公開中
6-2(c)「少女は笑みを浮かべていない」
ユイハside
アリス「──ッ、此処は……?」
ユイハ「目が覚めたかよ、死にかけ」
アリス「ユイハ……。貴方、どうして私をこのエリアに?」
ユイハ「んなの、お前がこれ以上に傷付かねぇようにする為だよ」
アリス「……何処まで知ってるの」
ユイハ「虚像でいる時に一切肌を見せていない。そして太宰が観測した“存在しうる未来”で、お前の状態は大体察した」
はぁ、と深い溜息を吐く。
俺は椅子に浅く腰掛け、トントンと自分の膝を指先で叩いていた。
ユイハ「お前、本当に死ぬぞ」
アリス「……そうね」
ユイハ「そうね、って……分かっててあんな無理してるのか! 莫ッッッ迦じゃねぇの!?」
アリス「……あら、今頃知ったの? 私は莫迦よ、本当に」
ユイハ「与謝野に治療させなかったのに、こんな気分になるとは……ホント、過去一で最悪だ」
アリス「それは悪かったわね」
気まずい空気になり、俺がエリアを出ようとすると声を掛けられた。
アリス「……この割れている身体で、何処まで出来るのかしら」
ユイハ「知るかよ」
アリス「自分で寿命を削るとか…ははっ、本当に莫迦ねぇ…私、」
ユイハ「何が云いたいんだよ」
アリス「きっと太宰君が見た未来になるでしょうね。この争いで私は死んでしまう」
ユイハ「〜っ、だからお前は何が──!」
振り返った俺は、そこで言葉を止めた。
アリスは、いつものように優しい笑みを浮かべているものだと思っていた。
ルイスの為なら命を懸けられると云っていた、あのアリスなのだから。
--- 俺の視線の先にいたのは、ただの少女だった。 ---
全てを置いていってしまうことに謝罪をしている。
永遠だった筈の命が簡単に消えそうことに怯えている。
これから先、自分の選択一つ一つの責任が重くなっている。
誰にも相談せず、一人で抱えていたのだろう。
少女は──アリスは笑みを浮かべていない。
いつもと声色を変えてはいなかったが、溢れた涙が彼女の服を濡らす。
アリス「まだ死ねない。ルイスが繋いでくれるレイラとの対話は、まだ終わっていない。でもきっと私は、この戦いが終わったら私は……っ!」
ユイハ「……。」
アリス「生きたいっ、死にたくない……、でもこの世界にとって本物でも、私は偽物だから。ルイスを死なせるぐらいなら、私はッ、」
ユイハ「……虚像をもう一つは作れないのか」
アリス「無理よ。やり方が分からないもの」
ユイハ「俺が今まで吸収した異能にあるのは“仮死状態にする”能力だけだ。お前の気持ちを汲むなら、賭けには出れないな」
自分の無力さを、初めて呪ったかもしれない。
命を助けられて俺は此処にいるのに、何も返せないなんて。
ユイハ「……呼ばれるまで休め。俺が言えるのは、これぐらいだ」
悪い、と俺はエリアを越えた。