場合,もう片方も後を追うように自害する.最後まで残るか,市民もしくは人狼と同じ人数になれば勝利.>
<*協力者*:市民チームにも,人狼チームにもなれる.指定したプレイヤーの役職を知ることができ,指定されたプレイヤーは協力者にその後も協力しなければならない.>
夜の時間
再び鳴り響いた鐘.今度はタイマーなどなく,プレイヤーの前にそれぞれ鍵が現れた.本来は金色だったのだろうか.ところどころ錆びてその下からは金がろうそくの明かりを反射している.
翔「3...」
サビの中からうっすら見える文字は,ギリシャ語で書かれていた.どうやら俺の部屋は3号室みたいだ.
紫苑「翔くんは,どこだった?」
俺にはもったいないほどにフレンドリーに接してくれるのは,ありがたいが,人から話しかけられることに慣れていないため,体が硬直した.見て見ぬふり,もしくは気づいていないのか,紫苑は自分の鍵を見つめた.
紫苑「俺は9号室.」
紫苑もまた,錆びついた鍵を持っていた.紫苑の鍵は俺と造りが少し違い,銀がサビの間から美しく顔をのぞかせている.そして鍵の中心部にはやはりギリシャ語の数字だ.
紫苑「零くんはどこだった?」
見つめていた鍵を手のひらに収め,紫苑は大きく首を振り,あたりを見回す.探しものの零は呆然と椅子に座っていた.放心状態のようだった.うつむいたまま,動きがない.不思議に思った俺達は零にゆっくり近づいた.
紫苑「零、くん?」
顔色を伺いつつも声をかける.零ははっとしたように首を持ち上げ,顔を隠していたフードはこぼれ落ち,銀髪と色白の肌が現れた.
零「カエデ」
正気なのか.零は頭を抱えながら,たった今席を立った水希の袖を掴んだ.水希は驚くことなくその場に踏みとどまった.
零「お前,カエデだろ?」
これには水希も顔をしかめる.狂ったように水希を「カエデ」だと思い込み,声をかけ続ける零.うつ伏せに隠れた額からは,汗が流れ落ちている.息もだんだん荒くなっていき,時々「ヒック」という過呼吸気味な音まで聞こえた.
水希「2人とも部屋に行ってていいよ.零の話は聞いとくから」
少し,いや,だいぶ心配だが,俺と紫苑の2人は水希と零を残し,部屋へと向かった.俺達がいなくなったホールには水希達以外誰もいない.
水希がそっと零の隣の椅子に腰掛けるのを最後に,俺達はホールの扉を閉じた.
他愛もない会話
翌日.鐘の音と共に起床し,ホールへ向かった.向かう途中,いろんな人とすれ違った.1号の京と,2号室佳澄.その他,悠楽は眠そうに大あくびをかましたし,カエラは髪がボサボサだった.
京「翔,だったよね?俺,真鍋京.よろしく!」
佳澄「私,藤原佳澄!翔って呼んでいい?」
悠楽「乃木悠楽!キラキラネームじゃろ?父さん昔ヤンキーで」
カエラ「朝早くない?あ,菊池カエラです」
こんなに人に囲まれたのはいじめっ子達以来だ.しかも,いい意味で.一人ひとりが自分を見てくれて,その上暴力も振ってこない.なんだか,心がはずんだ.
翔「東海寺翔...です.」
なんとも照れくさかった.低身長のため,みんなに覗かれながらする自己紹介は.
紫苑「あれ,翔くんが人気者だ」
声のほうを振り向くと,早朝とは思えないさらっさらな髪に爽やかな笑顔がついた紫苑がいた.佳澄は「キャッ」と声を上げ,顔を真っ赤にした.佳澄だけではなく,今部屋を出た由美や菜奈の女子たちが顔を赤らめたり,手で目を覆ったりと,まるでそこにアイドルでもいるかのような(いるんだけど)仕草をとった.
悠楽「紫苑だっけ?どうせならみんなで行こ!」
こうして俺達は京,悠楽,佳澄,カエラ,紫苑,由美,菜奈という大人数とホールへと向かった.
* * *
ホールに入るとすぐさま零を探した.
零は,昨晩何も起こらなかったように昨日と同じくパーカーをすっぽり被っている.ふと水希も見てみるが,こちら側もなんともない顔をしていた.
水希の隣に座るのはなんだか気まずいが,軽く手をふってみた.
翔「お,おはよ水希.昨日は,ありがとう」
...返事はない.もう一度声をかけるのは聞こえていたら迷惑なので,緊張で固まりつつも肘掛け椅子に座った.
* * *
今日は,いや,ここ1週間くらい,とくに目立ったことは何も起こらず,俺は初めて高校生らしい会話を交わした.ほぼ全員と友達になれて,好きなものとか,今流行ってるもの,恋バナ...と,他愛もない会話を俺は最高に楽しんだ.
悠楽「ねぇ,ぶっちゃけ誰がタイプよ」
これは,ここに来てから5日が過ぎようとしていた日の夜.消灯までの時間,女子たちは早く寝るからと去ってしまった後(寝ようとした水希と零は強制的に止められた),男子だけの秘密会議が開かれた.長テーブルではなく,真っ赤なカーペットにあぐらをかいたりして.
悠楽「じゃ,來太からね」
たまたま1番端に足を抱えて座っていた來太は,驚きで目を丸くする.
來太「は?俺から?」
「早く早く」と周りに急かされ,來太は耳を赤らめながらもぼそっと呟いた.その声はあまりにも小さすぎて全員が一斉に聞き返した.
光「え?なんて?」
來太「だから!菊池...」
悠楽「やっぱそうだよな~」
來太の声を聞き逃さまいと静まり返っていたホールが,悠楽の声と共にどっと騒がしくなった.次,次と回っていく.そのたびに一人,また一人とトマトのように赤くなっては顔をうずめた.
そして,回ってきた紫苑のターン.誰もが興味しんしんに目を輝かせながら紫苑を見つめている.
紫苑「うーん,秘密」
その一言で全員の目のハイライトが失われた.「なーんだ」「つまんねー」と次々に声を上げる.紫苑は爽やかな笑顔のまま.
紫苑「俺,ゲイだから」
衝撃発言の連発で俺らの頭は追いつかない.悠楽は空いた口が戻らなくなっている.零も水希も,一瞬ピクッと驚いたようだった.
京「紫苑イケメンだね~堂々と言えちゃうなんて」
紫苑「隠すこともないだろうし」
この中に紫苑の好きな人がいるということを考えただけでもなんだか恥ずかしくなって来ていた.
--- `消灯,消灯` ---
その鐘で俺らは解散した.
朝方,悲鳴が建物をゆらした