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友情カプセル
あれから『四次元ポケット』らしきものは消滅していた。机の上に置きっぱにしてあったのが悪かったんだろう。でも、『コンピューターペンシル』は確かにある。それなら、もっと『四次元ポケット』に手を入れておけば良かった。
「|玉季《たまき》、大丈夫?」
あ、と言う。そうだ、目の前には友達の|月本陽丸《つきもとひまる》がいるのだ。すっかり忘れていた。
「いや、全然」
『コンピューターペンシル』にふけっている暇はないのだ。わたしはコンソメ味のポテトチップスに手をのばし、口へと運ぶ。
「なんか、ずっとぼーっとしてるじゃん」
「そんなことないよ」
『コンピューターペンシル』と『四次元ポケット』への後悔なんて…。
ある。
土曜日の4時半。あ、そろそろ『ドラえもん』が始まる。
「じゃ、そろそろ解散する?」
3時からいるから、頃合いとしてはいいところだ。
そう言うと、「よっこいしょ」と陽丸は帰っていった。
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ちゃんと『ドラえもん』をリアタイして、自室に向かう。
「また有るっ!」
1週間前と同じ、白い布。『四次元ポケット』のようだ。わたしは早速手を入れた。いくら探ってみても、小さめの何かとコントローラーらしきものしか見当たらない。ああ、1週間ごとに1つしかもらえないのか。取り出すと、黄色いコントローラーと、ピンクのハート型のカプセル。『友情カプセル』と『コントローラー』。
「ああ…」
陽丸との関係の悩み事が災いしたのか、友情関係に関するものだった。陽丸以外に、友達は皆無に等しい。『友情カプセル』を相手につけると、強制的に『コントローラー』で管理ができる。一種の洗脳アイテム。漫画では、スネ夫が『友情カプセル』でドラえもんを仲間にしていた。
まあ、気になる女子に|春野恵那《はるのえな》がいる。いつも笑っていて、明るい子。わたしには不釣り合いだと思っていたが、『友情カプセル』を使えば…?
…いや、やめておこう。なんだか悲惨な目に遭う気がする。実際、漫画でもそうなっていたのだから。春野さんとは不釣り合いなままでいく。それがわたしなのだから。
…まあ、『友情カプセル』を貼り付けるだけ貼り付けといたらいいかも、しれないけれど?