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#3
「にゃ…にゃぁ…」
どこからか、弱々しい猫の声がする。
ただ助けを求めているだけには聞こえなかった。
その声は_完全に、私に向けられているとわかった。
入学式の帰り。
私は、一匹の黒猫と出会った。
足を怪我している。
毛並みも少し乱れている。
それでも、私にはその猫が魅力的に見えた。
私は、昔から猫が好きだった。
はるくんの家で飼っていた、みぃちゃんという猫の影響だ。
私は、目の前に横たわる黒猫の目をしっかりと見つめた。
くすんだ黄土色の瞳だ。
でも、私にはその猫の本当の目の姿がわかった。
月のように、ただまっすぐに煌る、金色の目だと。
私はその猫以外、目もくれなくなった。
ただ猫だけを見つめ、その綺麗な瞳に吸い寄せられるように。
その猫は逃げる様子もなかった。
それどころか、ふとした瞬間に警戒心もなく眠りについてしまいそうだった。
この子は、大丈夫。
私を呼んでいる。
私は猫に触れた。
その瞬間_
猫の瞳が揺らめき、眩い光を放った。
私は思わず目をぎゅっと瞑る。
そのまま…私は、夏野音羽は、意識を失った_。
周囲からだとほんの一瞬だった。
ただ音羽の世界だけは、時が止まった。
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「あれ…」
気がつくと、自宅のベッドの上。
宙に手を振りかざしても、何も違和感はない。
でも_それにしてはおかしな感じだ。
頭に何かついているような…。
髪の毛が乱れてるのかな?
でもなんだか違うような…。
私は手鏡を握った。
そこに映っていたのは_
猫耳と2本の尻尾が生えた、女の子だった。
「えっ、えっ、え!?これって…」
私は一瞬理解ができなかった。
だが、それも束の間_
『驚くのも無理はない、とは思う。だが聞いてくれ、音羽よ』
自分の脳内に声が響いた。
何故か、脳は理解していた。
この声の主は_あの助けた黒猫だと。
本能のように、自然と理解し、自然と受け入れていた。
自分でも、これがおかしいとはわかる。
でも、この情報が本当ということも、わかる。
『自己紹介が遅れたな。よく理解してらっしゃる。わしゃ、君に助けてもらった化け猫だ』
やっぱり…と思ってしまった。
ここは「どういうこと?」となるような場面なはずなのに。
というか_化け猫…?
あの猫は、化け猫だったの?
尻尾が2本…ってことは、猫又…?
『わしゃ、君の心に住み着かせてもらう。わしを君の心から消す方法は、君が自分で探りたまえ。じゃ、わしはここで』
脳が一瞬一時停止した。
こころに…すみつく…?
本当に、なにも理解ができない。
でも心のどこかでは、理解していた。
完全なる矛盾だけど、自分ではそうとしか説明ができなかった。
化け猫さんを呼び戻そうとしても、なにも声は聞こえない。
心に向かって呼びかけても、なにかが起こるような気配はない。
すると突然睡魔がやってきた。
私はすでにベットに寝転んでいたので、迫り来る眠気に耐え切れなかった。
私はそのまま眠りに落ちた_。