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英国出身の迷ヰ犬×文豪ストレイドッグス!3rd.ep_12
「ぁ…」
久しぶりすぎて、忘れていた。
「中也の敵には_中也の瞳は、こんなふうに、見えて__」
壁を突き破っていつの間にか先ほどよりもさらに広い部屋に出てきた。
「っぐ、ぅ__」
左足が、鈍痛に動かない。異様な方向に曲がっている。
__それでも諦めるわけにはいかない
「奇獣っ、不死鳥__!」
なんとか呼び出すのには成功して、応急処置程度の治療をする。
それでも、中也の瞳が脳裏をチラついて離れない。
治したはずなのに、まだズキズキと脚は痛む。
「桜月ちゃん!!」
「アリスさん!?その怪我っ」
治療しようと手を伸ばすも、素早い攻撃に弾かれた。
ハッと顔を上げると、紅葉ねぇが中也と同じく冷たい表情で嗤っているのが目に入る。
あ、ぁ…そんな、アリスさんの血が、額が、赤に濡れて、
「どこまでも厄介な異能が集まったものね、ジョージ達の組織は」
「…っ本当、です」
「手前の相手は俺だ…裏切るなんて、一番あり得ないと思ってた」
「ふふ、其方、|私《わっち》と会ったことがあるように思わせるのぉ、どこかで見目会うことがあったかえ?」
アリスさんと、紅葉ねぇ…面識、あったっけ、?
…にしてもヴェルにぃがいなくて助かった…流石に黒服さんも彼の存在は知らなかったのだろうけれど。
「アリスさん!きっと__皆の中には矛盾が生じているはず_ですよね」
「ええ、そう思うわ…回りくどいけれど、声をかけ続けるしかないわね」
少し離れた場所で、アリスさんが頷くのが見えた。
その額には未だ赤い液体が伝っている。
治療したい__けれど紅葉ねぇに邪魔される__
「治療は後でいいわ!今は2人に集中して!」
「__っわかりました!」
私は中也に、アリスさんは紅葉ねぇに。
「…っんで__手前が裏切んだよ…!!」
中也とやり合ったのは久しぶりだった。
やっぱり、前に訓練してもらった時よりも強くなってる。
「私は裏切ってない!!私が中也を、マフィアを裏切るわけがないでしょ!?」
「ならなんで逃げた!どうしてあの時部屋に留まらなかったんだよ!!」
「それは__っああもう!とにかくアリスさんはルイスさんと同じ恩人でしょう!?」
あまりにも状況がややこしくて腹が立つ。
青龍で思い切り水を飛ばしたら舌打ちして避けられた。
そっか、重力じゃ水は防ぎにくかったっけ。
「さっきから…本気でやれよ!殺されてェのか!?」
「…だって中也、殺す気、ないでしょ?」
私より背の高い中也の瞳を覗き込むようにしてそういうと、一瞬動きが止まった。
「…あァ?」
「合理性の塊な首領のことだから、裏切った理由すら聞き出せないまま処刑することはしないはずだし」
「はっ、ぬりィな…苛烈なマフィアが、んなことを許すと思うか?」
「…」
黙って睨むと、中也は面白くて仕方がないという風に笑った。
「残念だがな、手前の云う通りだよ。首領は生け捕りを命じられた」
「…でも中也は疑問に思ってる」
「はァ?」
「なぜ私がこんな暴挙に出たのか」
「今度は中也が沈黙だね」
「あーあー、慥かに気になってるよ、だがな…それは捕縛した後でも幾らでも聞き出せる」
中也はすっと目を細めると、重力で加速しながらまた殴りかかってきた。
咄嗟に小刀を構えて、__私は、
--- __小刀を下ろした ---
「ッな__!?」
「__⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎…⬛︎⬛︎⬛︎。」
莫迦は私だね、中也の異能を生身で受けて、無事なわけもないのに。
それでも私は__この小刀を、中也に向けたくはなかったもの。
いつまで目を閉じて待っていても、衝撃がやって来ない。
「…え、?」
うっすら目を開くと、ルイスさんが目の前に立っていた。
「…ほんと、君って無茶ばかりするよね」
「いやっ、それはルイスさんの方が…!!__ワンダーランド、?」
「嫌な予感がしたから咄嗟に」
「ぁ、ありがとうございます…」
こうして命を救われるのは幾度めのことだろうか。
どうやらルイスさんも同じことを考えていたらしく、ため息をつきながら苦笑いを浮かべていた。
…本当に申し訳ない。
「それで、これからどうしようか」
「みんなにかかった異能は私をルイスさんが殺すことでしか解けない、ですよね」
「フランシスみたいに解除条件が気づくこと、とかだったら良かったんだけど」
何事もそう上手くはいかないらしい。
本当、さっきアリスさんが云っていた通り、厄介な異能の持ち主が集まった集団…。
ふと、一つの案が脳裏に浮かんだ
けれど、あまりにも言葉にしにくい…
「…異能の持ち主を、殺したら、戻るでしょうか」
「…保証はないけれど、可能性は低くないね」
口の中がカラカラに乾いている。
さっき与謝野先生が捕縛してくれていたから、その気になれば殺すことは簡単。
…でも…
「必要な殺しではないですから、やっぱりやめておきます」
この判断は合理的じゃない。
けれど、できない。
マフィア失格だ…。
「…まぁ、そう気に病まないで。もしかすると殺すことで異能力が一生解除できなくなってしまうかもしれないんだから、元からリスクの高すぎる賭けだよ」
「…ありがとう、ございます」
「ところでさ、僕に一つ案があるんだけど…上手くいかないかもしれないけど、可能性は小さくはない」
「え…!どんな方法ですか、?」
「その前に教えてほしい。君の異能は…遠隔発動できる?」
突然の問いだったけれど、私は頷いた。
「今はもう携帯無しでも異能を遠隔発動させられます」
「…じゃあ___」
--- 「__________」 ---
「っえ…り、リスクが高すぎます!それに、それじゃあルイスさんが…!、」
「大丈夫。これでも僕はこう云うのは得意だから」
「…気をつけて、くださいね」
「君も、無理だと思ったらすぐに中断して…次無茶したらアリスに無理やり止めてもらうからね」
「ええ!?」
そう云って、1人でワンダーランドを出て行ってしまったルイスさん。
咲夜…お願い。
---
「…少し話をさせてくれない?」
彼はワンダーランドから出てそう切り出した。
テニエル兄弟にその声は届いたらしく、怪訝な顔をしながらも動きを止めた。
ポートマフィアの彼らは探偵社と話している。
決して友好的とは云えないものの、戦闘している様子はもなかった。
「僕が桜月ちゃんを殺す。これがイライザが戻って来る条件だよね?」
「……そうだが?」
「じゃあ僕が此処で死んだらどうなるんだろうね」
…そう云うルイスさんの手には、拳銃。
ああ、嫌だ。
何時かの自分の姿と重なる。
私が上手くやらなければ、全部終わる。
…そんなことには、絶対させない。
「おい、まさか──!」
「そのまさかだよ。君達はテニエルが失敗した過程を全て知っておくべきだった」
久しぶりの投稿になってしまいました。
執筆すら数カ月ぶりでなんだか感覚が不思議…
ここからの展開をどうしようかメモしていたページも夏休みにヤケになって消してしまっていて、正直ゼロからもう一度考えるところに立っています。
ちなみに、途中桜月ちゃんが「____■■■■■…■■■。」と云っていたセリフ。
後々重要になっていくはず…?かも…?なので覚えていてもらえたら嬉しいです。