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脳を洗う悪魔
日替わりお題 一般人
「よぉ、お前さん。ちょっと尋ねたいことがあるんだが。」
夜、仕事からの帰り。その声がするまで辺りはしんとしていた。
肩を知らない人に叩かれ、そう、言われた。
僕は振り返った。
人かと思った。でも人じゃなかった。
宙に浮いていた。黒いし、人肌みたいなところもあるし、顔は豚みたいで、でも体は犬…みたいな。まぁ…豚とか犬っていってもデフォルメされた感じのだけど。そんな形容し難い生物だった。
………悪魔。実際にみたことはないが、多分悪魔だろう。
「………………………ひぇ、、はい……な、ななな…なんですか、⁇!」
何とも形容し難い変な生物を見てしまったからだろうか?それともただのコミュ症を発揮してしまったのかもう僕にはわからないが、変な声を発してしまった。
「そんな怖がるなよ~、ただの人間。」
「………君は,神や天使に支えてない、ごく普通の一般人だよな?」
「え、あ、、はい…そうです。そうですけど……そ、それで………何か?」
「ビンゴだ‼︎なあ人間、俺様に支えてみないか?」
「へ」
「なぁに~そんなに驚くんでない。ただ俺様に支えるだけだぞ。…………………なんなら衣食住、君が憧れるような"超能力"とでも、言うのかね。そういうものを…俺様に支えたら用意してやろう。どうだ?俺様に支えないか?」
「…ぇ、あ、支えます…はい。支えさせて…頂きます。」
超能力という言葉に釣られて言ってしまった。
「よろしい。」
悪魔が笑いながら僕の右の親指の先っちょをちょん切ってきた。
「痛…っ」
「あー、痛いかぁ。ごめんなぁ…これは俺様に支えるために必要なことなんだ」
僕の親指から出てきた血を悪魔は舐める。
「……いよっし。これで契約完了…っと。」
「君、名前は何て言うんだい?」
「…|鈴木 晴《すずき はる》です。」
「鈴木晴ねぇ…じゃあハルって呼ぶわ。」
「…ハル、こっちについて来い。」
「は、はぁ………」
「そこは"はい"だろ!」
「……はい。」
悪魔は「よろしい…」と言いながらゴミがそこらに広がっている路地裏をズカズカと進んでいった。僕は必死に走って追いかける。悪魔は、とあるカフェの裏にある引き戸のドアの前で止まった。
「…ここだ。やっとこれたんだここに。」
悪魔が喜んでいる…のか?何故なのだろうか。謎だ。僕には悪魔のことが何もわからない。言われるがままついてきてしまった。
「ここ…が、?いや、ここに…何かあるんですか?」
「嗚呼、あるさ。……楽しみだ。」
そう言いながら悪魔は扉を開いた。
「楽しみ?な…」
言葉を言い終わるのと意識が途切れるのと。どちらが先かはわからないが、僕の意識はそこで途切れた。
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目が覚◻︎た。ジ室のベッドの上◻︎僕は横たわっていた。◻︎レは、夢だっ◻︎のだろうか。
今日は休日d。別にやることもないし◻︎あ◻︎ユmであっ◻︎路地裏に行っ◻︎◻︎ようカ。カフェが氣になるし。
…目の前にノイズがある。
路地裏にあるカフェの引き戸をあける。何の変哲もない。普通のカフェ。僕の主がオーナーをしているカフェだ。
「主様、」
「…ハル。何で休日なのに来たんだ?」
「目の前にノイズがあるんです。邪魔なノイズが。だから、主様に治してほしくて。」
「そうか……。ノイズか。まだ◻︎◻︎しきれてないんだな。」
「…?」
「…とりあえず、席に座ってくれ。モンブランとコーヒーを出すから。」
メイド服を着る。たまに来るお客様に対して接客をする。主様に褒められる。いま僕は、こんな日々を過ごしている。幸せだ。あの時、支えてなかったらどんなことになってたかはいまの僕には想像がつかない。想像をしたくない。いまが、幸せだから。
引き戸を開ける。この気絶した人間の首根っこを掴み中にいれる。扉の鍵を閉めた。
目の前には色々な装置が散らばっている。
「……こいつはどうしようかな」
機械の中からこいつに合うものを選ぶ。
これだ。きっと楽しいだろうな。
この人間の頭にヘルメット型のコードが沢山繋いである機械をはめた。
俺様のことでこいつの頭を一杯にしてやろう。
人間よ、ただの一般よ。称賛したまえ。主人のことを。
また1人、俺様に支える奴が増えた。これほど嬉しいことはない。