雫「………ん…」 ああ、また朝を迎えてしまった。 でも、朝日が怖くて、どうしても起きられない。 __キィ…__ 母「雫…？今日は学校行く…？」 __雫「………ごめん…」__ 母「…わかったわ……学校に連絡入れておくわね…」 __カチャ…__ ああ…また休んでしまった。 なんで`私`はこんなに頑張れないんだ。 雫「……………っ(グスッ)」 こんな自分が嫌いで、次から次へと涙が溢れてくる。 いつもこんな毎日だった。 --- ほんの少し疲れたんだ。 周りからの期待が苦しくて苦しくて仕方がなかったんだ。 でもそんなことを周りに言えるはずもなくて。 でもそんな自分も嫌で、`私`はまた布団に潜って俯いた。 --- どうせなら明日なんて来なければいいのに。 そしたらきっと楽になれるのに。 いつもそんなことを考える。 でもどうしてだろう。 こんなことを考えてる空っぽな私のはずなのに。 なんでこんなに涙が溢れてくるんだろう。 --- そんな時、私はいつも自分にこう言い聞かせる。 --- --- 心の中の｜もう一人の私《きみ》に語りかけるように…… --- --- 今日がどれだけ寂しくても。 今日も眠れないままだけど。 いつか『幸せ』って思えるまでは、｜私《きみ》は｜私《きみ》のままでいてね。 もう強がらないで。 自分を強く見せなくていいよ。 過去の夜の涙ひとつひとつを、心の中で大切にしていく。 それだけで今はいいんだよ。 --- いつか。 いつか｜私《きみ》が笑えるような歌を歌えるかな。 `私`には何もできないけど、｜私《きみ》が笑えるような歌を歌えるかな。 夜に泣いた傷の数だけ、夜は優しく暖かくなるから。 ｜私《きみ》は｜私《きみ》のままで笑ってよ。 --- 今日が…… 今日はすごく寂しいけど。 今日も怖くて寒くて眠れないままだけど。 いつか『幸せ』って思えるまで、`私`は`私`のままでいよう。 もう強がらないでいい。 自分を強く見せようとしなくていいんだよ。 過去の夜の涙一つを、柔くもって歩いていく。 --- それだけで今はいいんだよ。 ---

華子「………はぁ…」 頭ではわかっているのに。 どうしても心が｜理解《わか》ってくれない。 隣では、孝介が裸で寝ている。 体は｜単純《シンプル》なんだなと思ってしまう。 …男なら尚更。 --- 私は知っている。 彼が浮気をしていることを。 華子「……………」 夜に一人で揺らいでも。 良くも悪くも、結局、君以外の人なんていなかったよ。 どうしようもない自分にただただ腹が立つ。 --- 孝介「ごめん、今日も遅くなるから先寝てて。」 華子「……わかった…行ってらっしゃい。」 そんな声に返事もせず、孝介は足早に家を出て行ってしまった。 ……こんな人、忘れてしまいたいのに。 傷つけられてるばっかりなのに。 忘れられなかった。離れられなかった。 --- 君はまるでシンデレラみたいだ。 ０時までの綺麗な時間はすぐに消えてしまう。 私を腕に抱いて、変に期待させないでよ。 私の暗い顔に気づかないままあなたが吸ったタバコが、 私は大っ嫌い。 --- 華子「私の前だけで弱さを見せてよ…」 孝介「は、華子っ…！？」 華子「あの頃のように無邪気な顔で私を呼んでよ…」 孝介「……！！？」 華子「あなたの目線を、思考を、全部を、私のモノにさせてよ…！」 　　「私以外の誰にも見せないでよっ……！！！」 **華子「…死んで。」** --- 華子「…はっ……！！」 　　（夢か……） 隣を見ると、そこには孝介が寝ていた。 彼の首元には今日も、浮気相手の熱い愛情の跡が残っていた。 華子「……っ！！」 **ダッッ！！** --- 君は本当にシンデレラみたいだ。 ０時を過ぎたら私のことが好きな『偽物のあなた』は消えてしまう。 私に希望を持たせて泣かせないでよ。 そんな私に気づかずにあなたが吸うタバコが、 本当に大っ嫌いだ。 好きなんて言わないでよ。 どうせ愛してもないのに。 あなたの瞳で私を捕まえてよ。 ……でも、あなたの瞳が捕まえているのは、すでに違う人なんだよね？ それに気づかなければ、私たちはまだ一緒にいられる。 だから私は、ずっと、ずっと、騙されてるふりをしているの。