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#4
※本小説は実在する女性VTuberさんの夢小説となっております。苦手な方はブラウザバックなどの対応をお取りくださいますよう、よろしくお願いいたします。
それから、何週間か経った時の事だ。
「はぁ、寒い……」
手袋とマフラーをしていても冷える東京。息を吐くと少し白いもやが溢れていて、今は十二月なんだなと実感する。とんでもなく真冬だ。
「えーっと、お店は駅前……」
私は今日、誕生日が二日後に迫った友達のお誕生日プレゼントを買いに来ている。プレゼントするのはおしゃれなスノードーム。お店まで買いに行くため、極寒の休日に東京まで繰り出した次第だ。
「どこ、だっけ……?」
方向音痴気味なので、少し道にも迷う。その度に、早くこの寒さから解放されたいのになと思いつつ、早足で駅構内を早足で通り過ぎた。
「…………やめてください、放して……!」
しかし、その時だった。その時私の目の前に、運命が現れた。
「お姉さん、ちょっとお茶しない?」
「やめてください、本当に……」
人がなだれ込んでいる駅構内。そこで目に留まった一つの風景。男が一人の女性をナンパしていた。
「いいじゃん、マジでちょっと。三十分だけ!」
「嫌です、本当に……」
男はチャラそうな見た目をしていて、同時に女性の腕をがっちりと掴んで放す気配がない。女性の方はすごく嫌そうな顔をしていた。
「……」
本当なら、他人の事象に首を突っ込む必要も無いはずだった。そのままスルーもできたのだ。それでもなんだか、私の足はあの二人の方向へ向いていて、気付いたら冬の冷たい空気を大きく吸い込んで、次の台詞に口を向かわせていた。
なんだか、止めたくなったのだ。
「……あの! そういうの良くないと思います。この人から離れてください!」
男の腕を鷲掴みにして怒る。周りの人々も一斉にこっちの方を向いて、明らかに悪者であるナンパ男の方を見た。
「え……、なんかヤバそうじゃない……?」
「あの青髪の人がナンパされてたのかな……?」
「ああいう男ってマジ迷惑だよね……」
周囲のくすくすとした声が響く。決して耳心地の良いものでは無かったが、それはこのナンパ男にとっても同様。
「う、うわぁ!」
男は周りの目線に耐えかねて、一目散に逃げ出した。その様子は愚かでしょうがなかった。全く、あれだからナンパ師は男女関係なく嫌いなのだ。
「あ、逃げたね……」
「逃げ方ダッサ……。まあいいや、ほら行こー……!」
ナンパ男という一難が去ってくと、周りは一気に自分達の日常を取り戻していった。さっきの事を完全に無視して、日常を謳歌している。しかし、ここに居る私達だけは、そうもいかない。
「あの、大丈夫でしたか? お怪我とかは……?」
「あ……はい。ありがとうございました」
私が心配して声をかけると、女性は控えめに頷いた。とりあえず、あの男に危害は加えられていないようだ。私は一安心と胸を撫で下ろす。
「じゃあ良かったです!」
女性はさっきと全く変わらず、依然として下を向きながら小さくはいと言った。顔も隠しているし、なんだかミステリアスな人だなと思う。
「……じゃあ、私はこの辺で。気を付けてくださいね」
でも、そんな事私には関係ない。私はこれから友達のために、おしゃれなお店のおしゃれなスノードームを買うのだ。私は女性に気を付けてとだけ言い残し、後を去る……。
「……あ、あの待ってください!」
はずだった。私がさてお店に向かおうと踵を返した瞬間、突然女性側から声を掛けられた。しかもちょっと大きい声量で。
「ん? どうされましたか……?」
思わず私が振り向くと、女性は少しだけ照れ臭そうにもじもじした後、私に向かってこう言った。
「あの、お礼……お礼したいです……!」
その言葉は、予想はしていたものの予想外といったものだった。そりゃ想像自体はしていたが、それはあくまでもフィクションのあるあるで、まさか現実でお礼をしたいなんて言われる日が来るなんて、普通は思わない。
「え、お礼ですか……?」
私は彼女の言葉に思わずたじろぐ。お礼自体は別に構わないのだが、お礼なんて言われても何をしてもらえば良いのか、それが中々思い浮かばない。別に困ってる事なんて無いし……と思う。
「えぇ……」
「ダメ、ですかね……?」
私が困ってわたわたとしていると、女性が少し上目遣いで私の方を見てきた。
「……」
その瞬間、私は何かを感じ取った。この女性の上目遣いが、どこかの誰かに似ていると思ったのだ。誰だったかはちょっと忘れてしまったが、私が可愛いと思っている誰かに似ている。そうお思った。そしてなんだか、この女性にお礼されたい、という謎の欲求も増した。
「……そうだなぁ」
私は口を開く。今の所は、特に何もされなくて良いなと思った私は、とりあえず……から言葉を始めて提案をした。
「とりあえず……、連絡先交換しませんか?」
本当はもっと終わりは後の方にする予定だったんですが、長さ的にちょうどいいのがここだったので止めました。次の回で色々書く予定です。