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ネットインター
「ネットー?」
「ああインター、おはようご$’(#”…」
「おかしくない!?大丈夫!?」
「いえ、そんな&$’#”(”ことござ&”(!)ません…」
寝覚めが悪い。ネットが起こしてくれないからでしょ、と思っていると、何故かバグっていた。喋るたびに何故かノイズが聞こえ、歩くたびにギシギシと鳴る。
「そんなことないでしょっ」
そう言って、ネットに触れる。
「きゃっ、熱い。何なのこれ?熱?あんたアンドロイドでしょ?」
「知りませ$”’。人間のDNAが作動&#)”!!#’」
「えぇ?ちょっとっ」
「%’”)!&%8!”#$%&’()#&」
もう会話にならない程度だ。
「とにかく寝ててよ!いま治すから!」
「無理です、私には((#”(仕事$$’”!%”#$%&」
強制スリープモードはどうするんだっけ…
ネットのいる書斎は、技術本とパソコンと、充電用のコンセントのみ。ここは熱がこもるし、早く取り敢えず濡れた冷やしタオルでも持ってこなくちゃ…
ドアノブに手をかけようとしたその時、
「駄目&#$すっ!」
バッとネットが来る。
「きゃあっ!?」
勢い余って、倒れ込む。ネットがふらふらなせいで、余計に。
ドアが開いてすーすーする。
「いやああごめんネットッ!!病人…?アンドロイドだから違うの!?もうわかんないっ」
ひゅうひゅう言っているネットに馬乗りになっちゃったどうしようっ。この前感情機能とかをアップデートしたせいで、汗とか出てるし、めちゃくちゃ熱い。顔が真っ赤っ赤じゃん。
「ごめんいまどくっうわあああ!?」
どこうとしても、なんだかうまく行かない。どうしようあっついし!!ああ義足だからか!?本当不便すぎる!!
--- * ---
「ネット寝てて!!」
しばらく使っていなかったソファの埃をぱんっぱんと落とし、そこにネットを寝させる。問答無用。おでこに水で濡らしてしぼったタオルを畳んで置く。
「あとはえーと、何がいるの!?バッテリー!?えーとえーとえーとっ!」
「…不安で&#(す…」
と、取り敢えずバッテリー、接続コード?どこに繋げるんだっけ?あんま使ってないから…
「接続コード4AWは…背な&#)につ’”)!」
「背中!?」
4AWは、確か一時的にオーバーヒートをしずめるやつでっ。
「8QUは’”)!」
「なんてっ」
「おな’)かで)!!6’」
「お腹!?」
ああどうしよ、なんかアンドロイドでも服をめくってコードさすのはちょっとなぁ……
「えーと、どうやってさせばいい?自分でさす?」
「え……」
--- * ---
なんやかんやあって、ネットの熱はふつうに引いた。一旦落ち着いてもらって、コードを直してノイズも除去。すっかり元通りだ。…ちょっと心配だけど。
「大丈夫、ネット…」
「はい、大丈夫です」
「…ほんと?いっつも立って寝てるからじゃない?今日わたしソファで寝るから、布団で寝なよ」
書斎に布団を敷きながら言う。晩御飯はスーパーのお惣菜を食べた。
「大丈夫です。いつも慣れてるほうがいいです」
「いや、やめときなって」
「寧ろ、インターの体調が心配です。今日だって朝食と昼食を抜いて、お惣菜だけだったでしょう」
「本当っやめときなよっ」
「…大丈夫です。ならソファで寝ます」
「やめてって!」
しばらく押し問答が続いていた。
「……あ」
「え?」
ネットが黙り込み、少しだけ顔を赤くした。その後、耳元へ顔を持ってきた。
__「一緒に寝ますか」__
「え?」
…え?
**「えぇええぇえええ!?!?」**
「いいくらあんたが最っ高で最っ愛で世界一の相棒で4年一緒に歩いてきた相棒だろうとそれはどうかと思うけどっ!?」
「だから小声なんです…私だって譲れません」
でもあんた少しだけにやってしてるじゃん。
「…ああそうっ」
---
昨日はなかなか寝付けなかった。覚めたときにはすでに「インター、朝ごはんです。ピザ風トースト、たまごサラダ、それからケーキです」と言っているネットがいた。…昨日のこと忘れたのか?
「うん…いただきまぁす…え、トースト?たまごサラダ?」
いつもなら『鮭のお茶漬けとたくあんと野菜サラダです。トーストは栄養が偏っています。たまごは1日1個…』とか言ってるじゃん。
並んでるのは紛れもなくそのメニュー。赤いケチャップが塗られ、ハムとチーズがのっているトーストと、マヨネーズで混ぜたらしいたまごサラダ。
「今日はわたし、誕生日でもなんでもないよ?それに…」
トーストを齧って、たまごサラダをたいらげる。
最後の一切れまで食べた後、濁した語尾を言った。
「ケーキ?」
「ケーキです。作りましたっ…」
なんでそんな顔赤くなってんだよ。熱?そんなわけないよね?
「…いいから食べてください。生チョコケーキです」
「え、ほんと?」
禁止される前まで月1ペースで作ってくれてた、生チョコケーキ!
「ホール作りました」
ちゃんと円柱型の生チョコケーキが、目の前にでてくる。
「わぁ、ありがと。なんで?」
「…最近禁止していた分食べてもいいだろうと判断しただけです。貴方が好む味付けの傾向を分析して、配合を計算して作りました」
生チョコケーキを切って、フォークを入れる。うわ、濃厚ででもこってりしてないでめちゃくちゃ美味しい。甘い。でも甘すぎず、苦すぎずない。下のタルト生地も、バターが効いてて美味しい
「うん、美味しかった。ありがと。あとの分は10時のおやつとかに回すね」
「はい」
「なんでそんなしてくれるの?」
沈黙が流れ、ネットの顔が悪戯っぽくなった。
「貴方にとって私は、《《最っ高で最っ愛で世界一の相棒で4年一緒に歩いてきた相棒》》だから当然ですよ」
からかうような口調。
「そんなこと言ったっけ?」
「昨日の9時13分19秒から言いました。しっかり記録されています。いつも並べ替え機能で、1番上に来るようにしています」
「…へ!?」
途端、顔がかあっと熱くなる。
追い打ちをかけるように、言う。
「いま、貴方の体温と心拍数はともに…」
「やめてやめてやめてよっ!!そんなこと言ってないよ!」
「きちんと記録されています」
すると、昨日みたいにネットは耳元に顔を近づける。
「は!?」
「わあ、すごく熱いですね。アップデートしてくれたので、体温も伝わります」
「なっ…」
アップデートしなきゃ良かった。
「さて、次は何します?なんでも良いですよ。一緒に手を繋いで公園でも歩くとか、ピクニックに行くとか、一緒にショッピングするとか。夜はどうします、また一緒に寝ます?」
「ネット、あんたいい加減にしてよっ!」
「ふふ、冗談半分です」
え、冗談半分?
「嘘です、いま一瞬だけ落胆の感情がありましたよね」
「あーあーあー!!もうネット、一体わたしの遺伝子どこにあるの!?もうやめてよっ!」
ふふっと笑う彼女の目には、確かに人間の瞳が宿っていた。
---
また寝不足だ。昨日も結局、一昨日と同じように眠った。朝はもういつも通りのきゅうりスティックとかだった。でも大丈夫、まだ残しといた生チョコケーキがある。
「あ、仕事どうしよ…」
「大丈夫です。上の人に1週間有給をもらいました。別に仕事はないだろうし」
「え、使っちゃったの!?」
「駄目でした?」
ネットが台所から生チョコケーキを出した。置いて、わたしに近づく。
「今日は一緒に買い物しません?アップデートの影響で、私も汗をかいたりするので、換えの服が必要なんですよ」
「…最近距離感バグっていない?」
「残念、今回はそう簡単には解決できないんですね」
「…服、何買うの?」
「貴方に似合うと思ったものを少し。予算は大体8000円ぐらいあります。それと、今日は服を交換していきません?」
「え、同じじゃん、殆ど」
「したいんです」
…本当、最近のネットはちょっとだけおかしい感じ。ま、いいんだけど。
書斎で各々着替える。なんか、ちょっとだけネットのきつい?
「いえ、おそらく貴方は」
言わなくて良い。
--- * ---
「手、繋ぎますか?」
「みんな見てるんだからさ…」
でも、意外と女友達どうしもしてるっぽい?
「好きにやりなよ…」
「そうですか」
右手に手が触れた。なんかめちゃくちゃ強くない?気のせいか。
ショッピングモールは意外と広く、服屋さんもあった。いつも行ってるアパレル系じゃなく、ちょっとだけ流行りのやつ。デザインがおしゃれだったはず。
「私のはいいですから、貴方のを買ってください」
「え?」
「その代わり、いま私が着ているものを貸してください。少しゆとりがあって着やすくて」
「いいよ」
試着室で着替える。
「裾のレースと白いニットが合っていますし、デニムスカートも良いです」「ブラウンのジャンパースカート、似合っています。中に着ている水色のシャツも明るくて良いと思います」「その白いシャツはシンプルなので、こういった少しワンポイントのあるネイビーのジャケットや、パンツスタイルも似合います」と、とにかく事細かに褒め始める。なんか照れる。
「素が良いので何でも似合うと思います。予算も大丈夫です」
「えー。何がいいと思う?」
「それはもう、何でも。どんな貴方のコーデも素敵です。好きになりますから、私に選択権はそれほどないです」
「そう?わたしも」
「なら、ずっと着れるものを」
そう言って、ニットは傷みやすい、スカートは引っかかりやすいと言い、最後の白いシャツとネイビーのジャケット、灰色のパンツになった。
「良かったの?自分の買わなくて」
「はい」
話題のクレープを食べた。イチゴ生クリームのやつだ。「私は食べても…」と渋るネットを説得し、チョコバナナを買った。少しだけもらった。
その後、材料調達。成分表とかを素早く見ていたから、少しだけ嬉しかった。自分のために考えてくれている気がした。
--- * ---
「今日はありがとう、楽しかった」
「次はどうしますか。外食しますか。それとも、映画鑑賞ですか」
「あ、そうだ。好きなアニメの無料配信してたから、見よう。あと、映画も見たい。明日は一緒にゆっくり過ごそう」
「そうですね。それでは私は身体を拭きますので、お風呂でも入ってきてください」
「あ、もうこんな時間?わかった、ありがと」
入浴した後、キーマカレーを食べた。ぴりっとしていて美味しかった。
個人的にネットが攻めのほうが好き。
ネットインターじゃん。