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9 小毬は焼肉に行きたい
小毬『……うちも、焼肉、行きたいっす』
月夜「大丈夫なんですか?10年のブランクって凄いんですよ?」
小毬『ペット同伴で行ってもいいっすか』
月夜「どうでしょう……今から1人枠を増やしてもらえるかも怪しいですし……。でも、聞いてみるだけ聞いてみますね」
どうやら、月夜が小毬と電話をしているようだ。
月夜は電話を切ると、焼肉店に電話をかけた。
月夜「もしもしー、明日予約していた月夜ですが……。はい。今から1人増やすことって可能でしょうか?……はい、お願いします。あと、そちらのお店はペット同伴は可能ですか?……インコと猫と、鳩?だそうです。……はい、分かりました。……ありがとうございます」
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月夜「……と、いうわけで」
小毬「あの、ペットは無理だったからって自宅までお迎えは……、あ、迷惑とかじゃなくて」
月夜「大丈夫です、電話で間に合いませんでしたが、予約している焼肉店の近所に私の知り合いがいまして。そこに預けるというのはどうでしょう?」
小毬(……やっぱり、電話でよかったんじゃないんだろうか……。この人、IQは高いのにこういうとこ抜けてるよな……)
小毬は、猫のひみこ、インコのはにわ、鳩のどきぴー、と、一応月夜も連れ、10年ぶりに靴を履いた。
小毬「まじか……10年前の靴が入ってしまった」
あれから全然成長してないんだな、と落胆しながらも、立ち上がる。
月夜は勝手に玄関からメジャーを拝借し、一瞬で目盛りを読み、「……うん、135cmですね」と言う。
小毬「現実見せないでくださいよ……」
娘が10年ぶりに外に出るのを邪魔してはいけないだろうと、後ろで涙をこらえながら見守る(?)母親が1名。
小毬は立ち上がると、その母親に言った。
小毬「……じゃあ、行って、きます」
小毬は引きこもり卒業、そして、焼肉デビューを果たす。
……これからも外に出るのかどうかは、また別の話のようだが。
そういや今日って焼肉の日なんだっけか?