公開中
雛月翠は所属したい。
すご〜く長いです☆
「…は?」
柊斗はちゃんとその言葉の聞き取った。そして理解したつもりだが…。
いや!こんな語尾なのだ不思議っ子転校生が!?この部員一名研究部に!?
なんかそういう系が好きそうな感じがしてなくもなかったが、まさかこんなことになるなんて。
これが『運命』ってやつだろうか。それならとんだ運命だな。
「だーかーらぁ!翠は研究部に入りt、むぐ」
「それはわかった!」
柊斗は翠の口を塞いだ。これ以上大きい声を出されると逆に迷惑だ。
「はぁ…、でもなんでこんな、他の部活よりもしょぼい『研究部』なんかに。」
「そんなの決まってるであろう!」
コイツ、どんだけ語尾に種類があるんだ?
すると、翠は膨らみの少ない胸を堂々と張って、こう宣言した。
「**世界中のあらゆる不思議を解明したいから、なのだっ!**」
・・・
・・・何言ってんだコイツ。
「…あのなぁ、世界中の不思議ってお前」
「だから、前坂。翠に力を貸して欲しいのだ!」
いやお前、そんなこと言える立場じゃないからな。特に身長の面から。
「て言われてもすぐ入部することは出来ないからな。」
「…へ?」
そう鋭い言葉を言い放ってみると、雛月はさっきの様子とは打って変わって間抜けな声を漏らしたのだった。
---
翌日。雛月翠の仮入部が始まった。
柊斗が部室に入って、一息付いたあと、ドアの音が響いた。
「お邪魔するのだ〜。」
「お、雛月。」
「前坂、今日からよろしくなのだ。」
「ああ。」
今日から雛月は一週間仮入部をすることになっている。仮入部期間が終わったら担当教師に許可を取るという流れだ。まあ、研究部の担当教師は色んな部活を掛け持ちしているため、様子を見に来るのは一ヶ月に一回ぐらいだけど。
「ということで、今日は何をするのだ?」
「まあ、研究部は個人で活動するからな。ちなみにこっちの部屋でやる。」
と、理科室の隣の部屋に案内すると、
「…ふおお〜っ!」
と、変な声で雛月が声を上げた。
「ここって…!」
「いわゆる研究室だ。最近ここで活動してる。なんか雰囲気出るだろ?」
「__…やっぱり私が思っていた通り__」
「?雛月?」
「あ、いやっ、、なんでもないのだ。」
と薄っすらはにかんだのだった。
---
1週間後。雛月の運命の日がやってきた。
「そろそろ来ると思うが…。」
すると、ガチャとドアの開いた音がした。それは重く鈍い音だった。
振り向くと、肩をがっくり落とした雛月の姿があった。
「・・・。」
「っ…、雛月、、。」
顔が見えない状態でそっと声を掛けると、パッとその顔を上げて今にも泣きじゃくりそうな顔を浮かべた。
「…っうあ〜ん!先生達審査厳し過ぎだろぉぉぉぉ。」
「…。」
俺はただただ黙り込むことしか出来なかった。
「なんなんだよ。|私《・》は真剣に取り組んでるのに、。ぐす」
「…。」
一人称が『翠』ではなく『私』に変わったのがさっきの言葉ではっきりと分かった。
コイツの本当の自分は今俺に見せている|雛月《コイツ》だろう。
でもなんでわざわざそんな…
考える暇もなく俺は雛月に向かって言葉を発していた。
「**…雛月はどうしてこんな学校に、転校してきたんだ?**」
「!」
雛月は一瞬、驚いたような顔をしたが、涙を拭って俺の方を見ながら_、言い放った。
「**ここの研究部に、入りたかった、から。**」
「!」
いつもとは違った少し鋭い目つきだった。何か柊斗に訴えるようなそんな目を_。
すると、雛月が目線を下に落とした。前髪が長いためあまり見えなかったが、さっきまでうす青緑色をしていた色彩が黒を多く入れた、さっきの色とは全く違う悲しく儚い、濁った色に移り変わっていた。
「…っ。」
その目に俺は息を呑む。すると、雛月の口が少し開いた。
「…私の高校では科学部が無かったんだ。一年生のとき、あるきっかけで科学に興味を持った。だけど、私の家の周辺には科学部のない学校ばっかで…でも唯一あったのがこの学校だった。嬉しかった。でも、結局遠いし、今の家から通うのは到底無理だから引っ越しもした。偏差値めっちゃ高かったから、一年のうちにたくさん勉強して、やっとの思いで受かったのに…、なのにっ…。。」
あまりにも思いが抑えきれなかったからか、嗚咽が混じった小さい声が俺の耳に届いた。
ハッとする。雛月は本音を打ち明けてくれた。裏ではこんなにも努力していたのだ。ここの学校の研究部に入部するために、引っ越しもして、勉強もして、受かって…。そんな思いを真正面から受け止めた俺は、言葉も出ないどころじゃなかった。
「…っ。」
俺は歯を食いしばると、いつの間にかドアの前に立っていた。
「…?前坂」
「…行くぞ。」
「…ふえ?」
振り返るときょとんとした雛月の姿。そこに俺は少し笑みをこぼした。
「いいから、ついてこい。」
「…なんなんだ、その口調。」
「ぐ。」
異世界ゲームでの魔王プレイみたいな口調がどうやら見破られたらしい。
「…ま、まあとにかく。担当教師んとこ行くんだよ。」
「な、なんで前坂が…」
「**決まってるだろ。雛月を、正式な部員にするためだ。**」
「!」
雛月は目を見開いた。そして、ほんのりと、はにかんだ。
すると、俺の心臓の鼓動がドクンと大きくこだました。
にへらと、柔らかく微笑んでいる雛月の顔に、思わず頬が赤くなるのを感じる。
ああもうなんなんだコイツは。
コイツが俺の世界に入り込んだせいで、俺の世界がだんだんと変わっていくような感じがした。
思った以上に長くなりましたね、うん。
これでも抑えたつもりです^^;
では次回また会いましょう!コメントも是非くださいね!