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はじめの一歩、第一歩②
星
第三章:消えた家「そんなはずはない」私は何度も写真を瞬きしながら見つめた。けれど、何度数えても写真に写っているのは七人。あの日、確かに加奈(かな)と激しく言い合っていたはずの正人(まさと)の姿だけが、どこにもないのだ。胸に嫌なざわつきを覚えた私は、たまらなくなって家を飛び出した。大人になってすっかり変わってしまった街並みを走り抜け、私は正人の家があった場所へと向かった。「嘘でしょ……?」息を切らせてたどり着いたその場所で、私は立ち尽くした。十年前まで、確かにそこにあったはずの正人の家は影も形もなかった。あったのは、冷たいロープで囲まれた、ただの広い「売り土地」だった。頭が混乱する。私は次に、あの日正人と大喧嘩をしていた加奈の家へと走った。しかし、そこでも同じ光景が私を待っていた。加奈の家も、いつの間にかただの四角い「売り土地」に変わっていたのだ。「みんな、どこに行っちゃったの……?」心臓がドクドクと冷たく脈打つ。焦った私は、残りのメンバーの家を夢中で回り始めた。けんた、たろう、るうと、みほ。昔の記憶を頼りに走り回ったけれど、そのうちのさらに二人の家も、やっぱりただの「売り土地」になって消えていた。まるで、私たちの八人の思い出が、この街から少しずつ消しゴムで消されているみたいだった。第四章:残された二人夕暮れ時、すっかり足が棒のようになった私は、小さな公園のベンチに座り込んでいた。ここは、昔みんなでよく「だるまさんが転んだ」をして遊んだ公園だ。ポツリ、ポツリと、街灯に明かりが灯る。「理子?」突然名前を呼ばれて振り返ると、そこには大人になったるうと君が立っていた。手には買い出しの袋を持っている。たまたま通りかかったようだった。「どうしたの? そんなに息を切らして、泣きそうな顔して」私は震える手で、ポケットからお母さんに渡された写真をるうと君に見せた。「るうと君、これを見て。正人がいないの。それにね、正人と加奈の家に行ったら、どっちも売り土地になってた。他の二人の家も消えてたの。みんな、どこに行っちゃったの……?」私の言葉を聞いたるうと君は、驚いたように目を見開いた。でも、彼は写真を見て驚いたのではなかった。私の顔を、どこか悲しそうな、それでいて全てを知っているような目で見つめたのだ。「理子……気づいちゃったんだね」るうと君は静かにベンチの私の隣に腰掛けた。「お母さんが、なんでその写真を朝から晩までポケットに入れていたか、本当に理由を知らないの?」るうと君の口から語られようとする言葉に、私は息をのんだ。あの日、一年生になった私たちが喧嘩をして、バラバラになってしまったあの日の裏側には、私の知らない「もう一つの真実」が隠されていたのだ――。(つづく)