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4月2週目
(あれ…もう、来てないな、津田さん)
友奈はそう思った。この間始業式が始まって、すぐに莉々華が来ていないのだ。
「小崎さん、よね」
「はっ、い」
思わず変な声が出た。
この学校はセーラー服とリボンで、さまざまな色を選ぶことができる。プラス、ベストと上着も選ぶことができる。話しかけてきた子は水色のセーラー服に白いリボン、パリッとした上着だった。いかにも高貴な人だ。
「莉々華の席をまじまじとみて…どうしたの?」
「いえっ…その…濱口さん、津田さんのこと、知っているんですか」
「そんなに、だけど。6年生の時にたまたま出会ったくらい。莉々華、休みがちなのよね。学校が怖いとかもあるけど、体も弱いし」
「へぇ…」
(良かった。津田さん、学校が嫌いとかじゃないみたいだ)
そう友奈は思う。
「良ければ、メールアドレス教えて」
「えっ」
「嫌なら良いけど…わたしはパソコンが趣味で、莉々華とよく連絡取ってるの。莉々華を心配する子なんて、初めて見たから。莉々華に教えておこうと思って」
「本当ですか。分かりました」
友奈は付箋にささっとメールアドレスを書き、雪に渡した。そして、雪は少しだけ口角を緩めた。
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「心葉ー」
毎日のように心葉は話しかけられる。そのことに少々うんざりしていたが、誰にも言えない。
今、心葉はいろんなグループに入っている。咲良、美奈、結奈、夢華のグループと、萌歌、愛羅のペア。人間観察が趣味だという紗理奈、という人には
「あのグループはひっつくから入っててもいいんじゃない」
と言われた。正直、怪しい占い師みたいだった。
人に好かれやすい、といえばそうだ。でも、都合よく利用できる、というのもそうだった。
(加賀さんに勉強を教わりたいなぁ…。目白さんとも一度、話してみたいし。川守さん!あの人に何か、してもらいたいなあ。理衣さんと一緒に頑張ってもみたいし…あ、大西さんともしゃべってみたいな。はあ、とてもじゃないけど、咲良たちと遊ぶわけにはいかないなあ)
はあ、というため息とともに、心葉の口から哀しみがあふれる。
「美奈ってさー、ほんとおしゃれだよねっ」
「いやいや、咲良だって。夢華もさ、スクカ上位じゃん!」
スクカ、というのはスクールカーストの略語ということは心葉でもわかる。スクバがスクールバッグの略であるように。
でも、その謙遜し合っているところに、心葉がいない。そのことが心葉はどうしても気がかりで、心に引っかかった。