「各艦に達する。対空戦闘よーい!」
艦長が言うと一般警報のアラームが鳴り響く。
すると、警報音とは違う音がなる。
「FC(火器管制レーダー)探知!ロックオンされました‼…敵機ミサイル発射!5発向かって来ます‼」
「来たか!艦長‼」
副長が艦長の方に言う。
「いぶきからもがみへ。|水戸《みと》艦長!」
「捉えてます。…うぅーてぇー!」
「もがみが迎撃ミサイルを発射。迎撃コースに入ります。インターセプト10秒前……マークインターセプト!…目標に命中。キル…キル…キル…キル…キル…、全弾撃墜!」
砲雷長が言う。
「|最大船速!《さいだいせんそーく》|面舵一杯!《おもかじいっぱぁーい》…一旦離脱する!」
「最大船速!最大船速!」
艦長が言う。
「ソナーよりCICへ。米原潜を探知!今度は二隻です」
「音紋は?」
「原子力潜水艦『キー・ウェスト』と、同じく原子力潜水艦の『オクラホマシティ』…どちらもアメリカ海軍、太平洋艦隊所属です」
「引き続き、対潜警戒を厳となせ」
「了k…⁉」
驚くソナー員の声が聞こえる。
「どうした?」
「…ソナー……|発射管開口音探知《はっしゃかんかいこうおんたんち》…!」
「各艦に達する。対潜戦闘よーい!」
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潜水艦はやしお
「魚雷発射管、開口音」
水雷長が言うと、
「ここでやりあおうってのか」
艦長が言う。
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空母いぶき
CIC
「『はやしお』も魚雷発射管開きました」
ソナー員が言う。
「秋津艦長、判断はどうする?」
「敵は銃の引き金に指を掛けました。洋上の我々は魚雷を回避できても、近距離で対峙している『はやしお』は危険です。…やらなければやられる。状況は攻撃要件を満たしているものと考えます」
「我々の任務は海上警備行動です。正当防衛以外攻撃はできません」
「事態は既に急迫不正の侵害に当たることは明白です」
「仕掛ければ……戦闘になります」
「…これは我々が越えなければならないハードルです」
「距離2マイル、目標直上まで2分」
「司令部、攻撃命令を」
「……向こうが撃つまで…一発も撃ってはならん!攻撃状態を維持したまま…直進だ…」
「…攻撃状態を維持。このまま直進」
「了解。攻撃状態を維持。このまま直進」
艦長がCICの中央にある机を見ている。机には現在の周辺の日本、アメリカの艦艇の位置情報のようなものが映っている。
「ソナー室よりCICへ、探針音探知…!」
「何⁉」
「目標直上一分前!」
砲雷長が声を上げる。
「…ソナー、距離上げろ」
「距離|1000《ヒトセン》…距離|500《ゴヒャク》…距離|100《ヒトヒャク》…目標直上!」
「…」
「…通り過ぎまた。敵艦遠ざかります」
「ふぅ、行ってくれたかぁ」
「気を緩めるな。引き続き、対潜警戒を厳となせ!」
「どちらへ?」
「本部に報告をしてくる」
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国会議事堂内 会議室のそば
総理が一面ガラスの壁にうなだれている
「攻撃された⁉アメリアにか⁉」
その声を聞いた総理が両開きになっている扉を過ぎ会議室に入る。
「総理。アメリカ太平洋艦隊が第五護衛艦隊に対し、戦闘機五機を用いたミサイルによる攻撃をしたとのことです。また、米原潜に攻撃されそうになったと…」
「で、被害は?」
「ミサイルは全弾撃墜し、損傷ゼロとのことです」
「…ふぅ、良かった…」
「攻撃をしないで撤退する判断は正解でしたね」
会議室に喜びの声が広がる。
ドンッと音が響く。
「そいつは結果論だ!もし攻撃されていたら…。総理!防衛出動を下令するべきじゃないのか⁉」
「…」
「…安易に下令するのも危険です。もしそれが理由で攻撃されたらさすがに危険です」
「……もう少し…時間をくれ…」
「…」
会議室が元の様子に戻る。
「官房長官。こちらへ」
言われた官房長官が眼鏡をかけながら行く。
「戦死者⁉」
「⁉」
静まり返った会議室内。防衛大臣が動く。
「確かなのか?」
「東亜連邦の北方艦隊の戦闘機が日本海に侵入したとの情報から、現場に向かった空自の偵察機が、撃墜されました」
そう言い、総理に1枚の紙を見せる。
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少し前 東シナ海上空
偵察機内
「コンタクト!」
「あれが例の機体か…。無線で通信を試みる」
「こちら日本国航空自衛隊、第9航空団所属機。あなた方は事前に通告したフライトコースを逸脱している。繰り返す。こちら日本国航空自衛隊、第9航空団所属機。あなた方は事前に通告したフライトコースを逸脱している」
「This is the Japanese Air Self-Defense Force, 9th Air Wing. You are deviating from your previously notified flight course. I repeat. This is the Japanese Air Self-Defense Force, Wing 9. You are deviating from your previously advised flight course」
英語で伝える。すると
「This is an aircraft belonging to the Northern Fleet of the East-Asian Federation. You are in the airspace of the East Asia Federation. Turn back immediately. I repeat! This is the East Asia Federation Northern Fleet. You are in East Asia Federation airspace. Turn back immediately. If you do not follow instructions, we will attack! Turn back immediately!」
日本語訳
こちら東亜連邦北方艦隊所属機。ここは東亜連邦の領空内である。ただちに引き返せ。繰り返す!こちら東亜連邦北方艦隊所属機。ここは東亜連邦の領空内である。ただちに引き返せ。指示に従わない場合は攻撃する!直ちに引き返せ!
「ふざけるなぁ!領空侵犯しているのは貴様らだろうが!」
東亜連邦機が機銃を撃ってくる。
「こちら偵察機。警告射撃を受けた」
「こちら那覇基地。直ちに離脱せよ。繰り返す。直ちに離脱せよ」
「…了解」
偵察機が大きく旋回し、現場を離れようとする。
「…FC探知…ロックオンされた‼」
「回避だ!ブレイクライト!」
偵察機が右に動き、ミサイルを回避しようとする―――