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神宮寺ユイハって云います
55minutesの後日談(?)です。
良かったらそっちから見てね。
特務課新人の職業体験、第一話。
No side
スタンダード島事件から一ヶ月。
夏の暑さがまだ残る中、ルイス・キャロルは|異能空間《ワンダーランド》にて──。
ルイス「いよっっっしゃぁぁぁぁああああ!」
──異様な程ハイテンションだった。
ガブ「ついに頭イカれたか、此奴」
アリス「心配しなくても、元から頭はおかしいわよ。あと莫迦」
ルイス「酷い云われようだね」
ガブ「お前のことだぞ」
あー、疲れた。
そうルイスはぬいぐるみの山へとダイブする。
そして携帯電話をイジっていた。
ルイス「あ、もしもしぃ? ……そうそう、出来たんよね。うん、だから……やっぱ君しか勝たんわ! 日程? それはこっちが合わせるからなんでも良いよ。……え? いや、判ってるって。君まで僕のこと莫迦にするのかい? 泣くぞ? 成人男性のガチ泣きみたい?」
ため息をついたルイスは電話を切り、そのまま眠りについた。
アリスとガブは、二人とも首を傾けていた。
敦side
全員「職業体験?」
あぁ、と社長は腕を組みながら説明を始めた。
武装探偵社の会議室には、珍しく全社員が集まっている。
福沢「秋から異能特務課で働き始める異能社がいるらしくてな。そこで職業体験という形で異能力、我が社についての知識を深めたいという話だ」
国木田「秋から、というのは少し珍しいですね。何か理由でも?」
福沢「その……私も詳しくは判らない」
そんなこんなで、職場体験当日になった。
???「神宮寺ユイハって云います」
探偵社の事務室。
そこに彼は立っていた。
黒髪に水色の瞳。
身長は僕より少し低いぐらいだ。
そんな彼は何故か、困惑の表情を浮かべている。
ユイハ「その、えっと、よろしくお願いします……?」
国木田「何故に疑問系……?」
ユイハ「いや、あの、今回の職場体験勝手に決められたので」
はぁ、とユイハはため息をついた。
ユイハ「えっと、呼び捨てとタメ口で大丈夫です。改めて、これからよろしくお願いします」
谷崎「よろしくね、ユイハ君」
ナオミ「よろしくお願いします、ですわ!」
国木田「今日から職場体験ということで、小僧」
へ、と僕は間抜けな声を出してしまう。
国木田「貴様がユイハに業務の説明をしてやれ。簡単にいうなら……教育係だな。鏡花と二人で頼んだぞ」
敦「そんな!? 2番目に新人なのに荷が重いですって!?」
国木田「ユイハは18で小僧と同い年だ。同年代の方が話しやすいだろう」
いや、そうかもしれないけど。
そう云いかけ、ユイハさんがいるのでもう諦めることにした。
あまり本人の前で云うのはよくない。
賢治「そういえば国木田さん、太宰さんは相変わらず川を流れているんでしょうか?」
乱歩「さっき下の喫茶店にいたよ」
国木田「賢治、回収してきてくれ」
賢治「はぁーい!」
敦「そういえば鏡花ちゃんは?」
賢治君が部屋を開けると同時に、外から鏡花ちゃんが入ってくる。
ユイハside
ただいま、と少女は何かを引きずっていた。
ユイハ「ヒッ」
思わず俺は小さな悲鳴をあげてしまった。
鏡花「回収してきた」
太宰「酷いよぉ、鏡花ちゃん。外套が少し汚れちゃった」
国木田「貴様がユイハの来る時間に間に合うよう来なかったのが悪い」
敦「ユイハさん、顔色悪いけど大丈夫ですか?」
ユイハ「あ、えっと……大丈夫だ……」
俺の表情は、あまり良いものではないだろう。
それはそう。
何故なら、少女はある長身の男を引きずっていた。
その男は太宰治。
俺にとって彼奴は、脅威だった。
ユイハ(俺、本当になんで探偵社にいるんだろ)
時は、少し遡る。
神宮寺ユイハ改め、俺──ジュール・ガブリエル・ヴェルヌはいつも通り|異能空間《ワンダーランド》にいた。
ルイス「ということで、これ着て」
いきなりルイスが服を押し付けてきた。
ガブ「ナニコレ」
ルイス「あの、MMDとか3Dモデル動かしたりするアレ」
アリス「語彙力ないわね」
疲れてるんだよ、とルイスは俺に機械のついた服を着せた。
ルイス「半強制的に着せて悪いね。ついでにこれもよろ」
ブフォッ、と何かを被せられる。
それは何かの機械のようだった。
正直、めっちゃ重い。
ガブ「……なんだ、これ」
俺は驚いていた。
声がいつもと違う。
目の前にはルイスとアリスがいるのは問題ない。
でも、何故か変な服と機械を着けた自分の姿もあった。
自身の服装を確認してみると、スーツだ。
ガブ「ホントニナニコレ」
ルイス「それが君が外で行動できる姿」
ルイスが指を鳴らすと、目の前に鏡が現れた。
黒い髪に、水色の瞳。
元の自身とは違う、日本人の顔立ち。
ルイス「仕組みは先程も言った通り流行りの2.5とかと変わらないよ。君に着せた服で人形と同じ行動が可能。視界はアリスの異能を使ったVRのような感じだね。声は変声期を通じて形から発されるように調整した。残念だけど食事は無理だった、すまん」
ガブ「……そういえば、外で行動できる姿って」
ルイス「|異能空間《ワンダーランド》を出れば、君は消滅してしまう。その人形を通じて、外を見ろ」
あぁ、とルイスが微笑む。
ルイス「人形の名前は神宮寺ユイハだ。秋から特務課で働き始める18歳、って設定だね」
アリス「あら、ルイスにしては良いネーミングじゃない」
ルイス「へへっ、読者の人に募集したからね」
アリス「メタいわよ」
ガブ「神宮寺ユイハ、か……」
そう俺は呟く。
ガブ「ありがとな、ルイス」
ルイス「……ははっ、どういたしまして」
時は戻り、探偵社にて。
ユイハ(──って、ことがあったけど)
何故に探偵社、と俺は心の中でツッコミを入れていた。
外を見ろ、なんてルイスは云ったがいきなりハードルが高すぎる。
何処でヘマするか判ったものじゃない。
福沢「今日は初日で顔合わせだけだ。業務に入る前に最終確認をする。ユイハ、ついてこい」
ユイハ「は、はい!」
俺は探偵社社長に連れられ、社長室へとやって来る。
扉を開くと、そこにはルイスがお茶を飲んでいた。
ユイハ「何してるんだよ!?」
ルイス「やぁ、無事挨拶は済んだようだね」
ユイハ「済んだけども!」
福沢「あまり大声で騒ぐと事務室まで聞こえるぞ」
福沢の言葉に、俺は黙り込む。
こんなところでガブだと気が付かれたら、色々と面倒くさい。
特に、あの事件に関わってるメンバーには気づかれたくなかった。
福沢「期間は本日より一週間。設定は判っているな?」
ユイハ「あぁ」
ルイス「ま、頑張りなよ。敦君や他の社員と仲良くなれると良いね」
ジュール・ガブリエル・ヴェルヌ改め、神宮寺ユイハによる武装探偵社での職場体験が幕を開ける──!
ユイハ「俺の心の声を捏造するなぁ!」
えっと、神宮寺ユイハです。
次回も見てくれたら嬉しい…です。
よろしくお願いします…?
何でそんなぐだぐだなの?
いや、次回予告とか判らねぇし。
ちゃんと読者の人に次回も読んでもらえるようなのにしないと!
…はぁ
ため息つかない!
次回は探偵社が自己紹介をするらしい。
いや、初日に終わらせておけよ。
本当にね。