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第八夜:影を背負った写真
語り部は理容店を営む中年男・神田誠。店の裏手には、戦前の写真館の廃屋が残っている。誠は、そこから偶然見つけた一枚の集合写真について語る。
「写ってる人の中に、見覚えのない男がいてな。顔はぼやけてるのに、妙に“見られてる”気がするんだ」
写真には、昭和初期の灯籠会館で怪談を語る住民たちの姿。中央に立つ黒い影のような人物だけが他と違い、どこか不自然に浮かび上がって見える。
誠は数日前、店の鏡にその男の姿が一瞬だけ映ったと告げる。さらにその夜、自宅の鏡の奥に“灯籠会館”の文字が揺れていたという。
翌朝、写真に写っていた他の人物と一致する住民の一人が、体調不良を訴えた。その胸元には、黒インクのような染みが現れていた。