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鳩の国 第一章 指輪
動物たちが人間のように幸せに暮らす楽園、パライソ。かつて神ミテラが天地創造をした数百年前には世界はカオスと呼ばれ、種族同士の争いが絶えなかった。
その争いは長きに渡り続いていたが、ある時状況が突然変わった。ある一人の鳩エイレスが、能力者を集め、世界を統一したのだ。
たった七人によって統一されたこの出来事は、多くの者に衝撃と喜びを与えたが、統一によって身内を亡くした者が多かったため、非難する声も多く上がっていた。
それからしばらく経って、その七人の勇者はそれぞれ国を治めるようになった。エイレスは美しい女性ロディーテと婚約し、一人の娘を授かった。
その娘の名はオリーブ。家族をこよなく愛する、優しい娘だった。彼女はロディーテから天地創造の物語をよく聞かされており、神のことを深く信じていた。そして、よくこう祈っていた。
———神様、友だちが欲しいです。
しかしその願いが叶うことはなく、彼女は空想の友達を作って一緒に遊んでいた。そのくらい彼女は孤独だったのだ。
空想の友達に話しかける彼女の背中を、侍女たちは遠くから見守ることしかできなかった
オリーブはやがて、空想の友達など忘れてしまうような年頃になった。この日は彼女の戴冠式だった。
しかし彼女がいくら待っても両親が大広間に現れることはなかった。
「お母様、お父様、どうしたのかしら⋯」
心配になった彼女は両親の部屋へ足を運ぶと、そこで衝撃的な光景を目にする。
エイレスがロディーテを手にかけていたのだ。
「⋯何⋯してるの⋯?」
そう彼女が言うと、エイレスはオリーブをギロッと睨む。見たこともない父親の表情に、オリーブは身体が動かなくなり、冷や汗が止まらない。するとエイレスが突然オリーブを投げ飛ばし、その衝撃で彼女は失神してしまった。
その出来事を隠れて見ている鳩の男がいた。彼はオリーブが投げ飛ばされると同時に扉を強く蹴り飛ばす。そしてエイレスの元へ駆け出し、持っていたナイフで突き刺そうとするが、エイレスはバルコニーから飛び去った。
男がバルコニーに出て空を見ると、エイレスは能力を使って、城に火を付けた。
「早く逃げないと⋯!」
そう言った男は、オリーブを抱えて部屋から駆け足で出るが、廊下にはすでに火が広がっていた。出口は火で塞がれ、逃げ道は窓しかなかった。
男は翼でオリーブを覆い、窓を突き破った。そして飛び立つ。外では逃げ惑う人々が互いを突き飛ばし、子供の泣き声と怒号が火の粉と共に舞い上がっていた
男は群衆の中に知り合いのフェネックを見つけた。そしてその女性にオリーブを託す。
「セイレーン、この子を頼む⋯!」
「お前っ!⋯あっ、ちょっと待てよ!」
知り合いは何か怒っているようだった。
男は再び城に戻り、残っている者は居ないか探し出した。城の中にはもう誰も残っていないようだったが、光っているある物を見つけた。それは翡翠色に輝く宝石の小さな指輪だった。男はそれを持ち出し、知り合いとオリーブの元へと戻った。
オリーブたちは、火が届かない小川のそばに避難していた。すると男がもう一人、狼の女性がいることに気がつく。
「その人⋯誰?」
「城の召使だそうよ。」
そんなことを話していると、オリーブが目を覚ました。彼女は目の前に広がる光景に言葉を失った。帰る家と家族を失った彼女は涙が止まらなくなってしまった。
「⋯これ⋯もしかしてお母さんの?」
男がそう言ってポケットから出したのは小さな指輪だった。
「⋯これをどこで⋯お母様が失くしたと思ってた⋯」
「城の中庭だよ、赤い薔薇の樹の下にあった。」
中庭はロディーテが城で一番好きな場所だった。赤い薔薇の木はオリーブが産まれた日に植えたものだった。
「あぁ⋯お母様⋯」
オリーブは大粒の涙を流し、その指輪を握りしめた。すると指輪が光り、光線となって地平線の彼方を指し示した。
「⋯⋯!?」
オリーブは驚いた表情をした。まるで何かを聞いたようだった。
「⋯これで⋯お父様の居場所が分かる⋯」
「⋯どういうこと?」
「⋯この指輪は自分が一番求めている物を示してくれるのよ。」
「ふーん」
男はその指輪をじっと見つめた。オリーブは泣くのを辞め、別れの挨拶を言って、歩き出そうとするが、男が引き止める。
「俺らも一緒に行くよ。」
「⋯いいの?」
「待って、私は行かないよ。」
フェネックが言う。
「行くんだよ、お前も。」
「⋯分かった。」
フェネックは少し怯えた様子だった。
「俺は鳩のウノ。よろしくな。」
「⋯私はフェネックのセイレーン。⋯よろしく。」
「私は⋯私は狼のディア。よろしくね。」
「私はペリステン王国の第一王女、オリーブです。よろしくお願いします。」
それぞれが自己紹介をする。
「早く行こう、エイレスが遠くへ逃げるよ。」
そうウノが言うと、4人は光線の先へと歩き出した。
リメイク前とキャラの動物も名前も違っててごめんなさい