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友達作り⑲出会えたことが、全部宝物
星
佐藤くんの目から、堪えきれなくなった涙がひとすじ、頬を伝って流れ落ちた。いつもぶっきらぼうで、感情をあまり表に出さなかった彼が、私たちの前で初めて見せた涙だった。「……わりぃ。俺、バカだったな」佐藤くんは袖でゴシゴシと乱暴に目を擦りながら、小さく、でもはっきりとした笑顔を浮かべた。その笑顔は、小学校のときに上靴を一緒に探したあの日、最後に少しだけ見せてくれたはにかんだ笑顔と、どこか重なって見えた。「泣くなよ佐藤ー! 離れたって、今はスマホだってあるし、いくらでも繋がれるだろ?」李央くんが佐藤くんの肩をぽんと叩き、悪戯っぽく笑う。「そうよ! 週末にみんなで遊びに行く計画だって立てちゃえばいいんだから!」ゆいも空ちゃんも、いつのまにか涙目を浮かべながら、嬉しそうに頷いている。奈々の胸の奥を刺していたツンとした痛みは、いつの間にか消え去っていた。「うん! 来月まで、まだまだ時間はあるもん。やりたいこと、全部みんなでやろう!」奈々が力強く言うと、佐藤くんは「おう」と短く、でも今までで一番優しい声で返事をしてくれた。それからの毎日は、風のように一瞬で過ぎていった。私たちは、一分一秒を惜しむように放課後の教室に集まった。トランプの勝負に本気で一喜一憂したり、お昼休みに佐藤くんが大好きな福神漬けを奈々が「これ、私の分もあげる!」と山盛りに押し付けたり。少しでも佐藤くんをからかうと、彼は前みたいに逃げたりせず、耳を真っ赤にしながら「うるせえよ」と笑い混じりに言い返すようになった。寂しさが押し寄せてきそうなときは、みんなで「いつだって友達」という言葉を合言葉のように唱えた。離れることは悲しいけれど、今作っている思い出は、これから先、離れ離れになる私たちを支えてくれる無敵のお守りになる。そう信じられたから、私たちは一日中、お腹が痛くなるほど笑い転げた。そして迎えた、佐藤くんの転校前最後の放課後。あの薄暗い秘密基地の廊下に、夕方の優しいオレンジ色の光が差し込んでいた。みんなで並んで撮ったチェキの写真を、佐藤くんの手にそっと握らせる。裏面には、みんなからの寄せ書きがびっしりと書かれていた。「佐藤くん。元気でね。……また、絶対に集まろうね。」奈々の言葉に、佐藤くんはチェキを愛おしそうに見つめ、真っ直ぐに奈々の目を見た。「ああ。ありがとな、奈々。……みんな。俺、みんなに出会えて、本当によかった」その言葉は、薄暗かった廊下を、そして私たちのこれからの未来を、温かく照らす太陽の光のように、いつまでも響き渡っていた。