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光芒の丘
幾千の夜を越え、幾つの星屑を靴底に沈めてきただろう。
足跡は風に浚われ、指先から零れ落ちた記憶の数は、すでに数え切ることもできない。
荒涼とした地平線だけが延々と続き、地平の果てに何があるのかを知る者は世界のどこにもいなかった。
立ち止まる理由は、とうに喪失していた。
ただ掠れた記憶の奥底、名前すら忘れてしまった誰かの温もりを追うように、歩みだけを止めずに進み続けた。
凍てつく影を纏う孤峰を越え、黒く濁った沈黙の海を渡り朽ちた文明の残骸が眠る荒野を踏み越えていく。
長い旅路だった。 遥か彼方、貴方を見つけるまでは。
不意に世界が開けた視界の先、白銀の光芒が降り注ぐ枯れ果てた丘の頂にその姿はあった。
荒廃した世界の中で、そこだけが別の時間に守られているかのように清らかな静寂に包まれている。
佇む貴方の輪郭が、揺れる光の粒と溶け合い、淡い影を地に落としていた。
ゆっくりと踏みしめる乾いた草の音が、静寂の波紋となって広がっていく。
貴方が静かに振り返った。言葉は要らなかった。
交わされる眼差しと、絶え間なく微振動する大気が失われた歳月の全てを静かに物語っていた。
伸ばされたその手と、重ねられた指先。
互いの体温が触れ合った瞬間、果てしなく続いていた孤独な旅の終わりと、新たな世界の始まりが、静かに世界を満たしていった。