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またね
静かな四畳半の部屋。
この蕎麦を食べ終わるころにはもう次の年。
20歳になった夜、ひとり孤独に年を越すのか。
少しため息をついて、目を閉じる。
家族は私が高校の修学旅行に行っている間に勝手にアメリカへ旅行に行き、そのままそこで住み着いている。
最愛の彼もつい3か月前に病死した。
私と彼が一緒にいることは、何時だって叶わない。
高校1年の頃は、私が彼と唯一、一緒に居れた期間。
たった1年間だけだ。
私は昔のことへ記憶を飛ばす。
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「|蘿蔔《すずしろ》さん、希望の部活かいてないよ。」
そう寝ぼけなまこの私に声をかけてくれたのは、前の席の男子だった。
「はァ?部活なんてどうでもいい...。」
「それなら家にすぐ帰ることになるけど」
痛いところを突かれ、私はうぐ、と押し黙った。
「なんで、お前知って...」
「貴方の妹さんとは仲が良くて。妹さん、頭いいんですよね。」
こいつなら、私の腐った性根を叩き直せるかもしれない。
そんな一縷の望みを持ちながら、しずかに彼のハスキーな声を聴く。
「その妹さんに比べられ、貴女は妹を引き立てるための道具でしかなかったんでしょう。悔しいと思わないんですか?」
「...別に、妹のほうが頭がいいし、文武両道だし、私が引き立て役になるのは当たり前だった。頑張って取った賞も..........賞状を引き裂かれ、なかったことにされた。」
話しているだけなのに、ぼろぼろと涙が零れ落ちていく。
「...」
何も言わずに私の頭をぽんぽんと叩いてくる彼に、少しだけ興味がわいた。
「...お前の名前。」
「お前の名前はなんだ。」
そう言うと、彼は驚きに満ちた顔で苦笑いをした。
「葡萄。」
「.....ブドウ?」
「なんでブドウっ!?本名教えろおめえ!!!」
「本名?本名は...」
彼は、人差し指をそっと私の唇にあてがう。
「蘿蔔さんが言わないなら、言ってあげます。」
ガラにもなく、ドキドキしてしまって。
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あんなことも、あったっけ。
______ゴーーン、と除夜の鐘が鳴り響いた
明日、彼に新年の挨拶に行こう。
私は地図をとりだし、彼のお墓の場所を確認した。
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良いお年を.ᐟ 来年も、、今年もよろしくね.ᐟ.ᐟ