なんとなく思い付いたお話をなんとなく書くシリーズです
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目次
雨のち遊園地のち涙
新シリーズ開幕
なんとなく思い付いたお話です
「なんで今日は雨なんだよ……」
最悪の目覚めだ。
今日という日をずっと楽しみにしてきたのに…
今日は俺にとって特別な日……俺の…誕生日だから…
俺の誕生日、2月29日。今年はうるう年。
人生で4回目の誕生日。4年に1回の特別な日。
---
「つぎの誕生日はなにがほしいの?」
「ん~遊園地!」
「遊園地ね。よし!ママが遊園地をプレゼントしたる!楽しみにしててね。」
---
前の誕生日のとき、ママと遊園地の約束をした。
あれから、今日という日をずっと楽しみにしていた。
「あら、おはよう」
階段を降りると、ママの声がした
「…うん」
テキトーに返事して椅子に座る
「今日はあなたの誕生日よ。うかない顔してどうしたの?」
「……知るかよ」
本当は雨のせいだけど。それを言ったら笑われそうだし………
「ねえねえ、遊園地、さっそく見る?」
子供みたいな笑顔で近づいてくる
刹那、胸がドクンとなった気がした
「え……見るって…どこにあるの?」
「うふふ。じゃじゃーーん」
そう言って後ろに回していた手をこちらに差し出す。と同時に甘い香りがふわっと漂った。
ママの手にはケーキがのっていた
「ママ…これ遊園地?」
「ええ!遊園地よ!」
どーゆーこと?
「ほら。ケーキの上、よく見て♡」
いわれたままに見てみると、メリーゴーランドの形の飾りがちょこんと居座っていた。
「………これが…遊園地……?」
「そうよ。約束通り、遊園地のプレゼントよ」
「え……遊園地で遊べるんじゃないの……?」
「え?!遊びたかったの?!」
「あっそっか!この上で遊べと!」
「だめよ!そんなことしたらケーキがつぶれてしまうわ!」
くっ……悪あがきは無駄か……
どうやら食い違いがあったようだ
ママも……間違ってはないんだけど……流石天然
ああ…期待して損した……
思いもよらぬプレゼントに、行くあてもなく家を飛び出した。
今日が雨でよかった……
読んでくれてありがとうございます
一緒にいたかっただけなのに
ピーポーピーポー
近づく耳障りな、|音《サイレン》
その|音《サイレン》はどこまでも切なくて悲しくてつらかった。
---
クラスメートが運ばれた
私の隣で突然、倒れた
---
クラスメートは次の日もその次の日も、次の週も、次の月も学校に来ることはなかった
---
あれから、半年。
そのクラスメートが亡くなったと先生が言った
持病が急激に悪化したらしい
「嘘だよ。」
誰かにそう言われたかった、言って欲しかった
受け入れられなかった
仲良くしていたわけではない
せいぜい班が同じで、少し言葉を交わしたくらい
なのに…今すぐにでも会いたい
話しがしたい
ねえ、持病があるってどうして隠してたの
ねえ、あなたは私のことどう思ってるの
ねえ、もっと私を見てほしかったよ
ねえ、あなたのせいで私はつらいよ
ねえ、ねえ、ねえ……ッ!
…永遠の命なんてない
そんなの分かってるよ
でも、逝くのがはやすぎるよ
もっとずっと一緒がよかった
ああ……
もう……会えないの?
ずっと好きだったよ
ううん…
あなたなんか大っ嫌いだよ
読んでくれてありがとうございます
なんかで見たんですけど東京ディズニーランドって見ないで打てたらスマホ依存らしいです
みなさんはどうですか?
君のせい。
肺にたっぷりの酸素を送り、たっぷりの二酸化炭素をはく。
このときを待ちわびてた。
真夜中。学校の屋上。
ここからは察してほしい。
私の計画は完璧に進んだ。
昼。1階の廊下の窓の鍵を開けたままにする。
夜。親の目を盗み家から抜け出して、昼に開けておいた窓から学校に忍び込み、持ってきた鈍器で屋上の鍵を壊す。
怖いくらいに順調だ。
わざわざ学校でやらなくてもって思った人もいるでしょう。
私だってそう思った。
けど、恨みがあるんだ。この学校の生徒と先生に。私にとってみんなが敵だ。
仕返しもせず消えるなんて屈辱でしかない。
私の考えた仕返しは、学校の七不思議的な存在になって、みんなを襲うこと。
我ながら完璧な作戦だと思う。
柵からそっと顔をだし、地面を覗き込む。
「ひぃ思ったよりも高い」
まあでも、そんなの関係ない。
むしろ、高い方がいい。
思わず笑みがこぼれる。
そして、宙へと舞った……
ガシッ
……は?
「おい!|望夢《みゆ》!なにしてんだ!」
「離して!」
強い力で右腕をつかまれる。
「痛いッ!…ていうか、あなた誰?!」
「誰って、|桜谷柊弥《さくらたにとうや》だよ!」
「…え?!柊弥?!なんでっ!」
柊弥は、私の好きな人……好きだった人……
中学生のとき。私がまだ、いじめられる前。思い切って告白して、柊弥にふられた。私の初恋は儚く散った。
高校は別の学校で、電車でたまに見かけるだけで接点はまるでなくなった。
それなのに、それなのに!
「どうしてここにいるの?!」
「………」
ゆっくりと屋上に引き上げられる。
「望夢……」
「……な、なに?」
「…ごめん」
「なにが?」
「中学の卒業式のとき…君にいおうって決めてたんだ」
「なにを?」
「好き……って」
「えっ………?」
「望夢、今はもう俺のこと嫌い?」
「べ、別にそんなことないよっ」
「嘘だろ?」
「そっそんなことない!」
咄嗟に大きな声を出してしまう。
「ううん、もういいんだ」
そう言って、私に手を差し出す。
なんとなくその大きな手に手をのせた。
次の瞬間、強い力で引っ張られた。
気づくと地面が目の前にあった。
ほんの刹那見えた、眼前に広がる雲に隠れることを知らない月と星たちが脳に鮮明にこびりつき、離れなかった。
痛い。
最後の力を振り絞り、目を開く。
柊弥の力の抜けた顔には、涙が伝っていた。
「なん……で…泣いてんの………?」
そして、ゆっくりと目を閉じた。
"誰のせいだと思ってんの"
そう、聞こえた気がした。
---
以後、校内で嘘を言うと恐ろしい呪いがかかり、最終的に床や地面の中に引きずり込まれてしまう、という伝説が伝わっていったそうだ。
読んでくれてありがとうございます
どこかで聞いたんですけど一回の咳で消費するカロリーはだいたい2kcalらしいです
思ったよりも多くてビックリです
俺の好きな人は友達を好きな人。
「好きだよ」
なんて言葉は、相手に伝わらなきゃ意味がない。例え俺がどれだけ君を好きでも。
---
どうしてずっときづかなかったのか、分からない。今思えば、君が俺が好きなんてあり得かなかったんだ。
自惚れてた。ただ、幼馴染みというだけで、勘違いしてた。
だが、匂わせる君も悪い。普通好きでもない人と、抱き合う?デートする?キス…する?
意味が分からない。そんなの、ただの男たらしじゃねえか。
君は俺の友達を好き。
こんなにも複雑な気持ちになるなんてないよ。恨めしいな。憎たらしいな。自分に対しても、君に対しても、そう思うよ。虚しいよ。
君への気持ちは遥遠くの彼方へ溶けて消えていったよ。でも変わりに、恐ろしいほどの憎悪が降ってきたよ。どうもこれは消えそうにはないんだ。
だからお願いだ。君へ、1つのお願いがあるよ。手紙書いたよ。読んでくれるかな?
---
君へ。
君は覚えてる?小さい頃、よく遊んだよね。 海に行ったとき、俺を砂の中に埋めて楽しんでたよね。
あとは、公園のベンチで寝ている俺に、砂場で集めた砂を俺の鼻と口に入れることにハマってたよね。あれは今でも覚えているよ。いい思い出だ。
一緒に図書室に行って勉強してたた時期もあったよね。その時持っていったお弁当のご飯にサプライズでケシカスをかけてくれたよね。あの味は今でも覚えているよ。
キャンプにも行ったよね。焚き火の炎の中に君に突き飛ばされた時はビックリしたな~。あのときの火傷は今でも残ってるよ。そのおかげであの思い出は忘れられないよ。
君はビックリ箱みたいな人だったよね。いつも俺を驚かせて、鈴を転がすように笑い、たくさんの思い出をくれた。本当に感謝しかない‥‥そう思えたのは、いつまでだろう。
大きくなって物心がつき、色々分かるようになって、興味を持つようになった。それと同時に、こんな関わり方は普通じゃないと気付いたよ。
でも、君は悪い人じゃないでしょ?
どうしてもうらめなかったんだ。
君には俺しかいなかっただろ?それと同じで、俺には君しかいなかった。
だから、君を恨みがたいこの気持ちを、俺は恋と呼んだ。それが正解なのかは今でも分からないよ。
でも、今は、とてつもなく大嫌いだよ。君は、ずっと俺を殺そうとしていたんだね。そして今、俺は君を、呪い殺したい。
ある意味、両思い?笑
今まで色々世話になったな。明日でお別れだよ。期待して待っててね♡
---
どうだろう。伝わったかな?笑
まあ、伝わらなくても俺がやることには変わりはないけどね。笑
俺の友達よ。本当にすまぬ。恋路を邪魔させてくれ。
---
待ちに待った朝。俺は、君のもとへ走っていった。
読んでくれてありがとうございます
え?まじ?最後まで読んでくれたの?笑
ファンレターおねしゃす笑
地球
これは、私の空想の世界の話。
太陽は静かに死んでいき、月はいつも真っ赤に燃えている。
植物は泣き、落ち葉はいつも真っ青に凍っている。
大地は疲れ果て、空はいつもどす黒い紫に染まっている。
そんな|世界《ところ》に私は1人たたずむ。
---
あなたは想像できるだろうか。こんな世界を。
昼とか、夜とか、そんなの関係ない。
ただ、普通なら太陽と月は交互にやってくるものなのに、この世界は太陽と月が同時にある。いつでも。
奇跡のツーショットとでも言おうか。
植物は、何があると思う?
サボテンか?
バカを言うな。
気色悪い形状で蛇みたいなニョロニョロした見た目の植物しかいない。
もし、カメラでそれらを撮ったら消すか、モザイクかけるか、大抵の人はそういう対処をするだろう。
いや、そもそもカメラなんかこの世界に存在しないし、あったとしても写真など撮らないだろう。
いや、おおもとをたどろう。ここには私しかいない。"大抵の人は"なんて言ったけど、誰もいない。
食料なんてない。
だけどここはあくまでも空想の世界。
そんな現実的なことは考えなくても心配はない。
水なんてこれっぽっちもない。
空は不気味な色をしていて、この世界では影がない。
いくら月が燃えても、元気だった頃の太陽には遠く及ばない。
雲はない。
それはそうだ。
雲のできる仕組みを知っている人は分かるだろうが、水がなければ雲はできない。
風はない。
漂うのは、何かが腐ったような、そんな刺激臭。どこから漂っているのか分からない。
なにが腐っているのか、そもそも腐ってる訳じゃない可能性もある。
空気は重く、ネトネトしている。
どんよりと何かにとりつかれているような、重っ苦しい気持ちになる。
息をする度に、肺が気持ち悪くなる。
「助けて」
そんな言葉も忘れてしまうくらいの孤独。
寂しいよりも、もっと残酷な。
時間?そんなの知らない。
ずっと同じ景色。
雲が流れていき、小川の水が流れる。
そんな平穏な景色は影も形もない。
たった1秒でさえ、ひどく長く感じる。
1分なんてもう絶望でしかない。
先程私は、この世界を空想の世界と言ったが、実際は私の夢の中の世界だ。
最近よく、この世界へ降り立つ夢を見る。
それも、不気味なほどに何も起きずに、朝を迎える。
最初の頃は訳が分からなかった。
けどもう何百回とこの夢を見続けてきた。
ただの偶然とは考えがたい。
きっとこの世界は、夢は、いつか現実になるのではないか。
そう、思ったりもする。
この世界が地球であることは間違いないのだ。
酸素はある。
重力も、慣れた感覚がする。
太陽と月の距離感も変わらない。見慣れた大きさ。
水こそないが、水があった形跡はそこらじゅうにある。
つまり、川の形が残っているということ。
私が思うに、この世界は、百年後の地球なのではないか。
もう、2度とこんな夢は見たくない。
なのに、夢は意識とは別に出来上がってしまうから、止めようがない。
先程、"何も起きずに朝を迎える"と言ったが、ごく稀に、大きな隕石がやってきて、地球がバラバラになり、朝を迎えることもある。
これが指すのはきっと、いずれにしろ地球の滅亡。
まあ予言者でもなんでもないので正確なことは言えないが、滅亡する可能性は決して低くないと思う。
だって、恐竜が絶滅したみたいに、人間が絶滅するなんて違和感はないだろう。
百年後の地球。それはどんな世界をしているのだろうか。
この目で確かめてみたいものだ。
---
こんにちは。若かりし頃、地球滅亡の夢を見ていた者だ。
当時、百年後の地球は滅亡すると考えてた私だが、今、その百年後を迎えた。
今、地球がどうなってるかって?それは皆が気になるところ。
ふふふ。
無事、終わりを告げようとしているよ、この地球は。
最近ニュースではこの話題ばかり。
ニュースと言っても昔当たり前だったテレビなんかないが。
"巨大隕石接近中"
これが世界を困惑させている。
私自身はこうなることを予想していたので驚きはないが、当時いなかった夫と子供と孫。
この大切な人たちも被害を受けなければいけないのは苦痛でしかない。
今更どうにかできることでもない。
ただ祈ることしかできない。
祈れば叶う。現実はそんなに甘いはずがない。
---
地球は忽然と姿を消した。
まるで、最初からなかったかのように。
今まで人類が築いてきた歴史なんてもうどこにも残っていない。確かめようにも確かめられない。
でもこれが、人類の行き着く先なのだ。
それは今も昔も変わらない事実。
それに気付く人が私じゃなかったら、何か変わっていたのかもしれない。
読んでくれてありがとうございます
なんか変な話ですね
こんなにオチも考えずに書いたの始めてです
やっぱり愛する君のそばでいい
「ユキオ~!聞いて聞いて!」
呼ばれて振りかえると、満面の笑みを浮かべた"ゆな"が走ってきた。
「私ね、結婚する!」
何!?ケッコンだと!?
「前さ、この家に遊びにきた男の人いるでしょ?その人が相手なの!」
アア~そんなヒトが来てたような来てないような‥‥
「今日ね、プロポーズされたの!しかも夕焼けの海で!もぉ~ロマンチックすぎるでしょ!?」
オレならもっと君が喜ぶような場所知ってるんだけどな~。そんなことを思いながら、アタマをゆなの腕に擦り付ける。
「あははっ!ユキオはマイペースだなぁ」
そう言うと、ゆなは思いっきり抱き締めてくれた。いつもよりも力が強い。興奮状態にあるためか。
「ユキオも|婚約者《ともき》と仲良くするんだよ~」
なんだそれ!聞いてないゾ!ま、まあ‥ゆなの頼みだからな。しょうがない。その、ともきとやらとも仲良くしてやろうか。
---
それからしばらく経った。
来週には結婚式をあげる予定だそうだ。
この前ゆなとオレは、ともきの家に引っ越し、同居生活を始めた。ともきの家は前の家より広くて落ち着かない。2人がイチャコラしてるところに居合わせるとこっちが恥ずかしくなってくる。ゆなとの二人きりの時間が減ったのが少し寂しい。だから最近寝てる時間がすごく増えた。
今日はともきは仕事で家を留守にしている。ゆなは仕事が休みで、リビングのソファーでお昼寝タイムだ。そしてゆなの隣で添い寝しているのがオレだ。
ともきがいない時間は貴重に使うようにしている。こんなオレでも気を遣っているのだ。もっと感謝して欲しいよ。だからご褒美に煮干しを‥‥なんて別にいいけど。
暖かな日差しが窓から差し込む。部屋が明るく照らされ、ゆなの顔には陰影がはっきりと浮き上がる。改めて見ると綺麗な顔立ちだ。オレも生まれ変わったらゆなと結婚したいなぁ。こうしてるだけで幸せだ。
すると、太陽に雲が重なったのか、突然暗くなっていく。なぜか不安になったので、ゆなの懐にもぐり込む。嵐の前のような怖いくらいの静けさに、胸騒ぎがした。
ふいに、玄関のドアの開く音がした。ともきが帰ってきたのだろう。オレがゆなと過ごす時間は終わりを告げたようだ。仕方がない、迎えに行ってやるか。
しかしオレが玄関に続く廊下で出会ったのはともきではない2人の男たちだった。一瞬、ゆなの浮気相手か不倫相手かと思ったが、それはあり得ないなと、その考えはすぐに消去された。だって、手に鋭利な刃物を持っているんだもの。
「カネを出せ!!カネがあんのは知ってんぞ!おとなしく出さねえと殺すぞォ」
コイツらは強盗だ。ゆなが危険だ。こんな非力なオレでもどうにかできるだろうか。いや無理だ。せめて時間稼ぎを。いや‥‥警察を呼んだ方がいいのか?
「なに~?騒がしいわね何かあったの~?」
ゆなの間の抜けた高い声がリビングの方から聞こえる。
しまった!まずい!さっきの強盗の大声でゆなが起きてしまった。
オレは必死で状況を伝えようとしたが、その努力は無意味だった。
そして、いよいよ強盗とゆなが鉢合わせしてしまった。
1人の男がゆなのところへ一直線に向かう。
「オラァ!この家にカネがあんのは調べ済みだぞぉ!さっさとカネを出せ!!」
「え‥‥お金?私、知りませんよ!私の財布なら‥‥」
「ハァ!?ざけんなよ!オイお前、コイツを縛れ!」
男がもう1人の男に指図する。
ふざけんな!!ゆなに手を出すな!!ゆなはもうすぐ式を挙げるんだぞ!!
憤りに、オレはゆなを縛ろうとする男の足にありったけの力で噛みついた。
「いてぇなオラァ!貴様さっきからちょこまかと邪魔くせぇんだよ!!」
「ッ!?ユキオ逃げて!!」
ゆなの声が聞こえる。
その直後、全身に鈍い痛みが走った。どうやら蹴られた衝撃で壁に身体を打ち付けてしまったようだ。
クソ!!立てない‥‥ッ!!ゆなは!?ゆなはどうなった!?
視線をゆなの方にめぐらすと、ゆなは全身にガムテープを巻き付けれていた。
ゆなは、悲鳴をあげながら、床の上で、もぞもぞののたうち回っていた。
その間に2人の男は家を荒らし、金目のものを見つけては袋にいれていた。
オレは重い体を動かし、男たちのもとへ駆け寄る。だが、先程と同じように蹴り飛ばされてしまう。
クソォ‥‥こんなピンチのときに大事な人さえも守れないのかよ!
男たちには叶わないと思い、ゆなのスマホで110にかけようと思ったがどうやらゆなは指紋認証にしているそうで、使うことができなかった。通報も諦め、ゆなのもとへ駆け寄る。
「ユキオ‥‥こんなに傷だらけになって‥‥ごめんね、守ってあげられなくて‥‥でも、ありがとね。私のために勇敢に立ち向かってくれて。おとなしくしてようね。」
守ってあげられなくてごめんだってさ。オレとおんなじこと考えてんじょねぇかよ。ゆなに、こんなこと言わせたくなかった。おとなしくなんてしてらんないよ‥‥。だけど、ゆなが言ってるんだ。仕方がないよ‥‥。
色々考える度、アイツらに対する憎悪に、はらわたが煮えくり返った。とにかくアイツらを許せなかった。さっきまで幸せだったのが信じられなかった。ともきが帰ってくるまでにはまだ時間がある。オレにはどうすることもできなかった。
せめてゆなの身体に巻き付いているガムテープを取ってあげようと試みたが、うまくいかない。
すると、
「世話んなったな!(笑)」
と、一言だけ残して2人の男たちは去っていった。
しばらくの間、ゆなとオレの間に沈黙が続いた。沈黙を破ったのは、ゆなだった。
「ユキオ!やったぞ!生きたぞ!‥‥はぁ死ぬかと思ったぁ‥‥」
ゆなのその声に気が緩んだのか、オレはいつの間にか眠りについていた。
---
《結婚式当日》
花嫁姿のゆなは、とても綺麗だ。
改めてゆなは美人だなと思った。
ともきもオレには負けるがなかなかにかっこいい。
お似合いだ。
まあゆなにはオレが一番だがな。
ただ、この場にオレがいないということになっているのが納得いかない。
まあ、どうやらオレはあの時死んだらしく成仏できないままでいる。
いくらゆなにスリスリしても反応がない。
どんなに寝ているともきの顔に張り付いても、"苦しい"とか、"重い"とか、一切ない。
寂しいくらいに。
理解するまで少し時間がかかった。
でも、自由な身なので生前行きたかった場所にも行ってみたりした。
ゆながプロポーズされたという海にも行ってみたりした。
悔しいけどなかなかにいい場所だったよ、うん。
今こうやって幸せそうなゆなを見てると、オレも幸せになる。
だから、ずっと見ていたい。
ゆながおばあちゃんになるまで。
当分の間、成仏する気はないよ。
やっぱり大好きなゆなのそばにいたいなぁ。
天国か地獄。どっちに行かされるか分かんないけど、ゆなのそばじゃないと満たされない。
あわよくば嫁にしたいな‥‥なーんて。
占い、もうしません
いまだに小説を公開するときドキドキします笑
それではどうぞ
私はしおな。
私がやっているのは、手相占い。
占い師といっても、趣味でやっているだけ。
収入も雀の涙。
だが今日はカフェで占いの仕事をやらせてもらっている。
年齢、27歳。
性別、女。
現在、未婚。
このカフェは、若い年代が多い。特にカップルが。
そんなところに私は1人。場違いだよね。
その気まずさを紛らわすため、目を瞑って静かに存在感を消しているつもりだ。
そんな私に今日、初めて声をかけてくれたのは、高校生と思われる男性だった。
「あの~すみません…占いしてもらえるんですか?」
男性の声がきこえ、目を開ける。
「はいもちろんです。そこにお掛けください」
私の言葉に従い、男性が椅子に座る。
「あの、お金は…?」
「あぁ、一回三千円となっておりますが後払いで結構です。占い結果が納得いかなければ払わなくて結構ですので」
「え…でも…」
「では、始めましょうか」
男性の言葉に重ねるように開始の合図をした。
「お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
「はい、ツキノと言います」
「ツキノさんですね。それでは早速、占いをしてもよろしいでしょうか」
「もちろん!お願いします!」
私が占いをしている間、無言は気まずいので、いくつか話題をふる。
ツキノさんは思った通り高校生で、数学が苦手なんだそう。
そんな、他愛のない話をしていくうちに、私は彼に惹かれてしまった。
なぜかは分からないが、話が弾むうちに確実に好きになってしまった。
我ながら大人げないな、と思いつつ、診断を進める。
結果がでたので、彼に話していくが、私は1つだけ嘘をついた。
彼の手にはたくさんの結婚線があった。つまり、「モテる」ということだ。
彼曰く、彼女はいないらしい。
私は、彼をとられたくないあまり、「結婚できない、もしくは結婚が遅い」と答えてしまった。
胸中赤面しながら代金をもらった。
こんな嘘っぱちにきちんと払ってくれた。
まあ、ばれてないだけだけど。
ものすごい罪悪感だった。
こんな私に占いを続ける資格はない。
私情につられて嘘をつく占い師がどこにいるだろうか。
それ以来、私は占いから身をひいた。
もう一度彼に会えるなら、謝りたい。
もちろんこの想いは心の底に沈めます。
許してなんていいません。
なんだこれ
読んでくれてありがとうございます
ではまたどこかで~
「ねえ、待ってよ。」
いつから君は、そんなに遠くに行ってしまったの?
---
水平線が煌めく朝。
私は思い切り走った。
だけど、君の背中はまだ遠い。
追い付けるなんて思ってない。
でも、努力くらいはさせてよね。
「ねえ、待ってよ。」
何回も、何回も、その言葉を発する。
だけど、波の音に書き消されてしまう。
君は、立ち止まってはくれない。
いつも前だけを向いている。
私を見たことがないんじゃないか、と思うほどに。
いつしか私は、立ち止まっていた。
さっきよりも高くあがった太陽を眺める。
その光が、海を照らしている。
ただひたすらに、眩しかった。
横を見て私は驚いた。
君がいたんだ。
「きれいだね」
その声は、透き通ってて優しかった。
「海じゃないよ。君がね。」
君は、そう付け足した。
私は、戸惑った。
君は、私をきれいと言った。
この、目の前に広がる海よりも。
何も、言葉がでてこない。
嬉しすぎるから。
まさか、そんなことを言われるとは。
5分ほどたち、私は口を開いた。
「君が好きだよ」
日本語、変じゃなかったかな。
ちゃんと、聞こえてるかな。
私の、心臓の音しか聞こえない。
私は、君が再び発する言葉を待った。
「俺もだよ」
そんな言葉が降ってきた。
君は、私のこと全然見てなかったくせに。
なんてずるい人なの。
気づくと君は、走り出していた。
砂浜には君の大きな足跡が数を増やしていく。
その足跡をたどり、君を追いかける。
「ねえ、待ってよ。」
私の声、今度こそ君に届いたかな。
届いてて欲しいな。
君は初めて振り返った。
「おせぇよ」
朝日に照らされた君の笑顔は、ただひらすらに、煌めいていた。
私の後ろには、大きな足跡と小さな足跡が、並んで歩いていた。
名前を考えるのが面倒くさかったから「君」と「私」と「俺」でできるお話考えた笑
無視
朝日が窓から差し込む。
重いまぶたをあけながらゆっくりと身体を起こす。
「母さんおはよ」
「……………」
リビングへおりて朝1番の挨拶をしたが無視された。
「朝からつれないなぁ…あれ?俺の飯は?」
「ねぇ聞いてる?おーいかあさーん」
まったく仕方がない。
学校行くか。
教室へ着き、椅子に座る。
親友も来たのでおはようと言ったが、
またも無視された。
どういうこっちゃ。
今日は無視デーだなぁ
いつも通り授業を受け、いつも通り部活をして、いつも通り家へ帰った。
結局親友は少しも口をきいてくれなかった。
まるで俺の存在がないかのように。
母さんは俺の夕飯を準備してくれなかった。
今日はある意味疲れたので早く寝ようと思い自室の扉をあけてびっくりした。
ベッドの上に冷たくなった俺がいるんだもん。
ふと俺はすべてを思い出した。
そういえば昨日母さんに殺されたんだった。
すっかり忘れてたや。
よし。これこそ迷作中の迷作。
最後まで見る人いないてwwwwwwwwwww
夙夜夢寐
登場人物は、2人です。どちらも高校生くらいです。
場所は、2人が通う高校です。
では、どぞ
「なんで……泣いてるの?」
今まで君の泣き顔なんて見たことなかったから、戸惑った。
「……全部、全部、全部、|春輝《はるき》くんのせいです」
「は?俺なんかした?」
暫くの沈黙があった後、君は首を振った。
「じゃなんで………」
「私が!…私が勝手に、春輝くんを好きになっちゃっただけなんです」
「はあ……そりゃどうも」
「迷惑ですよね、すみません。…………想いは伝えられたので、さようなら」
そう言い残して、君は背を向け歩きだした。
どこに行くのだろうか。
さっき君が言った さようなら がどうもひっかかる。
胸騒ぎがした俺は、君の後をつけた。
────また、人を傷つけてしまった。
俺は昔からそうだった。
鈍いだとか、鈍感だとか、そんなことを|始終《しょっちゅう》言われてきた。
俺も本当にその通りだと思う。
人を傷つけるまで、自分に非があることに気づけない。
人が傷ついているのを見てはじめて、自分のせいかも、と思い始める。
そういうところが自分にはあると、分かっているけどやっぱり気付けない。
つくづく自分が嫌になる。
けど今回は、本当に俺のせいなのかな……
君をつけていくと、屋上についた。
俺は屋上に来たことがなかったので、その景色に感動した。
天気は決してよいとは言えないが、晴れ間が雲の隙間からちょっこり覗いている。
その透き通った群青に吸い込まれそうなほど綺麗だった。
その晴れ間から、太陽の光がカーテンのように注がれている。
その暖かい気配に、ついうとうとしてしまいそうだ。
「なんで春輝くんがいるんですか?」
ボーッと空を見上げていた俺に君が言った。
「あ、ごめん。なんだか君が心配で…」
「心配?どうしてですか?」
「んーなんとなく?」
「ふふっ春輝くんらしいですね」
君の微笑んだ顔と揺れた髪の毛が、日光に照らされて美しかった。
「空、そんなに綺麗ですか?」
君がそう呟いた。
「うん」
暫く、俺も君も言葉を発っさなかった。
とにかく今は儚げな群青に浸っていたかった。
「春輝くんは、なんで私がここに来たか、わかりますか?」
優しげな、でもどこか弱々しい、そんな声で君は俺に問うた。
「うーん、、、景色をみるため?」
「ハズレです」
君はすぐに否定した。
「じゃあ、なんでなの?」
「私は………………天国か地獄に行きたいんです」
「え?」
「あの雲の間の青空、あそこから天国に行けそうな気がしませんか?」
「た、確かに‥」
────しかし俺は次に発した君の言葉でなぜ屋上に来たのかを、初めて知った。
「死にたいんです」
今度は、弱々しくなんかなかった。
芯のある決然たる声だった。
そこには俺には想像もできないような苦しみ、葛藤が詰まっていた。
俺は、抱えていた疑問を投げかけた。
「さっき……なんで俺のせいって言ったの?」
俺は君がいつものように微笑みながら答えてくれると思ったが、そうではなかった。
「……春輝くんの存在が、私の生きる活力でした。原動力でした。でも私はどうしよもなく死にたかった。この世界に生きるのがつらかった。生きるか死ぬか、私は悩みました。死ねば、楽になれるけれど、春輝くんに会えなくなる。結果、私は死ぬ方を選びました。」
真剣な顔で君はそう言った。
並大抵の覚悟ではないと、俺にもわかった。
「死なないでよ。君がいなくなったら困るんだけど」
君は少し目を見開いた。
「……どうしてですか?私はどうせ必要のない人間です。私がいることで幸せになる人なんかいません。そんなのが、生きてていいわけありません」
「君は、俺の友達だから…大事な人だから…」
言葉に詰まってしまう。
「君がいなくなったら……俺が傘忘れたとき、誰が貸してくれるの…?俺が苦しくてやめたくなったとき、誰が背中を押してくれるの…?俺が寂しいとき、誰が隣にいてくれるの…?」
半ば、涙声になってしまったが、君は破顔した。
「春輝くんは、優しいですね」
俺も君も必要以上に言葉を発しなかった。
この景色を、君と見ることが何より心地よかった。
次に沈黙を破ったのは、君だった。
「私が死んだら嫌ですか?」
「うん。絶対にいやだよ。」
即答した。これ以外にいう言葉がないから。
「…私が君のことを好きって知って、なんて思いましたか?」
「……嬉しいって思った」
素直な気持ちを吐く。
「私のこと、好きですか?もちろん、恋愛的に。です」
「それは…………わからない……けど、好き。恋愛って考えるとよくわからないけど、普通に好きだよ」
「そうですか。ありがとう。」
「えっと…どういたしまして?」
「ふふっやっぱりいい人ですね。春輝くんは、この世にいるべきですね」
「なんで?そんなこと言ったら君もこの世にいるべきじゃないの?」
「…………春輝くんの言葉っていっつも嘘がないですよね。なんだか、反論できませんから不思議な気分になります」
君の顔がほころんだ。
「そうなの?でも君は死ぬべき人じゃないよ」
君は少し目を丸くしてから、うつむいた。
「…………もう……そんなこと言われたら…………死にたくなくなっちゃうじゃないですか…………っ」
君の足元には涙がこぼれ落ちていた。その姿は、今にも崩れてしまいそうだった。
支えていなければこの世からいとも簡単に消えてしまいそうだった。
「……ちょっ…………いきなりなんですか!」
気付くと俺は君の華奢な身体を包んでいた。
「………………でも……あったかいです……」
「そう?」
「…はい…………あ、春輝くんの心臓の音がきこえます…」
「ほんと?」
「ふふっ…本当です……なんだかドキドキしてるんじゃないんですか?鼓動がとても早いです…………あれ?違うかも……鼓動が早いのは私の心臓……かも」
「どっちなの?」
「……わからないです……もう少しこのままでもいいですか……?……なんだか、あまりにも気持ちがよくて…」
「うん。俺もずっとこのままがいいな。」
「えぇ?ずっとですか?流石に私の心臓が破裂しますから、ずっとは嫌です」
「そっか残念」
「もぉ~これ以上ドキドキさせないでくださいよぉ~」
「あははっそんなつもりないけどな」
「……春輝くんのそういうところ、私は大好きですけどね」
「そういうところってどういうところ?」
「無意識に、人を幸せにさせちゃうところです」
「ふぅん…」
「────君は……|幸愛《きあ》さんはまだ、死にたいって思ってる?」
突然、爽やかな風が吹き抜けた。
「もう少し、この世で頑張ってみたいです」
その涼風は、少しだけ春の匂いがした。
純愛を書きたかったけどやっぱり俺には無理やw
「……」←これが多すぎたけどまあ、いいや
あ、一応
タイトルの「夙夜夢寐(しゅくやむび)」は
一日中、頭を離れず思い続けることです
読んだらファンレターください((殴
思い出はいつも美しいはずだった。
思い出はいつも美しい。
あの頃を思い出すたび、美しい海と、潮の香り、右手に握る君の左手の感触が、鮮明に蘇る。
でももう僕のそばに、君は居ない。
三年前のあの日、君は突然姿を消した。
あの日は休日だったので、平日よりも随分と遅い時間に起きた。リビングへ行くと、誰もいなかった。胸騒ぎがして、家を飛び出した。すると、隣家の玄関前で人がたむろしていた。隣家とは君の住む家だ。
人混みの中に、母を見つけた。何かあったの?と聞いた。君が姿を消したと告げられた。
あの時は、『まだどこかにいる。またすぐに会えるだろう。』と思っていた。
だが三年経った今も、君はいない。
部活帰り。もう外は暗い。家から漏れる明かりが、足元を照らしている。
空には、憎たらしいほど綺麗な満月が輝いていた。
もしも君が今もなお生きているのなら、僕は君と、同じ月を見られているのかもしれない。満月を見るたび、そう思う。
家へ着くと、僕の好きな香りがした。母の作るハンバーグの匂いだ。安心したのか睡魔に襲われたので、ぱぱっと夕食を食べ、ベッドにダイブした。
次の日は、晴れだった。昨日のニュースでは雨が降ると聞いていたのでいくらか爽やかな気持ちになった。
いつものように制服を纏い、朝食を食べ、家を出た。あのときはまだあった隣家は跡形もない。見るたび心にぽっかり穴があき、虚しくなる。
今日は穏やかな日だった。いつものように授業を受け、いつものように友と過ごした。ただ部活は休みで、珍しく明るい時間に帰路に着いた。穏やかだったのは、そのときまでだった。
交通量の多い大きな交差点。点滅が始まる前に渡ろうと、小走りで横断歩道を進んでいた、そのときだった。
すれ違いざまに懐かしい柔軟剤の香りがした。咄嗟に後ろを振り向くと、色素の薄い髪の毛をした女性と目があった。
青信号の点滅が始まったので、僕は走って横断歩道を渡りきった。
色素の薄い髪の毛。君の特徴だ。
僕はさっきすれ違った人を追いかけることにした。
赤信号を待っている間、さっきの人を目で追いかけようと思ったが人混みに紛れて見失ってしまった。
信号が青になり、走って渡ろうとした。
「湊くん!」
僕を呼ぶ声が後ろから聞こえた。聞き馴染みのある透き通った声。
振り返ると、さっきの色素の薄い髪の毛をした女性がいた。
「凛?」
『凛』。それは君の名前。三年前、突然姿を消した君の名前。
「うん!そうだよ!」
君は泣いていた。僕も泣いていた。
「……さっきすれ違ったよね…なんで後ろにいるの?」
「ふふ。頑張って走ったんだよ」
君は笑っていた。僕も笑っていた。
そのあと、二人で海に行った。あのときと同じ海岸に。
夕日に反射して光る美しい水面。華やかなオレンジのグラデーションを描く空。潮の香り。そして、右手に握る君の左手の感触。
その全てが、あのときを上回っていた。あのときの思い出はいつも美しかった。でも今、こんなに綺麗なものを見てしまった。うつくしかった思い出が上書きされてしまった。
思い出はいつも美しいはずだった。
ちょっと変かも
題名をバッドエンドっぽい感じにして本当はハッピーエンドっていうのをやってみたかった
塩湖
「一杯飲んでいかん?」
つれないあられちゃんを諦め半分で誘ってみる。
「結構です」
ほらね。いっつもフラれる。流石に私でも悲しくなっちゃうよ。
あ、自己紹介が遅れましたね。
私の名は、おかき。商事会社に勤める38歳だ。これでも女ですのよ。
ここ最近どうも肩が痛くて…老いを感じる今日この頃、あられちゃんにフラれました。
あられちゃんは、美人で有能な後輩ちゃんだ。ほんっっっっとにすごい子で、うちの部署の自慢なの。ただちょーっと常人には近寄りがたい完璧オーラを醸し出しちゃってるのが、まあ、欠点なのかなぁ~みたいな。
~翌日~
「一杯飲んでいかん?」
仕事終わりのあられちゃんを諦め半分で誘ってみる。
「…………いいですよ」
左手にはめた腕時計をチラッとみてそう答えた。
「そっかそっか。残念残念。」
そうして私は帰路につこうとした。
「ちょっ…先輩!?」
あられちゃんとは思えない場違いな声が聞こえて振り返った。
「ん?なんじゃらほい……あれもしかして今OKしてくれた?」
「はい…」
「のぉぉぉぉ!ごめんよごめんよ!いつも通り断られたのかと思ったわぁ!なんかもう誘って断られるのがルーティーンみたいになっちゃってたから」
「それはごめんなさい。今日は少しだけ時間があるので、ぜひ」
「おおまかせて!(?)奢ったるわ!」
勢いでつい、言ってしまう。
「えぇそれはなんだか申し訳ないです。割り勘しましょう」
あられちゃんらしい冷静な返答だ。
「……はい。すみません。////」
「ふふっ前々から思っていましたが先輩って面白い方ですね」
美人のあられちゃんが微笑むと、太陽よりも眩しく見える。
「ちょ……あられちゃん。それは反則だよ」
「?何がですか?」
当の本人は自分が美人だということを自覚していないようだ。ふむふむ。
~At居酒屋~
「ビール飲むの?」
「はい!大好きなんです!」
あられちゃんはすっかりお酒が弱いと思いこんでいたのでビールが好きとは驚いたものだ。
「私の祖父も好きだったなぁ」
「おじいさんですか?」
「うん。11年前に死んじゃったけど、不思議な話をする人だった。」
「そうなんですか?興味があります。もう少し、聞かせてもらえませんか?」
「もちろんいいよ」
---
「おかきちゃん、今日はじいちゃんの昔の話をしてあげるよ」
「おじいちゃんのむかし?」
当時5才だった私は、おじいちゃんの話を聞くのが大好きだった。
「そうだねぇワシがおかきちゃんくらい時の話をしようか」
「なんねんまえ?」
「70年前さ。じいちゃんは、森の中に塩湖を見つけたんだ。」
「えんこってなぁに?」
「しょっぱい湖のことさ。」
「ふぅん」
「その塩湖にゃ女の子がいたのさ。かわいい子だったが、白い髪の毛、赤い瞳、真っ白な肌だった。じいちゃんはその子に恋をしてしまったんじゃ。一目惚れだった。」
*
「あのぉ~…」
話しかけると、女の子は振り返り、微笑んだ。
「あ、えと、おれ、そうたろうっていうんだ…君の名前は?」
しかし女の子はクスリと笑うばかりで一言も喋らない。
「…………話せないのか?じゃあ…スマイルって呼ぶ!いい?」
女の子は嬉しそうに頷いた。
「なんか遊ばない?」
すると、女の子は少年おじいちゃんの手をとり、走り出した。
「えっ…ちょっと!前見てる!?塩湖だよ!?」
女の子は"大丈夫"と返事でもするように、強く少年おじいちゃんの手を握った。
「うっそ!!水の上走ってる!?おいスマイル!お前すげえな!」
女の子は振り返り、恥ずかしそうに笑った。
それから少年おじいちゃんは毎日毎日、女の子のいる塩湖へ遊びに行った。
しかし、ある日を境に女の子は姿を消した。
あくる日もあくる日も、一日中待っても女の子が現れることはなかった。
ついには、その塩湖さえもなくなっていた。
*
「っていうことがあったんじゃ」
「ええぇぇ!なにそれぇ!女の子ひどいよ!いきなりいなくなっちゃうなんて」
「でもなぁスマイルは優しい子だった。あの笑顔は今でも忘れられないよ」
おじいちゃんがその思い出を大切にしているのが当時の私でもよくわかった。
「女の子は、いったい何者なんだろう…」
「そうだなぁ。ワシは、女神様って思っとる。」
「女神様?」
「ああ。きっと遊びたかったんじゃよ。そのために塩湖をつくって、姿を現したんじゃないかなぁ~ってじいちゃんは思うよ」
「でも、、なんで塩湖なの?普通の湖でもいいんじゃないかなぁ」
「それはじいちゃんも分からないなぁ……」
---
「っていう話が一番印象的だったなぁ」
「なんだかロマンチックですね。少し憧れてしまいます」
「わかるぅ~!そういう非現実的なの体験してみたかった!」
「ふふっ。まだ諦めちゃいけませんよ。人生まだまだこれからの方が長いですから」
「まあね~でもさぁなんで塩湖だったのか、ってずっと分かんないんだよね」
「女の子の……女神様の気まぐれですかね」
「うーん確かに……」
「あ、すみません。そろそろ帰らないと……」
「そうだったそうだった。聞いてくれてありがとね」
「いえ、とても楽しかったです!」
~At電車~
あられちゃんと別れを告げたあと、いつもより遅い電車に乗った。そのため人も少なく快適だ。
スマホを鞄の中から取り出し、夫へ帰るよスタンプを送信しようとしたその瞬間。電気が走ったような衝撃が全身を巡った。
白い髪の毛、赤い瞳、真っ白な肌……
見たことこそないが、おじいちゃんが言っていた特徴と当てはまる少女が端の方に佇んでいた。
そっと近寄り、
「あのぉ~…」
少女は私の目をしっかり見て微笑んだ。
「スマイル…さんですか?」
そう聞くと、彼女は目を大きく開いた。
「聞きたいことがあるんですが…塩湖にした理由ってなんですか?」
暫くして少女は口を開いた。
「許してね」
ここからは見たい人だけみてください!
【解説】
はい、まず、女の子は何者なのか?
この子は昔、おかきのおじいちゃんが見つけた塩湖で溺れて亡くなった子です。
白い髪の毛なのは、溺れてからだいぶ時間が空いたので、しらがになってしまったから。
赤い瞳なのは、塩湖の水が目の中に入りそうなってしまったから。
真っ白な肌なのは、皮膚がただれたから。
決して女神なわけではありません。
ちなみにこの塩湖の塩分濃度はかなり高い設定です。
次に、なぜ塩湖にしたのか?です。
これは気になりますよね。
女の子は実は事故ではなく、"溺れさせられた"のです。
いわゆるいじめというやつですね。
恐らく、この世に未練があったのでしょう。
実はその塩湖は、女の子が溺れたあと、無くなっているのです。
おじいちゃんが見つけた塩湖は、女の子の力で見せられていた"幻覚"なんです。
水の上を走っていたのは、そう見えていただけで、本当は陸の上を走っていたということ。
女の子は少年おじいちゃんを溺れさせたかったんです。
でも、女の子もまた少年おじいちゃんに恋をしてしまった。
「あれ?殺したかったのに普通に遊んじゃってる…」ってなってある日突然姿を消したということです。
またまた未練があるまま少年おじいちゃんと別れてしまった。
そして最後のシーンです。女の子は、「スマイル」の名を知っていたおかきが少年おじいちゃんの関係者だと勘づいたんです。
少年おじいちゃんの代わりにおかきを殺して、成仏しようと思ったんです。
おかきは知らず知らずのうちに身代わりになっていた。
これが、女の子が「許してね」と言った理由です。
納得していただけたでしょうか????
なんだか夢を壊すような解説で申し訳ないですね…
ちょっと俺語彙力ないんで分からないところがあったら教えてください!
感想とかあればぜひ!
花火のように昇り、そして私はおちる
本当はもう、気付いていた。だけど気付かないふりをした。
「遊び行こう」
沢谷くんがそう言った。
「…もちろん」
私は静かに答えた。期待はしてはいけない。
沢谷くんとは『恋人』という鎖で繋がっている。だがその鎖は関係が築かれたときから脆く、今はもう錆びだらけでいつ切れるか分からない。
正直、私を振らない理由が分からない。さっきの誘いもただ『遊びに行く』というだけで、『一緒に』というわけではない。デートといいつつも基本は別行動。嫌われているというのが一目瞭然でわかる。
なのに、もう一年はこの関係が続いている。私はただ流れるままに沢谷くんに身を委ねているだけ。沢谷くんが何を考えているのか私には到底わかりはしない。
電車に乗った。沢谷くんとの待ち合わせ場所に向かうために。音と、振動と、揺れが心地よかった。うとうとしていると、目的の駅に着いた。
電車を降り、沢谷くんを探した。すらりとした足、さらさらとした黒髪、整った顔。すぐに見つけた。経験上、黄色い声があがっているところにいけば見つけることができると知っている。
「おはよう、沢谷くん」
私が声をかけるとようやく私の存在に気付いたようで、チラッと私を見たあと沢谷くんは歩きだした。ついてこい、ということだろう。
歩く速さを私に合わせるような様子は一切なく途中小走りになりながら着いていった。
「着いた。」
沢谷くんが言った。
辺りを見回すと騒がしい気配がした。どうやらお祭りに来たらしい。浴衣を纏った仲のいいカップルで溢れかえっている。私たちは少し場違いな気がした。
「金魚すくいしたい」
私が言った。沢谷くんが私を見た。その目は睨んでいるようにも、通常運転のようにも見える。
「俺もしたかった。なに?心読んだ?」
意外な返答だった。珍しく『会話』をしているみたいで嬉しかった。
「読めないよ(笑)。私エスパーじゃないもん」
私の声は自然と明るくなっていた。
沢谷くんが少しだけ目を見開いていた。
「どうしたの?」
私がそう聞くと、沢谷くんは視線を外した。さすがに答えてくれないか、と思った。でもそうではなかった。
「いや、お前ってそんな風に笑うんだ」
今度は私が目を見開く番だ。沢谷くんがそんなセリフを吐くだなんて夢かと思った。だが、いくら頬をつねっても痛いだけで、夢ではないことが確かになった。
「何してんの?ほっぺたつねって」
「……ううん。なんでもない。金魚すくい行こ!」
あくまでも坦々たる口調で言う。心の中の高揚感を抑えて。
沢谷くんは金魚すくいが上手だった。私がポイを破りまくって苦戦している間、沢谷くんは慣れた手つきでひょいひょいすくっていく。
「な、なんでそんなに上手なの?」
「……ハマってた時期があったんだ。そんとき師匠に教わって上達した。」
金魚すくいにハマっていたのは意外だった。いつもクールな雰囲気を醸し出している分、そのギャップに大きな鼓動が打った。
「お師匠さんがいたの?」
「ああ。もう亡くなったけどな。」
「あ、そうなんだ」
彼の新たな一面を知れたようで嬉しかった。これからもっと知っていけたらいいな、なんて。
花火の上がる時間帯になり、私たちは人気の少ない所を探しそこから花火が上がるのを待った。
アナウンスでカウントダウンが始まった。私はそれに合わせ、
「5・4・3・2・1・ゼロ!」
『ゼロ』に重なるように、一筋の光が高く昇った。次の瞬間、鮮やかなまばゆい光が私たちを照らした。
「颯希」
花火の轟音に混じり、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「どうしたの、沢谷くん?」
夜空を見上げる彼に問うた。
「これからも、よろしく」
「うん、こちらこそ」
このときは、何とも言えぬ幸福感で満たされていた。
でもこんな言葉は沢谷くんにとって、ただの戯れ言でしかなかったんだ。
お祭りから数日経ち、街の熱も冷めてきた頃だった。
「何してるの?どういうことなの沢谷くん?」
休日の駅、手を繋いで歩く男女。まさかその男の方が沢谷くんだなんて。
「あーあ、見つかっちゃった」
その言葉で、女の人と一緒にいるのがまぐれではないことが分かった。
本当はもう、気付いていた。だけど気付かないふりをした。沢谷くんには私以外の女がいることを。どうせ、沢谷くんがそういう人なんだということを。
きっと、今一緒にいる女の人が本命なんだろう。私は彼と手を繋いだことがない。彼はその|女性《ひと》を愛している。
劣等感、苛立ち、裏切り、悲しみが私を羽交い締めにした。
私はその場から無我夢中で逃げた。肺が破けそうだった。脚がちぎれそうだった。それでも私は目的もなく走り続けた。
自分の存在する意味が分からなかった。誰にも愛されず、ただ都合のいいように利用される駒でしかない。
とにかく、高いところに行きたかった。あの世に近づきたかった。
気付くと目の前には絶景が広がっていた。どこまでも続く淡いブルー。ふわふわの白い綿。
だがそれも、物凄いスピードで上へとスライドしていった。
君だけはどうかお幸せに。
思い出はいつも美しいはずだった。2
この1つ前に投稿した小説を読んでいない方は読むことをおすすめします!
それではどうぞ!
思い出はいつも美しい。
私は三年前、家から逃げた。理由は、両親からの虐待だった。
両親は昔は優しかった。大切に育ててくれた。でも数年前、事故で兄が死んだ。そこから両親の心はみるみるうちに荒んでいった。そして私に八つ当たりし始めた。毎日、暴言暴力を浴びせられるようになった。
自暴自棄になっていた私を優しく支えてくれたのが湊くんだった。
三年前の暗い記憶の中に一つだけ輝く思い出がある。
私が泣いてしまった日だった。湊くんは私の左手を握って海岸へ連れていってくれた。そのとき見た光景は今でも忘れられない。
美しい海、潮の香り、そして、左手に感じる湊くんの温もり。空っぽだった私の心に、じわじわと温度が宿ったのを覚えている。
それでも私が出ていったのは、湊くんの支えよりも両親からの心身的なダメージが大きかったからだ。
私は家が大嫌いだった。自分の部屋でさえも怖い記憶がフラッシュバックする。安らかに眠れない日々が続いた。
実は一度だけ、家出をしたことがあった。でも、すぐに見つかってしまった。
なのでその反省を踏まえ、遠く離れたいとこの家へ行くことにした。前にいとこの家へ訪問したことがあったのでその記憶を頼りに、なけなしのお小遣いとお年玉で新幹線に乗り、いとこの家へ行った。
伯母も伯父も私が来ていることは黙っていてくれた。心も体も癒され、幸せだった。
唯一心残りがあるとするのならば、湊くんだった。まぶたを閉じるたび、湊くんと一緒にあの海岸で見た景色が広がる。毎夜、会いたいと思う日々。そして、最後に挨拶くらいしておけばよかったと後悔する。
いとこの家での生活は半年間で幕を閉じた。両親に居場所がバレたのだ。
私が両親に連れて帰られた場所は、知らない家だった。どうやら引っ越しをしたらしい。場所は、前の家から十数キロ離れた隣の市だった。
湊くんに会おうと思えばすぐに会える距離だった。それでも私が会いに行かなかった理由は、ただ私の勇気がなかったから。どんな顔をして会えばいいのか分からなかったから。
両親は私のいなかった半年で改心したらしく、泣いて謝ってくれた。それからは大切にしてくれた。私の大好きな両親に戻ってきてくれた。
高校は、旧居のあった市にある高校を選んだ。湊くんと、ばったり会えたらいいな、なんていう期待を込めて。
私はバレーボール部に入った。
だがつい最近右手の親指を突き指してしまったので、部活を休まざるを得なかった。
まだ太陽がある時間帯に帰れることと天気の良さも相まって快い気持ちになった。
大きな交差点を渡っているときだった。前方に小走りをする湊くんみたいな人がいた。背の高さは随分と大きくなっていたが、少し垂れた目と走り方がどこからどうみても湊くんだった。
でも、目の前の人は私に気付いていないみたいだった。私のことを忘れているかもしれないと、考えなかったわけではなかった。
そしていよいよ湊くんらしき人とすれ違った。もう会えないかもしれないという思いが膨らみ、その名残惜しさに後ろを振り向いた。
すると、湊くんらしき人と目があった。彼もまた、後ろを振り向いてくれていた。
青信号の点滅が始まったので、私は走って横断歩道を渡りきった。
私の心は決まっていた。人違いでもなんでもいいから声をかけてみよう、と。例え忘れられていたとしても構わない。
私は走って隣の交差点まで行き、そこの横断歩道を渡り、またさっきの交差点に戻った。
見つけた。人混みの中でも、すぐに見つけることができた。
「湊くん!」
走って渡ろうとしていた人に、叫んだ。
彼がこちらに顔を向け、目を丸くした。
「凛?」
三年前よりも低い声。でもどこか面影がある。
「うん!そうだよ!」
すると目に熱いものが込み上げてきた。そして、湊くんの目も濡れていた。
「……さっきすれ違ったよね…なんで後ろにいるの?」
「ふふ。頑張って走ったんだよ」
私が微笑むと、湊くんも笑った。
そのあと、二人で海に行った。あのときと同じ海岸に。
夕日に反射して光る美しい水面。華やかなオレンジのグラデーションを描く空。潮の香り。そして、左手に感じる湊くんの温もり。
その全てが、あのときを上回っていた。あのときの思い出はいつも輝いていた。でも今、こんなに綺麗なものを見てしまった。うつくしかった思い出が上書きされてしまった。
思い出はいつも美しいはずだった。
凛目線でしたー!
ありがとうございました!