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家族団欒
「あ、おはようございます、お姉さん……」
僕の目の前に、朝ご飯を作っている最中の『お姉さん』がいる。
「あれー、なんでこんなとこにいるんだろー?」
「……すみません」
「…まーいっか!めんどくさいし!」
『お姉さん』は料理を再開する。…僕の謝罪の声も聞こえないかのように。目の前にいるのは、知らない人。
「おはよう、カナデ」
「あー、おはよー、ママ!」
『おばさん』が2階から降りてくる。
「お父さんがダイニングで待ってるからー」
「あら、あの人はいつも起きるのが早いのね」
「…………」
僕は、『おばさん』も『おじさん』も知らない。数日前から僕は、この家に閉じ込められている。
「ほら行こー、マル!」
「…………」
片手を強く握られ、僕はずりずりと、どこかへと引き摺られて行った。
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「カナデの作る朝ごはんはいつも美味いなぁ」
「えへへー、カナねー、いつもよりお料理頑張っちゃったんだー!」
「まぁ、今日はマルにも朝ごはんを作ってあげたのね」
「…………」
目の前には、皿に乗った黄色の丸い物が。
「お姉さん、これって……」
「はい、マル、あーん」
痛い。ぐりぐりとその得体の知れない固いものが口に押し付けられた。
「美味しー?」
「……美味しくはな…」
「…美味しかったんだ、良かったー!」
…なんで。
心が痛んだような気がする。
「マルは、ずーっと、カナの宝物だからね!どこに行く時も、ずーっと一緒!」
「トイレや風呂はやめろよ?w」
ひとつ、笑いが起きる。……何も笑えない。
「それにしても、マルのことを気に入ってくれてよかったわ」
「本当に。今まで代わりをどれだけ連れてきても、気に入ってくれなかったからな」
「今回は大丈夫そうね」
「うん!カナ、マルのことだーーいすき!」
僕は、お姉さんのこと大嫌い。
「おや、腕のあたりがちょっと壊れてきてないか?お母さんに後で直してもらいなさい」
「はーい!」
……あ、そっか。
僕って…………
『マル』が何か、分かった?答えが下にあるよ!
マルは、カナデが数日前に両親からもらった、誕生日プレゼントの《《人形》》。
皿に乗った黄色のものは、おままごと用のおもちゃ。
台所にマルがいたのは、昨晩、寝る前にカナデが台所に置いたから。カナデは、そのことを覚えていない。
代わりのものは、代わりのおもちゃ。カナデは飽きやすい性格だ。