様々な世界線を管理する機関【Multiverse-Core】
その組織に所属する【自立式旧型ヒューマノイド】である主人公は任務中に意識を失い目が醒めた後、意識を失った時代から約1000年が経ち、記憶(記録データ)を失っていた。
自分の名前や存在すら曖昧な状態で一つ思い出したのは“世界が創られた存在”であること。
かつての時空や世界を守りながら、存在意義であった記憶を探し続けて“創作”の真理に辿り着いた先に待つものは_
続きを読む
閲覧設定
名前変換設定
この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります
1 /
目次
✯ 楽園に捨てられた野犬 ✯
永遠と続く平行線が二手に別れ、|本編軸世界《ユニバース》から|別世界《マルチバース》に枝分かれしていく。
流れていく次元の中で、本来あるべき|着地点《エンディング》へ降りるように線を少し割れた鮮やかな青色の|瞳《レンズ》の先で確認した。
「C5-333、|本編軸世界《ユニバース》の|登場人物《オリジナルキャラクター》の|鍵《キー》が|自殺《エンド》を迎えた。至急、|別世界《マルチバース》へ追加しろ」
|音声認識デバイス《耳》から|C5-168《リーダー》の声が聞こえる。
すぐさま、枝分かれしたものが再び|到達《ゴール》する前に線を引いて精密な作業を可能にするために細く、多関節になっている指先を動かした。
狭間の壁に映る無駄のない流線型のボディ。180cmほどのボディの外装は艶消し加工されたチタン合金で覆われており、関節部分には複雑なメカニズムが露出している。
頭部は滑らかなドーム型で、人間の表情筋に当たる部分はなく、感情は内蔵された音声合成システムでのみ表現され、瞳の位置には、周囲の状況を分析する鮮やかな青色の光学センサーが埋め込まれている。
その全体から冷徹さと高度な技術力が感じられる外見にはいつ見ても、惚れ惚れしてしまう。
惚れ惚れとしたボディの指先は司令を遂行し、平行線は二手に別れ続ける。
やがて、それもゆっくりとどこかへ行き着くだろう。
指先を離して次の司令を待とうと、平行線が続くドーム型の部屋を出ようと重々しい足で外の草木の生い茂った大地を踏みしめた。
遠くで鳥の囀りが聞こえ、水が流れる音も拾えるほど閑静な樹海。
上には自然に輝く太陽が陽を降り注ぎ、陰影をつける。
それがいやに奇妙で、不自然なように感じられた。
しばらく待っていると再び音声認識デバイスからリーダーの声がした。
「あー…あー…あー…よし、C5-333、帰還しろ」
「…了解」
リーダー、及びC5-168は様々な世界線を管理する機関“Multiverse-Core”の司令官を務め、真っ黒でスタイリッシュなボディが特徴的な自立式旧型ヒューマノイドの一人だ。
孤高で他のヒューマノイドの憧れの存在感でもあった。
リーダーの存在感に思いを馳せながら、足のホバー装置でエアを吹かして巨体を宙へ浮かす。
遠くに広がる青葉が見え、そのままの状態で宙に浮いたMultiverse-Coreの管理中枢核を担う灰色の円盤型の“No.0”を視認した。
点々とした赤いライトが光り輝き、青い空にとって異質感が否めない。
呆然として飛ぶ瞳に映る空に突如、青い一本線が引かれた。
それに自然と|合成音声《ボイス》が声から漏れた。
「…彗星……」
そう呟いた瞬間、空に更に彗星が降り注ぐ。
彗星は青い炎を纏い、よく見れば複雑なメカニズムの露出した金属の塊のように見える。
それを避けるように動こうとして、急に頭の中に警報が鳴った。
赤く点滅した瞳の中に『|Caution: Overhead Hazard, Object Approaching《注意:頭上の危険 物体が接近中》』とコールが出る。
それを確認しようとして、頭の中が激しく揺れた。
身体中のオイルが逆流するような気持ち悪さが襲い、身体中からドロドロとした青い液体が噴き出した。
ホバー装置が奇妙な音を立て始め、うまく飛べず巨体がゆっくりと下降していった。
その途中に再度、身体に何かがぶつかったと同時に痺れるような電撃の痛みが走る。
何かに貫かれたそれに視点がぐるりと一回転して、急激に地面が近くなる。
土が煙を立て、ズレたボディの機械のパーツに土がこびりついた。
しかし、それを青い液体が覆って綺麗にしていった。
何かが這うような感覚と不自然な眠気が襲う。
大勢の鳥が羽ばたく音とエラーを吐く身体、彗星の落ちる轟音の中で、暗闇に落ちるように意識を手放した。
鳥の囀りと、草木の間を風が抜ける音がする。
光った瞳の青色が暗闇の中でゆっくりと何かに侵食されている気がしている。
長い年月が経つような、そんな感覚が続いた。
✯ 憶を忘れた鋼 ✯
小鳥の囀りが響く。這い寄るものが、忽然と消えていく感覚が響く。
深い海から足がついたような思いで鮮明な視界が真っ白な何かに塗り変わった。
彗星のような夜を模した誰かが僕の|身体《ボディ》を撫でながら、鯉のようにパクパクと開く口が「助けてあげて、|転送者《トラベラー》」と繰り返す。
直後、誰かはいなくなくなり、鋼鉄の頭に僕を見下ろす映像が入る。
その映像の中で、『使い捨ての駒』『生まれたての子鹿』『創られただけの機械』と文字が付属し、僕は異様に頭の中が鮮明になり、何故か自分が《《創られたもの》》だと自覚する。
そうして、映像は途切れて小鳥の囀りが再度、響いた。
重い足音がして、|身体《ボディ》を起こされる。赤い点滅が瞳に点在し、二体の少し変わった同胞を目にした。
「…おい、これ…本当に|金属片《スクラップ》か?どう考えても、旧型の…」
「もう何百年前の自立式旧型ヒューマノイドだと思ってるんだよ」
「だ、だとしたって、綺麗過ぎるだろ」
「この辺りはほぼ何にもなかったんだから、当たり前だろ」
「…じゃあ、今ここでコイツが動き出したら、どうする?」
その問いかけに二体の同胞の内、真面目そうな同胞がやや時間が経ってから言葉を述べた。
「上に報告する」
「真面目ちゃんかよ!」
耳をつんざくような同胞の|声《ボイス》。僕はたまらなくなって、顔をあげ、二体の同胞の姿をしかと確認した。
やや角ばって艶消し加工のされたチタン合金で覆われた頭部だが、頭部と手足、手首以外が複雑なメカニズムのような配管や光が埋め込まれて筋肉のように見え、瞳である部分には青白い炎のようなものが二つ並んでいた。
「…やっぱり、動いたじゃねぇか」
「上に報告するか…」
「そうだな、そうするかぁ…じゃねぇだろ、どうするんだよ、動いたぞ?!」
「それを考えるのが君だろ」
「お前もやるんだよ!」
喚く同胞の中で、辺りは鬱蒼とした森がない全くの更地になり、ところどころに枯れ木が生えている変わりようだった。不審に思って、内部のデバイスを起動しようとするも何かが弾けた音がするだけだった。
その内、同胞達がこちらを向いて、名前を呼んだ。
「C5-333…そういう|名前《ナンバー》なんだよな?」
僕はそれに頷き、同胞の内の一人が僕の腕を掴んで宙に浮いた。
掴まれた|身体《ボディ》は二体の間に挟まれたまま、今も変わらず浮いた円盤に近づいていった。
---
電子音が鳴り続ける円盤の金属床に重みが沈む。
二体の同胞は肩を回して、動けない僕の身体を宙に引きずっていく。同胞はそれぞれ、チャラそうな同胞がアーク、真面目そうな同胞がゴートンと名乗った。
「…Multiverse-Coreへようこそ…いや、おかえり…なのか?」
そう口に出したアークに僕は頷き、ゴートンは身体を黙って僕の|声《ボイス》などの損傷を確認していった。
「こんな綺麗な見た目だってのに、全部が壊れている…|記憶《データ》も保持されていないし、まるで内側だけが干渉されたみたいだ」
「あー……つまり…どーゆーこと?」
「中から破壊されたってことだ、分かるか?」
「馬鹿にすんなよ、ゴートン」
目の前で繰り広げられる会話の中で僕は一つ一つ、ゴートンの金属の指に這わせた身体からゆっくりと隅に置かれていた金属片を吸い、欠けた部分を治していく。
それが全て吸いきった時、僕は文字通りの新品だった。
「これで、大体が終わり…か」
ゴートンがやや怪訝そうに炎を歪ませながら、僕を見る。ゴートンの後ろからはアークやゴートンと似た構造であるものの、年季が入ってところどころ錆び、壊れた部品に新品の金属片をパッチワークのように貼り付けた身体の同胞が歩いてきていた。
その歩いてくる巨体は、僕を見るなりひどく感嘆の声を挙げる。
「おぉ……自立式旧型ヒューマノイドか……?とっくの昔に全部、|金属片《スクラップ》になっちまってるかと……」
そう声を挙げた巨体を指指して、アークが「この爺さんはシュウェルスな。大体1000年くらい起動してるらしいぞ、長生きだよな」と僕に耳打ちした。
シュウェルス、シュウェルス、シュウェルス……どうやっても新調された脳でも思い出すことができない。
僕が頭を抱える中、ゴートンがシュウェルスに語りかけた。
「シュウェルスさん。C5-333というヒューマノイドをご存知ないですか?」
「C5-333?……いや、全く…目の前の此奴か?」
「ええ」
「……知らんな、此奴も俺のことが分からないんだろう。あの彗星が降った時には行方不明になった同胞が多くてな……今でもあれは何だったのか、検討もつかんよ」
「そう、ですか…」
「彗星は綺麗なもんでな、ゼル辺りが知ってりゃいいが……」
シュウェルスの言葉にアークが小さく、「あのオカマか……俺、アイツ苦手なんだよ…」と呟くも、ゴートンは知らぬと言うようにシュウェルスと会話を続けている。
その騒々しい機械音声の中で、僕はいやに重圧な雰囲気の足音を拾った様な気がした。
**あとがき**
▶各キャラクターの主人公の呼び方
▪×××× ⇨ |転送者《トラベラー》
▪アーク ⇨ レイニー
▪ゴートン ⇨ レイニー
▪マルヴィン ⇨ 猟犬、野犬、忠犬、灰被り…etc
▪シュウェルス ⇨ レイチェル
▪スタイン ⇨ 戦友
▪ゼル ⇨ ハニー
▶各キャラクターの性格(一部除外)
▪アーク ⇨ 人間味あふれる直感型のムードメーカー
▪ゴートン ⇨ 冷静沈着かつ親しみやすいリアリスト
▪マルヴィン ⇨ 負けず嫌いな努力家
▪シュウェルス ⇨ 昔気質な好々爺
▪スタイン ⇨ 飄々としたカリスマ__(独特な奇人)__
▪ゼル ⇨ 受容力あふれる美意識の探究者__(おネエ系)__