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目次
gradation
世界にはたくさんの色がある。
見える環境があれば、750万色、少なくとも日常の中で180万
色の色を
見ていると言われる。私の人生はどんな色だろうか。
ーpale blueー
中学時代、私には親友がいた。毎日のように笑い合っていた。
あの時はまだ、気づいていなかった。あんなことが起こるとは
思ってもいなかったんだ。
「|陽菜《ひな》、明日私の家でゲームしようよ」
「いいね!」
楽しかった。明日は何をしよう。新しくできた雑貨屋行きたい
な。
「ねえ、明日はどうする?」
「ごめん、明日は無理」
「そうなんだ!」
それからも一緒に遊んでいたけど、毎日ではなくなった。
元気が無いのかな。少し痩せた?そんなことないか。
陽菜はいつも通りだし。
「楽しかったね~」
「そうだね」
「明日はどうする?」
「ごめん、明日は無理、明後日も、ごめんね」
「そうなんだ、いいよいいよ、気にしないで」
「ありがとう」
最近忙しいのかな、全然遊べなくなったし。まあ、中学生だし
な。
陽菜は私なんかと違ってちゃんと勉強しているんだろう。
「遊ぶの久しぶりだね。」
「うん。」
「なんか顔色悪くない?大丈夫?」
「えっ、全然そんなことないよ。」
「そう・・・」
陽菜どうしたんだろう。全然学校に来ないな。
私まだスマホ買ってもらえないから連絡できないんだよな。
まあ、大丈夫だろう。
「ねえ、陽菜のことなんか知ってる?」
「え、陽菜?知らない」
陽菜が学校に来なくなってからもうすぐ1ヶ月が経つ。
どうしたんだろう。陽菜になにかあった?嫌な予感がする。
陽菜の家に向かって走った。インターホンをならす。
「あのー陽菜いませんかー?」
ガチャ。陽菜か!
「ごめんねー今いないのよ」
「えっそうなんですか?じゃあどこにいるんですか?」
「たぶんどこかに遊びに行ってると思うけどね」
「そうですか、ありがとうございました」
公園かな?いない。図書館?いない。
学校にはいるわけない。どこだ?
何をこんなに心配しているんだろう。ここはまあまあ都会
なんだから遊べるところいっぱいあるし。どこかで遊んでるん
だ。
帰ろう、お母さんに5時に帰ると言っちゃったし。
その2日後だった。陽菜が夜に学校の屋上から飛び降りて
亡くなった。突然すぎる。えっ・・・なんで?分からない、
どうして?陽菜のお母さんから伝えられ、私は泣き崩れた。
立ってはいられなかった。なんで私に相談してくれなかったの?
陽菜、どうして?教えてよ。私のせいだ。私が気づかなかった
からだ、いじめられていることに。きっとひどいことをされて
いたのだろう。でも陽菜は私には言わなかった。私が心配しない
ように。家に帰るとポストに手紙があった。陽菜からだ。
私のことは気にせずに幸せな人生を送ってほしいと書いてあっ
た。
自分が死ぬ前まで私のことを気にしていたのだ。
それなのに、それなのに。私はちっとも陽菜のことを気にして
いなかった。ごめんね、陽菜。ごめんね。
あの日からもう20年経つ。あの時陽菜が亡くなって
いなかったら、33歳。きっとあの陽菜のことだ。職場でも
みんなから好かれ、いい人と結婚して。幸せな人生を送って
いただろう。自分を恨まない日はない。それでも、陽菜が
私の幸せを望んでいるのなら、それを叶えなければならない。
今まで陽菜にできなかったことを、少しでも、報いることが
できるなら。
ーbrilliant yellowー
高校は部活のバレーボールに夢中だった。青春というやつ
だろうか。とにかく楽しかった。部員のみんなも優しかった。
高1夏
インターハイ。3年生はこの大会で引退する。
毎年県ベスト8に進出する強豪校なので部員も多く、ベンチは
みんな2、3年生だった。私は応援するだけだったけど、
会場の熱が伝わってきた。神奈川県大会準々決勝。相手は
全国進出経験が多い超強豪、私立横浜御橋高等学校。この試合
に勝てばベスト4に入れる。第1セットが始まった。
今は20対16、勝てる!先輩たちの鋭い攻防から目が離せな
い。
2点とられた。あと2点で追いつかれる。大丈夫。いける
「ナイッサー!」
先輩たちに疲れが見えてきた。でも相手には疲れが見えない。
それより、勢いが増している。点数は?
20対23、あと一点で相手のセットポイント。
それから先輩のシュートが決まることはなく、20対25で第1セットを終えた。
「これからこれから」
「切り替えていこー」
先輩たちは声を掛け合っている。まだ第1セットながら先輩たちの
疲れは
マックスにきている。笛の音とともに第2セットが始まった。
早速相手にサーブで先制点をとられた。全国に出場するところはや
はり違う。
「切り替え切り替え、1点とろう!」
キャプテンの常盤先輩がチームの士気を上げる。
先輩はみんなから慕われていて、キャプテンを決めるときはみんな
の意見で
すぐに決まったらしい。チームの前では暗い顔を見せない。
やっと1点とったときには相手はもう6点、その後もこっちに
点を取らせてはくれなかった。そして、16対25、第2セットで
試合を終えた。
「ありがとうございました!」
そう言いながら先輩たちは泣いていた。
「帰るよ」
と常盤先輩は部員に声をかけていた。
学校の体育館に戻り、引退する3年生14人が順番に一言ずつ話し
ていった。
最後まで試合に出られなかった先輩もいる。
最後はキャプテンの言葉だった。
「とりあえずめちゃくちゃ悔しい全力を出せたから悔いはない。み
んなにも
悔いがない試合をしてほしい。1、2年生は一回一回の試合を大切
にしてね。
今までありがとう。これからも頑張ってね」
そう言い、部活を去っていった。こんな先輩になりたい。
そう思って毎日の練習に励んだ。そして2年生になりベンチ入りを
果たした。
「頑張れー!」
「もう1本!」
そうして2年生、迎えた春の高校バレー。
「キャプテンを決めるぞー」
私にキャプテンは無理だ。でも常盤先輩のようになりたい。
「どうやって決める?」
「あの、私やりたいです!」
「どうだ、キャプテンやりたい人が他にいないなら朝倉でいい
か?」
みんなが拍手をしてくれた。
3年生、引退試合。インターハイ神奈川県予選準決勝。
相手はあの時の相手、横浜御橋。私はスタメンで出場している。
仲間の掛け声とともに最初のサーブを打つ。
さすがに点は取れないか。接戦を繰り返し、第1セット23対19
で勝っている。
でも気は抜けない。横御が怖いのはここからだ。
やっぱり今までと違う。たぶん前半は体力を残し、後半から追い上
げる作戦
なんだろう。でも。
「このセットとろう!」
2年生エース沙智がブロックで点を取り、次は私が点を取った。
24対21、セットポイント。
「いけーー!」
仲間の応援が聞こえる。
「朝倉さん!」
セッター眞由美からボールが来る。私が決める。キャプテンとし
て。
ピイイイイ、やった、横御から1セットとった!
「気を抜かずに!もう1セットとろう!」
第2セットは横御に取られてしまった。第3セットは接戦になるも
23対25で敗北。悔しい、でも楽しかった。悔いはない。
学校に戻るとき、自然と涙が溢れてきた。
あの時はずっと必死だった。あんな先輩になりたいと思い、とにかく
がむしゃらに。毎日練習は辛かったけど楽しかった。
高校時代だけで私は幸せな人生だったといえるだろう。いや、
そんなこともないか。陽菜は見てくれていただろうか。
ーpink beigeー
大学時代の私は恋愛に染まっていた。大学生で初めて彼氏ができた
からうれしくて楽しかった。自分で言うのもなんだけど、私は
ブサイクというわけでも美人というわけでもない、普通の顔だ。
そんな私を好きだといってくれたのがあの人だった。
大学のお笑いサークルで出会った最初の彼氏が晴斗だ。
「ねえ、何か好きなものとかあるの?」
「うーんあんまり、何かに興味をもったことが全然ないの」
「へーじゃあなんでお笑いサークル入ったの」
「まあ漫才とか見るのは好きだったからなんとなく」
「俺は芸人になりたくて、ほんとは高校出たら養成所入りたかった
んだけど親に大学は入れっていわれて」
そんなにお笑いに情熱があるとは。
「2年になったら入ろうと思ってるんだ」
「そうなんだ、すごいね」
「ねえ、今度一緒にお笑いライブ見に行かない?」
「う、うん。いく」
初めて男の人と遊びに行ったので緊張して単純にお笑いを楽しめ
なかったけれど楽しかった。
「今日は楽しかったね」
「うん」
「また行こう」
「うん」
この人と付き合ってみたい。1ヶ月後、思い切って声を出した。
「あの、私と付き合ってください」
「よろしくお願いします」
それから私の幸せな生活が始まった。映画に行って、遊園地に
行って、毎日楽しかった。学園祭で漫才をすることになって
晴斗と組んでネタは書いてもらった。結構ウケて良かった。
「ウケて良かったな」
「またあったら組もう」
「うん、楽しかった」
その後5年経ち彼は賞レースの準々決勝まで進むようになった。
まだ付き合ってはいたけど会えるのは少なくなっていった。
「香奈芽のこと好きだよ」
「でも、今日は言いたいことがあって、俺、先輩の薦めで大阪に
行くことになったんだ」
えっ、私は東京で仕事してるから、もう付き合えなくなるってこ
と?
そんなのいやだ。
「いつから行くの?」
「来年の4月から」
「そっか、分かった、じゃあそれまでは一緒にいよう」
「ほんとにごめん」
「ううん、しょうがないよ」
「絶対売れるから、見てて」
「うん、楽しみにしてる」
彼は今じゃテレビでよく見るようになった売れっ子。
約束通り売れたのだ。本当にすごい人だ。
結局私にとって最初で最後の彼氏だった。
また会いたい。でももう連絡もつかない。
忙しいだろうし、ましてや私がこんな状態だと知ったら
悲しんでしまうだろう。だからこれでいい。
ーtransparent whiteー
私は|神経膠芽腫《グリオーマ》という病気だ。今はグレード4で
余命は1年ほどだと言われてからもう10ヶ月が経つ。
毎日入院生活で、両親は私の前では笑顔を作るけど、
病室から出たら泣いているのを知っていた。
最近さらに病状が悪化しているらしい。
両親は相変わらず泣いてくれるけど、
「私悲しくないから、泣かないで」
私は悲しくなかったのに、なぜか急に悲しくなってくる。
それからまた医者に余命1ヶ月だと宣告された。
たぶんその通りになるだろう。
その日が訪れたのは宣告の28日後だった。
幸せな人生だったと思う。
悲しいこともいっぱいだったけれど、楽しいことも
いっぱいだった。陽菜、私のことを覚えていますか。
覚えていてくれたら嬉しいな。
部活のみんなは今何をしているだろう。仲が良かった
同級生は空港で働いていると言っていたが、他のみんなは
どうだろう。晴斗は大阪のテレビによく出ているから
会っていないけど身近な感じがする。
私のこの23年という人生で、特に大きなことはこれくらい
しかなかった。でも、毎日楽しくて楽しくて仕方なかった。
だから悔いはない。
だんだん意識が遠のいてきた。周りの声も聞こえない。
精一杯口を開けて声を出した。
「本当にありがとう」
聞こえただろうか。自分で声が出た感覚が分からない。
声が出てなくても、きっと伝わっただろう。
今までありがとう。
私の人生はどんな色だっただろうか。
どんな色でも良いけれど、何が良いかと言われたら
白がいいと答えるかもしれない。
どんな色にも染まれる。始まりの白。
豆腐の道
こじんまりした家、その中の小さな冷たい|檻《おり》が
僕の家である。そこで僕はひっそりと生きている。
そう、僕は「豆腐」なのだ。
どこでも大量に売っている豆腐のうちのたった1個。
近い内に食べられて死ぬ運命にある。
豆腐に生まれてきた自分が可哀想だと思わなかった
日はない。
この家に来た時点で僕の最後は目に見えているのだから。
「ねえ、君豆腐でしょ」
「そうだよ」
「見て分かるでしょ」
「そんなこと言わないでよ」
「まあ2人共さ、残り少ないんだし楽しく
しゃべって過ごそうよ」
「いや、今日はもう遅いし明日」
「はいはい」
「おはよう」
「君いつまで寝てるんだい」
「いいじゃん、どうせやる事ないんだし」
「まあね」
「豆腐君、君は自分が豆腐に生まれてきて
嫌だと思ったことはあるかい?」
「毎日のように思ってるよ」
「鳥とか人間とか、そういうのに生まれてきたら
どんなに良かったか」
「醤油さんは思ったこと無いの?」
「うーん・・・無いね」
うそだあ。
「何で?」
「一回自分で考えてみたら」
「えー教えてよ」
「もう昼だぞ、いつまで寝てるんだ」
「しつこいなー」
「ねえ、僕の賞味期限いつって書いてある?」
「えーっとね、2月4日」
「今日は2月2日」
「はあ、あと生きていても2日だな」
「まあそう気を落とすな」
気を落とすなっつったって、何かが変わる訳じゃないし。
「俺を見ろ、あと2、3滴で無くなるんだぞ」
「俺はあと1日生きられるかってところだ」
「全然悲しそうじゃないね」
「当たり前だ、もう十分生きたからな」
「ただ一人の人間に使われただけで?」
「ああそうだ、その為に俺は生まれてきたんだから」
「僕にもそう思えるといいんだけどね」
「帰ってきた」
「ああそうだな」
「豆腐君、君に伝えたいことがあるんだ」
「なあに?」
「いつ死ぬかばかり考えているんじゃなくて
今を楽しんで生きろ」
「無理だよ」
「無理じゃない、誰だってできる」
そんなことない、きっと。
「俺を見ろ、こんなにも幸せそうに生きている俺を」
「でも楽しむなんて無理だ」
「だって僕は何にもできないんだから」
「こうやって今2人で話してるじゃないか」
「豆腐なんかに生まれてこなきゃ良かったんだ!」
「違う、自分が不運だと思ってるからそうなるんだ」
「君はきっとどんな生き物に生まれ変わったって
一緒だと思うぞ」
「そうやって、自分はこれに生まれてこなきゃ良かったって」
だって実際そうなんだからしょうがないじゃん。
「じゃあ、じゃあどうすれば良いんだよ!」
「それは自分で考えろ」
自分でって・・・無理に決まってる。
「じゃあな」
「待って」
そう言って醤油さんはこの家の住人に連れていかれた。
その時、醤油さんは|微《かす》かに笑っていた。
とても幸せそうに見えた。
一瞬、冷たい檻が開き、暖かい風が流れ、家の中が
少し見えた。こんなにも世界は広かったんだな。
そして、醤油さんが帰ってくることは無かった。
次の日、2月4日。
ああ、今日僕は死ぬんだな。でも今まで思っていた
より嫌じゃない。昨日の答えが分かった気がする。
前を向く。それが僕なりの答えだ。
住人の手にとられる。檻から出て外の世界を見る。
青い。どこまでも続いている。すごく|綺麗《きれい》だ。
言葉には表せない美しさがある。
まだ豆腐に生まれてこなければと思ってしまう。
でも外の世界を知る感動を味わえたのは豆腐だった
からだし、ちょっとは良かったかなと思える。
「今から僕もそっちに行きます」
これで僕は豆腐としての務めを果たせる。
僕はそっと目を閉じた。
日記~手紙
~1章 日記~
日記を書こう。特に理由はない。私はいつも自分の意思で何かをし
たことがなかった。
きっとこれも長続きしないだろう。
2021年12/1
いつも通りの一日だった。ご飯を食べて、学校に行って、なんとな
く勉強をした。
中学に入ってから友達はいないから今日も一人で本を読んだ。
12/2
今日も教室の後ろで男子たちが騒いでいて先生に怒られていた。
怒られるにきまっているのになぜそんなことをするのかよく分から
なかった。
12/3
最近一人で本を読んでいるだけの私に声をかけてくれる人がいる。
気遣いができて明るい。こういう人がみんなの人気者なのだろう。
12/4
今日も一人で本を読んだ。本は今まで思い出がない私の人生を彩っ
てくれるすばらしい
ものだと思った。
12/5
またあの子が話しかけてくれた。どうやら今流行りのドラマの話題
で盛り上がっているらしい。
明日が最終回だと言っていた。せっかく教えてもらったし、見てみ
るか。
12/6
教えてもらったドラマを見てみた。10年以上片想いだった人に告
白し振られるも、1年後
また告白しゴールイン。ありがちな感じがしたけど特になんとも思
わなかった。
何かに感動したり、泣いたりできる人がうらやましいと思った。
12/7
今日は暇だったから読みたかったミステリー小説を読んだ。なかな
か面白かった。
12/8
定期テストが返却された。よく話しかけてくれる子が数学で30点
代をとったらしく
周りの女子が笑っていた。あの子も笑っていたけれど、嫌がってい
るように見えた。
なにかすごく嫌な気分になった。だから口にだしてしまった。
「人の失敗を笑って楽しいの」と。教室のみんなの冷たい視線を感
じた。
12/9
放課後の帰り道。あの子が「昨日はありがとう」と言ってきた。
私はただ自分の思ったことを言っただけだよ。思いやりとか優しさ
じゃない。
でも、少しだけまともな人間になれたのかな。
12/10
最近はあの子とよくしゃべるようになった。やはり友達は多いよう
だ。
それ以来、私は人とよく会話をするようになった気がする。
~2章 別れ~
2023年1/23
高校受験も終わり、卒業が近づいてきた。行きたい高校に合格し喜
ぶ人もいれば、
希望通りにいかずに泣く人もいた。私は普通の地元高校。仲良くし
てくれた人たち
とは離れてしまうけれど、残りの時間を楽しもう。
3/9
今日は中学校生活最後の合唱コンクールだった。今まではなんとな
く歌っただけだった
けれど、初めてみんなで一つのものを造り上げる楽しさを知ること
ができた気がする。
3/10
今日は久しぶりにいつも通りだった気がする。読みたかったけど時
間がなくて
読めなかった本を読んだ。
3/11
卒業式まであと5日。
今日はなんとなく音楽が聴きたかったので卒業ソングを聴いてみた。
やはりレミオロメンの3月9日はいい曲だ。2日前に聴いておけば
良かったな。
3/12
卒業式まであと4日。
今日は友達とショッピングセンターに行った。今まで一人でいるこ
とが多かった分
知らないものがいっぱいあった。帰りにみんなでアイスを食べて楽
しかった。
3/13
卒業式まであと3日。
今日は家でのんびりテレビを見た。お笑い特番をやっていてとても
笑った。
お笑い芸人さんは本当に尊敬する。名も知らない誰かを笑わせるた
めに、日々奮闘している
のだから。
3/14
卒業式まであと2日。今日も仲間との時間を大切にしよう。
3/15
いよいよ明日は卒業式。
もっと友達と遊んでおけばよかったな。
3/16
卒業式を終えた。初めて別れを惜しむ涙を流した。
今思えば勝手に自分は何もできないと思い込み、一人で過ごしてきた。
今でも一人でいるのは好きだけれど、もったいないことをしていた
なと思った。
別れは最後ではない。むしろこれから私の新しい人生が始まっていく。
一人ぼっちだった私を救ってくれた友達に、いつか手紙をだそう。
~3章 手紙~
2028年3月16日
|咲希《さき》 へ
毎日寒くて、布団から出るのに苦労します。
体調は大丈夫ですか?私は元気です。中学卒業から5年経ちました
ね。
私は今苦しんでいる人を少しでも救えるように医学部に進学し、
毎日奮闘しています。
いつも一人だった私を救ってくれたあなたを、私は忘れることはあ
りません。
誰にでも優しく、明るくみんなの人気者の咲希がずっとうらやまし
かったです。
卒業式の日、たくさん涙を流しながら
「大人になってもずっと友達だよ。」と言ってくれましたね。
共に泣き、笑い合った日々を、今でも覚えています。
また咲希に会える日を楽しみに待っています。
|逢坂 祈《あいさか いのり》より
私はいつも自分の意思で何かをしたことがなかった。
それでも私のことを大切にしてくれる人がいる。
それだけで私は頑張れる。
「僕、病気なおるかな。」
「うん。もちろん。」
「先生が必ずなおしてあげるから頑張ってね。」
「うん!頑張る!」
明日の空は
痛い、死にたい。そんなことばかり考えている。
考えていたって何も変わらないのは分かってる。
でもやっぱり死んでしまった方が楽だと思ってしまう。
ベランダに出る。空は曇っていて暗かった。
手すりから身を乗り出す。目を閉じた。
しばらくして目を開くと美しい少女がいた。
#天使#だろうか。ああ、そうか。死んだんだ。
「お疲れ様です」
「あなたは#天使#?」
「ええ、そうです」
「このまま天国に行きたいですか?」
「うん」
「それとも生まれ変わってまた生きたいですか」
えっ、いやいやいや。何のために死んだと思ってるんだよ。
「あっ安心してください、貴方の今までの記憶は
きれいさっぱりないですからね」
無駄にテンション高いのがムカつく。
「嫌だよ、生きたくない」
「えーほんとに?」
「うん」
「困るなそれは」
「何で・・・」
「私には役目があるので」
役目?
「役目がどうだの知らないけど嫌だよ」
「嘘だー、貴方後悔があるでしょう?」
「ないよ」
「何が辛かったのか教えてくれませんか」
「はあ・・」
説明しないと終わらせてくれなさそうだから説明した。
母からの虐待に苦しんでいたこと、父は私のことをちっとも
心配してくれなかったこと、これは虐待なのか自信がなくて
誰にも言えなかったことを。
「そう、辛かったね」
「でも貴方、夢があったんじゃないですか?」
え・・・・・・
「絵を書くの好きだったんでしょう」
そうだ、2年前くらいまでは将来はイラストレーターに
なるんだなんて言ってたな。短くて使いにくいぼろぼろの
色鉛筆で毎日のように描いていた。
「怖い、また同じことを繰り返すのが」
「そうだよね、分かります」
「私もね、そうだったから・・・」
その#天使#はぼそぼそっと呟いた。
私もそうだった、もしかしてこの#天使#はもともと
私と同じことで苦しんでいた人間だったのではないか。
この優しく、どこか寂しそうな眼差しからそう思ってしまった。
「悔やんでからでは遅い、私みたいになってしまいます」
「やっぱりあなた、生まれ変わるのをやめた人間なのね」
「そうですよ、よく分かりましたね」
「だから今はこうやって後悔を残して死んだ者を救う、#天使#を
しています」
後悔してからでは遅い、か。もうすでに自殺した時点で後悔
してるけど、またやり直せるなら。
「生きたい、私たっぱり生きたい」
「良かった」
「虐待されて自殺なんてもったいない」
「あなた全部知ってたんでしょ、私のこと」
「さあ、どうでしょうね」
#天使#はほほえんで消えていった。
目の前は光輝いて、私は目を閉じた。
「#伶#、早く勉強しなさい」
「はーい、今やるから待ってー」
「もう、仕方がない子ね」
自分の部屋の机に向かう。窓を開けた。
「今日の空、きれい。」
スヌーズ
2006年
「#菜々#ー、早く来てえ」
「はいはい待って」
「泥だんご作ろうよー」
「えー汚いよ」
2009年
「#菜々#ー、社会科見学のグループ学習一緒にやろ」
「いいよ、今日ちょっと書いてくる」
「えー菜々がこれ書いたの、すごっ」
「まあこれくらいはねー」
「よくこんなの一日で書けるねえ」
一週間後
「次の発表は#菜々#と#沙奈#か、みんな拍手」
先生に呼ばれて私たちは前に出た。
私は書いてきた原稿をそのまま読んだ。
#沙奈#は私より全然少なかった。
「#菜々#すごーい」
「ありがとう」
発表はうまくいったのに#沙奈#は全然嬉しそうじゃなかった。
2012年
「#菜々#、卒業文集の書けた?」
「書けたよ」
「ちょっと見せてくれない?」
「いいよ」
「ありがとう」
「どういたしまして」
3ヶ月後
「やっと卒業だねえ」
「そうだね、でも私たち中学一緒だし」
「#菜々#は頭良いのに受験しなくて良かったの」
「いいの、行きたいとこなかったし」
卒業式と|謝恩会《しゃおんかい》が終わって家に帰った。
みんなの卒業文集を読んだ。#沙奈#のだ。
「たくさんの友達ができたのに別れてしまうのは悲しい
けれど、新しい場所で頑張りたいと思います」
こんなことを書けるのは羨ましい。私に友達は#沙奈#しか
いないから。
2015年
「もう卒業だなんて早いねえ」
「そうだね」
「#菜々#は良いね、国立の高校なんて私の頭じゃむり」
「そんなことないよ」
「そんなことあるってえ」
「またね#菜々#」
「ばいばい、またね」
幼稚園から一緒だった私たちも高校で離れることになった。
2018年
部活から帰りしばらくたってスマホが鳴った。
#沙奈#からだ。
「15日、久しぶりに遊ばない?スタバ行こ」
私はこれから大学受験だというのに。といっても音大だけど。
「ごめん、大学受験だから」
「大学受験ってったって音大でしょー」
「練習しなきゃいけないから」
「ふーん分かった」
予定だった15日に他の友達と遊んでいる写真がたくさん
送られてきた。
2020年
私は第1志望だった国立の音大に落ちて私立の音大に入った。
国立の音大に落ちて私立の音大もギリギリの合格。
完全に自信を失くしていたから毎日ずっとピアノを弾いていた。
6月
「#菜々#ー、今度#菜々#の家遊びに行っていい?」
ずっと断っていたし、たまにはいいか。
「いいよ」
「やった~、26日はどう?」
「いいよ」
「じゃあ26日の10時で」
6月26日
「おじゃましまーす」
「入って、お茶出すね」
「だいぶ昔と変わったね、#沙奈#」
「そーお」
「それにしても#菜々#は変わんなすぎでしょ」
「根暗もちょっと直した方が良いよ、モテないって」
「うーん」
「大学はどこにしたの?」
「私立〇△芸術大学」
「私立かあ?国立落ちたんだ、ダサッ」
「音大なんてやめとけばいいのに、大して上手くもないんだから」
今までにない|苛立《いらだ》ちで言葉が出なかった。
「せっかくの頭がもったいない、友達もいないで一人で
引きこもりなんて可哀想」
「私たち、友達だよね」
「えっ何急に、今はもう違うんじゃない」
「私の友達みんな明るいし」
私はいつのまにか立ち上がってキッチンに向かっていた。
「えっ・・・#沙奈#?」
#沙奈#の腹部から血が流れている。死んでる。
「何で?どうしよう」
「うわああああ、何で?私がやったの」
キッチンに行ってから何も覚えてない。どうすればいいの?
ピピピピッ、ピピピピッ。
その音で私はベッドからはね起きた。
スマホの画面を見た。6月26日(土)10:25。