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第7話:黄金色の花を狙う影、燃える嫉妬
その日は、他家からの使いとして、若く端正な顔立ちの術師が禪院家を訪れていた。
直哉様が直毘人様に呼ばれて席を外している間、私は婚約者として、そのお方の応対を任されることになった。
「……紬様、とおっしゃるのですね。噂通りの、いえ、噂以上の美しさだ」
「恐れ入ります。お口に合えば良いのですが、こちら、当家自慢の茶菓子でございます」
私はいつものようにお淑やかに、黄金色の瞳を細めて微笑んだ。
相手の男性が私の顔を見て耳まで真っ赤にし、熱心に話しかけてくる。私はただ、失礼のないようニコニコと相槌を打っていただけだった。
――その時。
「……おい。いつまでその汚い面拝ませとんねん。用が済んだなら早う帰れや」
凍りつくような低い声。
振り返ると、廊下の陰から現れた直哉様が、見たこともないほど険しい表情でこちらを睨みつけていた。
「な、直哉様! お戻りだったのですか」
「……自分、何へらへら笑いかけとんねん。こいつ、お前のこと卑しい目で見とったぞ」
直哉様は私の腕を乱暴に引き寄せると、男性を射殺さんばかりの視線で追い払った。
逃げるように去っていく背中を見送り、私は困惑して首を傾げた。
「直哉様、あの方はただの使いの方で……」
「黙れ。……自分のその顔、俺以外の男に見せんな言うたやろ」
直哉様の瞳には、底知れぬ嫉妬と、私を奪われることへの焦燥感が渦巻いている。
そのまま強引に自室へ連れ込まれ、襖が閉まると同時に、私は壁に押し付けられた。
「……直哉、さま……?」
「……自分がおらんくなったら、俺がどうなるか分かってへんのか。……分からせてやるわ」
いつもより強引で、けれど壊れ物を扱うように繊細な指先が、私の衣服を緩めていく。
首筋に顔を埋め、何度も「俺のもんや」「誰にも渡さへん」と呪文のように呟く直哉様。
その夜、重ねた肌から伝わる直哉様の鼓動は、驚くほど速くて激しかった。
彼は言葉で伝えられない不安を、すべて「営み」という形で私に刻み込もうとしているようだった。
「……なおや、さま。……私、どこへも行きません。……ずっと、貴方のお側に……」
熱い吐息とともにそう告げると、直哉様は一瞬だけ、泣きそうなほど愛おしげな顔をして私を抱きしめ直した。
翌朝。
私の首筋には、着物の襟からは隠しきれないほど鮮やかな紅い痕が残っていた。
それを見た直毘人様が「ガハハ! 直哉、そんなに見せびらかさんでも紬ちゃんはお前のものや(笑)」と爆笑し、使用人たちが「あらあら、お盛んで(ふふっ)」と顔を見合わせる中。
直哉様だけが、満足げに鼻を鳴らして、私の腰を引き寄せて離そうとしなかった。