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目次
1話「転生したら知らん所にいた」
ちゃっぴーにつくってもらったよん
気づいたとき、空は薄い紫色に染まっていて、風がふわっと甘い香りを運んできた。
地面は柔らかい草。見たこともない植物が周りに揺れている。
「……は?どこここ?」
少女――ミオは思わず口に出した。
最後に覚えているのは、見知らぬ町で一人ぼっちになって、必死に生きていた日々。
人が怖くて、誰にも頼れなくて、気づけば涙を流すことすら忘れていた。
それなのに、目を開けたら知らない世界にいた。
■謎すぎる森と、謎すぎる生き物
「とりあえず落ち着こ……いや、落ち着けるか!」
とツッコミを入れた瞬間、背後からポヨン、と謎の音。
振り向くと、
もちもちした白い生き物が、まん丸い目でミオを見上げていた。
「ポヨ!」
「……え、かわ……いやいや!かわいいけど!」
生き物はぴょんぴょん跳ねながら、ミオの足元にすり寄ってくる。
「ついてくるの?……まあ、いいけど……」
ミオは慣れてない。誰かが自分に寄ってくること。
けどこの生き物には、なぜか警戒心がわかなかった。
■突然のシステムウィンドウ
すると、頭の中に声が響く。
【転生者ミオ、ようこそ“ウユの森”へ】
「え、誰?システム?ナレーション?やめて、心臓に悪い!」
【あなたの役割は――“失われた記憶の欠片を集めること”】
「やめて!私の記憶そんな扱いなの!?クエストなの!?」
声は勝手に続けた。
【欠片を集めれば、この世界の秘密も、あなた自身の秘密も分かるでしょう】
ミオはむっと口を尖らせる。
「……勝手に運命決めないでよ。でも……」
どこか心の奥で、その言葉にひっかかるものがあった。
“自分のことをちゃんと知りたい”
そんな気持ちは、いつも胸の奥にしまい込んでいたから。
■初めての“味方”
白い生き物が、ぽよんぽよんと前に跳ねる。
まるで「ついてこい」と言っているようだった。
「……案内してくれるの?」
「ポヨッ!」
その返事があまりにも素直で、ミオは思わず笑った。
自分でも驚くくらい自然に。
「……へんな世界だけど、ひとりじゃないなら……まあ、いいか」
ミオは生き物――ポヨと一緒に、森の奥へ歩きだした。
■そして物語は始まる
不思議な森、奇妙なクエスト、優しそうな人、そして敵か味方か分からない存在――。
集める記憶の欠片の中には、自分でも忘れていた“涙の理由”もあった。
それでも、ミオは決して立ち止まらない。
なぜなら、この世界には――
「もう一度やり直せる気がする」
そんな温かさがあったから。
そしてミオは今日も叫ぶ。
「転生したら知らん所にいた!!……けど、ちょっと楽しくなってきたかも!」
次回 第2話「私の仲間?」
12月12日18時投稿!
第2話「私の仲間?」
森の奥へ進むほど、光は淡く、空気はひんやりしていった。
ミオの隣では、例のもちもち生物――ポヨが、相変わらずぽよぽよと跳ねている。
「ねえポヨ。ほんとに道わかってる?迷ってない?」
「ポヨッ!」
自信満々な声だけど、どこからどう見てもただ跳ねてるだけにしか見えない。
「まあ、ついてくだけなんだけど……」
ミオがぼそっと呟いたその時。
バサァッ!!
頭上で木が揺れ、何かが落ちてきた。
「わっ!?なに!?」
落ちてきたのは――人間だった。
いや、人間“っぽい”と言うべきか。
長い耳、淡い緑色の髪、そして顔には眠そうな表情。
地面に落ちてもなお、むにゃむにゃと寝言を言っている。
「……誰?」
「ポヨ~……」
ポヨも首をかしげる。
ミオはそっと近づいて揺さぶった。
「ねえ、生きてる?大丈夫?」
すると、ぱちりと目を開けた。
「あ、やっと見つけた……転生者さん……」
「へ?」
突然の指さし。突然の指名。
「ぼくは ルナ。“風の民”っていう種族の見習い守護士なんだ。ミオさんを探すようにって言われてて……」
「探すように?誰に?」
ルナはぺたんと座り込み、木の葉を払う。
「この世界の管理者《アーク》っていう存在だよ。転生者にはガイド役が必要だからって。」
「……ガイド役?」
「うん。ぼく、今日からきみのサポートをする“仲間”…のつもりなんだけど……」
ルナはそわそわとミオの目を見た。
ミオは一瞬言葉に詰まった。
「仲間」なんて、そんな簡単に名乗られても――。
助けを求めるのなんて、ずっと苦手だったし。
人を頼れば裏切られる気がして、誰も信じられなかった。
胸の奥が少し重くなる。
するとルナは、ふっと柔らかく笑った。
「仲間って言っても、急に信じてくれなくていいよ。ぼくもそんな実力ないし……寝てばっかりだし……」
「いや自覚あるんだ」
「でも、困ったら呼んで。ぼくは“味方”でいたいから」
その言葉が、ミオの心を軽くつついた。
“味方”
そんなふうに誰かに言われるのは、いつ以来だろう。
ミオは目をそらしたまま、ぼそっと言う。
「……別に、嫌じゃないけど。仲間って言うなら……その……ちゃんと役に立ってよ?」
「まかせて!たぶん!」
「“たぶん”つけるな!」
ぽよん、とポヨが跳ねた。
「ポヨッ!」
「あ、ポヨも仲間だよ。三人で行こ!」
ミオは吹き出した。
「いつからポヨが仲間枠なの?」
「最初から。ぼくよりしっかりしてるし」
「ポヨッ!」
誇らしげに胸(?)を張るポヨ。
ミオは思わず笑ってしまう。
こんなに自然に笑えるのが不思議だった。
「……まあ、悪くないか。仲間がいるのも」
森の奥から、やわらかい光が揺れた。
“記憶の欠片”らしき輝きが見える。
ルナが身を乗り出した。
「ミオ、あれが最初の欠片だよ!」
「よし……行こっか、みんな!」
ミオは初めて、自分から一歩踏み出した。
知らない世界。知らない運命。
でも、ひとりじゃないなら――
少しだけ進むのが怖くなくなる。
こうして、ミオの旅は本当の意味で始まった。
次回第話「アルデニア町」
12月13日18時投稿!
3話「アルデニア町」
森を抜けると、まるで絵本のような景色が広がった。
――大きな門。
――色とりどりの屋根の家々。
――そして道の両脇では、見たことのない動物や人が行き交っている。
「ここが……アルデニア町?」
ミオが呟くと、ルナが胸を張った。
「うん!この地域で一番にぎわってる町だよ。旅をするなら、まずここで情報集めとか装備とかだね!」
「装備……?私、武器とか持つ感じなの?」
「だいじょうぶ、いきなり危ないのは渡さないよ!杖とかお守り的なやつからにしよ!」
「ポヨッ!」
ポヨはすでに町の匂いに夢中で、あっちへふらふら、こっちへふらふら。
「ねえ、ポヨはぐれないでよ!?」
■町の人たちと、ミオの第一歩
門の前では、甲冑をつけた見張りの人が立っていた。
人間に見えるけど、瞳の色が琥珀に光っていて、どこか普通の人と違う。
「ようこそアルデニアへ!旅人さんかい?」
少し緊張しながら、ミオはうなずく。
「……はい。旅の途中で」
「あんた、転生者か?」
「えっ!?なんで分かるの!?」
「そりゃあ、その世界の服装に見えないし、ポヨ連れてる時点でね〜」
「ポヨが基準なの!?」
「ポヨッ!」
誇らしげに胸を張るポヨ。やっぱり自覚あるらしい。
見張りの人は続けた。
「この町には転生者がたまに来るんだよ。みんな最初は戸惑ってるけど、慣れたら楽しく過ごしてるさ。わからんことあったら、町ん中で聞くといい」
そしてニッと笑った。
その笑顔が、ミオの胸を少しだけ温かくした。
「……ありがとうございます」
■はじめての市場
門をくぐると――
視界いっぱいに広がる色、音、におい。
焼き菓子の甘い匂い、スパイスの香り、賑やかな声、楽器の音。
ミオは思わず立ち止まってしまった。
「わ……すごい」
「ここは“市場通り”っていってね、新しい物や情報が集まる場所なんだ。ミオが探してる“記憶の欠片”のヒントもあるかもしれないよ」
ルナが言うと、ポヨはすでに食べ物屋台の前でぴょんぴょんしていた。
「ポヨ!勝手に食べたらだめ!」
「ポヨッ~!」
店主は笑いながら、
「お嬢ちゃん、ペットかわいいね。近づいても怒らないから安心して」
と言い、ポヨの頭をぽふぽふと撫でた。
ミオはふっと微笑む。
――こんなふうに誰かと話すこと、
――こんなふうに誰かに笑いかけられること、
自分には縁がなかったと思っていた。
なのに、この世界では普通みたいに訪れる。
「……なんか、不思議だね。怖かったはずの“人”が、ここではちょっと違って見える」
「ミオが安心してくれてるなら嬉しいよ」
ルナは照れたように笑う。
■記憶の欠片の手がかり
市場の端のほうに、小さな古道具屋があった。
看板がかすれていて、店内も少し暗い。
なのに、入口の前だけがふわっと光っている。
「……あれ、記憶の欠片に似てない?」
ミオが近づくと――
店の中からしわがれた声がした。
「おや、転生者のお嬢ちゃんじゃないかい」
暗がりから現れたのは、年配の女性。
優しそうな目をしていた。
「あなたが探してるもの……“欠片”の波動を感じるよ」
「えっ、本当に!?どこにあるんですか?」
女性はミオをじっと見つめた。
「欠片が示す場所はね……“人と心が交わるところ”さ。この町のどこかにあるはずだよ」
「人と……心……?」
ルナがこっそり耳打ちしてくる。
「ミオの心に関わる出来事が起きるってことかもね」
「え、なんか怖い言い方しないでよ!」
女性は続ける。
「でも大丈夫。ひとりじゃないだろう?」
ミオは一瞬、言葉に詰まった。
……ひとりじゃない?
ポヨは足元でぴょんと跳ねる。
ルナは隣で、安心させるような笑顔を浮かべている。
ミオは小さく息を吸い、ほんの少し赤い顔で言った。
「……うん。仲間、いるから」
「ポヨッ!」
「任せてね!」
女性は満足そうにうなずいた。
「ならば欠片は、きっと近いよ」
その言葉が、次の予兆のように響いた。
■そして物語は、町で動き出す
アルデニア町のどこかに眠る“記憶の欠片”。
それはミオの過去にも、この世界にも関わる何かを示していた。
ミオは拳を軽く握った。
「よし……探しに行こう!みんなで」
ルナはうなずき、ポヨは元気よく跳ねる。
こうしてミオたちは、初めての町で新たな一歩を踏み出した。
次回4第話「危機はすぐそこに」
12月14日18時投稿!
4話「危機はすぐそこに」
アルデニア町に来てからしばらく歩き回ったミオたち。
市場を抜け、広場を通り、路地を覗き込みながら“記憶の欠片”を探していた。
「……でも、ぜんっぜん見つかんないね」
ミオが肩を落とすと、ルナが苦笑した。
「欠片は光で示されるはずなんだけど……隠されてたりすると分かりにくいんだよね」
「ポヨ~……」
ポヨまでしょんぼりしている。
ミオは空を見上げた。
“人と心が交わる場所にある”
古道具屋のおばあさんの言葉を思い返していると――
ドォンッ!!
突然、町の中心方向から大きな音が響いた。
「えっ!?なに今の!」
ルナの表情が一瞬で引き締まる。
「……魔物だ。町に迫ってる!」
「ま、魔物!?なんで町に!」
「分からない。でも急がないと危ないよ!」
町の人たちのざわめきが広がる。
遠くで子どもが泣き、店の人たちが店を閉め始めている。
ポヨはミオの足元にぴたりと寄り、震えていた。
ミオの胸がぎゅっと痛む。
――怖い。
でも――
「……行こう、ルナ!」
「ミオ、危ないんだよ?無理しなくても――」
「でも、逃げてる人がいるのに黙ってられないよ!」
ミオはきっぱり言った。
自分でも驚くほど強い声だった。
ルナは一瞬目を見開いた後、ゆっくりとうなずく。
「……分かった。ミオを守りながら行くよ!」
「ポヨッ!」
ポヨも勇気を振り絞ったように、ぴょんと跳ねた。
■町の広場へ向かうと
広場はすでに混乱していた。
逃げる人、助け合う人、涙を流す子どもたち。
そして――
広場の門の先で、黒い霧のような“何か”がゆっくり形を作っていた。
「……あれが魔物?」
ミオは声を失う。
黒い影のようで、目も口もないのに、こちらを見ている気がした。
「あれは〈影喰い〉っていう存在だよ。闇に紛れて、弱った心を狙ってくる……!」
ルナの声は震えていた。
見習い守護士でも恐れるほどの魔物。
ミオも足がすくんだ。
――怖い。
――なんでこんな目に。
――誰か助けてよ……。
胸に冷たいものが広がる。
その時。
「ポヨッ!!」
ポヨが、ミオの手に身体をぐいっと押しつけた。
温かい。
「……ポヨ?」
「ミオ、大丈夫!ぼくがいるよ!」
ルナも前に立つ。
「ミオはひとりじゃない!さっきそう言ったでしょ!」
ミオははっとした。
“仲間がいるなら進める”
自分で言った言葉だ。
震えはまだ残っていたけど、ミオは深呼吸し、影喰いを見つめた。
――逃げたくない。
――目をそらしたくない。
同時に、ミオの胸の奥から淡い光がふっと漏れた。
「えっ……光ってる?」
ルナが驚いて振り向く。
「ミオの“記憶の欠片の反応”だ!近くにある!」
「そんなタイミングで!?」
「でも逆に言えば……この“危機”こそが欠片の場所なんだ!」
ミオはきゅっと拳を握る。
「分かった……!行こう、欠片を――そしてみんなを守るために!」
ポヨが跳ね、ルナが風の魔力をまとい、ミオは光をまとったまま一歩踏み出した。
影喰いが、低い唸り声のような音を出す。
町の中央で、戦いの幕がゆっくりと上がる。
――危機はすぐそこに。
でもミオは、初めて自分から前に出た。
次回5第話「記憶が呼ぶもの」
12月15日18時投稿!
5話「記憶が呼ぶもの」
影喰いがうねるように広場へ迫り、空気が重く冷たく変わっていく。
「ミオ、後ろに下がって!あいつ、心の隙を狙ってくるから!」
ルナの声が緊張で震える。
だけどミオは首を振った。
「もう逃げたくない……!怖いけど、それでも……ここで立ち止まったら後悔する!」
胸の奥の光がさらに強くなり、温かさが広がる。
「ポヨッ!」
ポヨがミオの横で跳ねる。
不思議なことに、ポヨの体からも微かな光が溢れはじめていた。
「ミオ、その光……“欠片”が呼んでるんだよ!」
「呼んでる……?」
影喰いが地を這うような音を立て、黒い手を伸ばしてくる。
ミオが一歩後ずさると――胸の光がズキンと脈打った。
その瞬間、頭に一瞬だけ映像が走った。
――小さな手。
――温かい声。
――暗闇の中で、自分を呼ぶ誰か。
「っ……!」
ミオは思わず額を押さえた。
「ミオ、大丈夫!?」
「今……誰かの声が……。誰?私、こんなの……覚えてない……!」
記憶の欠片が反応している。
影喰いはその混乱を狙うように、すうっと距離を詰めてきた。
「危ない!」
ルナが風の結界を張ってミオを守る。
透明な壁が一瞬だけ光り、影喰いの攻撃を弾いた。
「ミオ、今の記憶……まだ続きがあるはず!欠片を見つければ、ちゃんと思い出せる!」
「でも、どこに……」
ミオが見回したときだった。
――広場中央の噴水。
水が揺れ、底から淡い光が浮かび上がる。
「ルナ!あれ……!」
「間違いない!欠片だ!」
影喰いも気づいたのか、噴水に向けて一気に伸び上がる。
「待って!それ、渡さない!!」
ミオは光に引かれるように走り出した。
ポヨも必死に追いかける。
ルナは風で加速してミオの後ろにつく。
影喰いの腕が噴水に触れる寸前――
ミオは勢いよく手を伸ばした。
光が弾ける。
――そして、ミオの手に収まったのは、小さな透明な“かけら”。
触れた瞬間、記憶が溢れるように視界を満たした。
■小さな“あの部屋”
優しい灯りの部屋。
机の上にはクレヨン。
自分より少し年上の女の子が笑っている。
「ミオ、今日は一緒に絵を描こ?」
絵……?
この人、だれ……?
少女はミオの頭をやさしく撫でた。
「大丈夫。ひとりじゃないよ」
その言葉に、ミオの胸がじんわり熱くなる。
――あのときも“ひとりじゃない”って言ってくれた人がいた。
――忘れたくなかったはずの、大切な人。
すると、記憶の中の少女が消えゆく間際に口を動かした。
“また、会おうね”
そこで映像は途切れた。
「……っ!」
ミオは息を切らしながら目を開けた。
手には確かに欠片があり、胸の光は少しだけ強くなっていた。
「ミオ!今の記憶……思い出せた?」
「……ちょっとだけ。でも……誰なのかはまだ分からない。でも……」
ミオは胸に手を当てる。
「その人……すごく大切だった気がする」
影喰いが再び形を立て直し、低い唸り声を上げる。
けれどミオはもう逃げない。
欠片から戻ってきた温かさが、心を満たしていた。
「ルナ。ポヨ。今なら……少しだけ、戦えそう」
ルナが目を丸くする。
「ミオ……!」
「今の記憶が言ってた。“ひとりじゃない”って。だから……私も、みんなを守りたい」
ポヨも強くうなずく。
「ポヨッ!」
影喰いがゆらりと揺れ、再び迫ってくる。
ミオは欠片を握りしめ、一歩踏み出した。
――記憶が呼んだ光は、ミオの心に新しい力を芽生えさせていた。
次の瞬間、ミオの周りに淡い光が広がる。
「これが……私の力?」
風がざわりと揺れ、影喰いがたじろぐ。
ミオ・ルナ・ポヨ。
三人は初めて“向き合って立つ”という形になった。
――影喰いとの戦いの幕は、いよいよ本格的に上がる。
次回6第話「私がしたいこと」
12月16日18時投稿!
6話「私がしたいこと」
影喰いが広場に迫る。
黒くうねる影の中で、低いうなり声が響く。
けれど、ミオの胸の中は、以前のような恐怖だけではなかった。
「……私が、やりたいこと……」
ミオは欠片を握りしめながら、心の中でつぶやいた。
それは、影喰いを倒すことでも、誰かに認められることでもなく――
「ただ……守りたい。私が、大切だと思うものを」
ポヨはぴょんと飛び、ミオの足元に体を寄せる。
ルナもミオの横に立ち、風の魔力をまとった。
「ミオ……その気持ち、すごくいいよ。心が強いってこういうことだ」
「ポヨッ!」
ポヨまで応援してくれる。
三人で、今ここに立っている意味を改めて感じる瞬間だった。
■影喰いとの対峙
影喰いが前に出るたびに、周囲の町の人たちが後ずさる。
恐怖に震える人々――けれど、ミオはもう逃げない。
「来なさい……!」
ミオの声に光が宿る。
欠片が温かく輝き、胸の光と共鳴している。
影喰いは、黒い腕を振り上げて襲いかかる。
「ルナ、ポヨ、行くよ!」
「はい!」
「ポヨッ!」
ルナが風の刃を影喰いに放ち、ポヨは素早く跳ねながらミオを守る。
ミオは光を欠片に集中させる。
光が影喰いを包み込み、影の姿が揺らぐ。
「これ……私の、力……?」
胸の奥で、小さな確信が芽生えた。
怖いけど、怖くても立ち向かう力――それは自分が決めた“したいこと”から生まれた。
■心の声と決意
戦いの最中、ミオの頭にさっきの記憶がよみがえる。
――小さな手。
――優しい声。
――“また会おうね”
あの人もきっと、今の自分を応援してくれている――そんな気がした。
「ありがとう……私、もう怖くない……!私がしたいことを、私が選ぶ!」
光がさらに強くなり、欠片が放つ輝きは町全体を包む。
影喰いはその光に耐えられず、うねるように姿を崩し、やがて闇の塊として消えていった。
町は静まり返った。
逃げ惑っていた人々も、安堵の表情を浮かべる。
■守るべきもの
「やった……」
ミオは胸の欠片を握りしめ、深呼吸をした。
ルナもポヨも笑顔でミオを見つめる。
「ミオ……すごい。ちゃんと自分の意思で戦ったんだね」
「ポヨッ!」
「私……やっぱり、ただ生きるだけじゃなくて、守りたいものを守りたい。怖くても、仲間と一緒なら前に進める」
ミオはゆっくり頷いた。
町の人たちの視線も、温かく優しい。
「私がしたいこと……それは、自分の大切なものを守ること。誰かを、そして自分をも、守ること」
胸の光はまだ微かに揺れている。
でも、恐怖ではなく、決意と希望に変わっていた。
■新たな旅のはじまり
「ミオ……次は欠片をもっと集めよう。君の記憶の真実も、世界の秘密も、きっと分かるから」
ルナが手を差し伸べる。
「ポヨッ!」
「うん……私、行くよ。みんなと一緒に」
ミオは深く息を吸い、町を見渡す。
アルデニア町の空は、まだ静かだけれど、確かに輝いている。
「よし……私の旅は、まだ始まったばかり!」
こうして、ミオは自分の意思で歩き出した。
怖くても、迷っても、守りたいものを胸に――。
次回第7話「ナゾの卵との出会い」
12月17日18時投稿!
7話「ナゾの卵との出会い」
アルデニア町での騒ぎが落ち着いて数日。
宿の一階はいつものように、朝のパンの匂いと人々のざわめきで満たされていた。
私はパンをかじりながら、ぼんやりと窓の外を見ていた。
――あれから、私が「この世界の過去」に関わりがあることを示す記憶は、まだ戻っていない。
ただ、胸の奥がそわそわしていて、何かが近づいているような気はしていた。
「レナ、今日は市場行くんでしょ? 私も行く!」
元気に飛びついてきたのはミナ。
フードを深くかぶったリスは、テーブルの端で静かに座っている。
「うん。ちょっと気になるものがあって」
「気になるもの…? なんだろ?」
私たちは宿を出ると、賑やかな市場へと向かった。
果物の香り、鍛冶屋の金属を叩く音、商人の声が混ざり合い、活気にあふれている。
その中で――私は、どうしてかひとつの場所に足が止まった。
古びたテントの露店。
店番のおじいさんが、黙ってこちらを見ている。
そして、店先に置かれた布の上には――淡く光る卵がひとつ。
白でもない、透明でもない、
まるで空の雫が固まったような、不思議な色。
「な、なにこれ……?」
ミナが目を丸くする。
おじいさんは静かに口を開いた。
「坊やたち、この卵に呼ばれたのかもしれんな」
「呼ばれた……?」
「これは“星獣(せいじゅう)”の卵だ。
普通の人間には気配すら感じられんが…
どうやら、君には見えるようだね」
心臓がドクンと鳴る。
まただ。
“普通なら分からないものが、なぜか私には分かる”
その感覚が、胸の奥で膨らんでいく。
「ねぇレナ、大丈夫?」
ミナの声が、少し震えていた。
でも私は卵から目を離せない。
だって――
卵が、私に触ろうとしているみたいだったから。
その瞬間、卵が淡く光った。
「……!?」
光はまるで糸のように伸び、
私の胸元――あの転生時についていた“紋”へ向かう。
キィン…
胸が熱くなる。
まるで記憶の扉を叩くような感覚。
――また思い出す。
名前も、過去も、世界のことも。
でも、すべてがつながるにはまだ足りない。
光が消えると、卵は静かになった。
おじいさんはうっすらと微笑む。
「その子は君を選んだようだ。
星獣の卵は、自分で主を決める。気まぐれで、強くて、そして優しい存在だ」
私はそっと、卵を手に取った。
ひんやりしているのに、中からはあたたかさが伝わってくる。
「……連れていくね」
気がつくと、そう言っていた。
ミナは少し不安そうに、でも嬉しそうに笑う。
「レナの仲間…かな?」
リスもじっと卵を見て、静かにうなずいた。
おじいさんは続けて言う。
「孵るのはいつか分からん。だが――
その子が孵った時、きっと“何か”が始まるだろうよ」
“何か”。
それがこの世界の危機なのか、
私の失われた記憶なのか、
それとも――新しい運命なのか。
私は胸に抱えた卵を見つめる。
不思議な卵との出会いが、私たちの旅をまた大きく動かし始めていた。
第1章終わり!そうなっちゃった(((