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私は空白という文字を愛している。
空白に埋もれてみたい。
私は空白という文字を愛している。
空白は綺麗で美しい。
私は空白という文字を愛している。
空白を愛してやまない。
私は空白という文字を愛している。
空白は、私を消してくれるから。
シンプルで、安心できる、それが空白。
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ポチャ…
ポチャ…
ポツポツポツ…
綺麗な雨が降ってきた。
雨は綺麗じゃない。でも、私には綺麗に見える。
水溜りがある。私は裸足で水溜りの中に入った。
気持ちいい。嗚呼、なんて気持ちがいいんだろう。
私はしゃがんでしまった。
雨もザーザーぶりになってしまう。
寒い、冷たい、でも、何故か心はスッキリしている。
そして、雨は次第に雪となった。
雪は可愛い。
雨は綺麗。でも、雪は少し汚れている。
こんなに真っ白なのに、なんで私は雪は少し汚れていると思ってしまったのだろうか。頭の中が困惑した。
雪は積もる。
子供たちは、雪だるまを作ったり、雪うさぎを作ったり、或いは雪合戦をしたりする。
私はそれを見るのが大好きだ。
子供のはしゃいでいる顔、そして声、何もかもが癒しになるのだ。
そう思っていると、近所の子供たちが、早速外に出て遊んでいる。
今日は、雪だるまを作っていた。
みんな、一生懸命と雪玉を転がしている。
ふふっ、可愛い。
こんな些細なことが癒しになるなんて、思ってもいなかった。
木の枝が落ちている。
家の近くには、木が沢山ある。その木の枝が折れたものだろう。
新品の鉛筆ぐらいの長さ。やはり硬い。
木の枝は、少々汚れている。
何故だろう、なんで少々汚れている、と思ったんだろう。また困惑する。
そんなこと考えていると、近所の叔母さんが、私に声をかけてくれた。
叔母さん『あんた、寒いでしょ?風邪ひくよ、中に入りな。』
そう言ってくれた。私は、遠慮なく叔母さんの入って行った。
中に入ると、とても暖かい部屋だった。
暖房がついているのだろうか、ヒーターが付いている。
私は椅子に座らせてもらった。
そして、お茶と和菓子を出してもらった。
『ありがとうございます。』
というと、叔母さんも椅子を座り、
叔母さん『いえいえ、お礼なんて要らないよ。』
と、私に行った。
私は和菓子を手にし、和菓子を食べ始めた。
和菓子はお饅頭。もちもちしてて、とても美味しい。
私がお饅頭を食べていると、叔母さんはお茶を飲んでいた。
お茶は随分と暑そうだが、ご年配の方は熱いのがいいのか。私のために叔母さんが入れてもらったお茶も、湯気が出ていて、熱そうに見えた。
叔母さんはこう言った。
叔母さん『わたしゃねえ、この街に何十年もいるのじゃ。だから、ここをよく知っておる。何でも聞きなさい。』
そう言ってくれた。
叔母さんは、この街を作ったらしい。
だから、この街の歴史などをよく知っている。
学生も、この街の歴史を調べる授業があったときに、必ずこの叔母さんに聞いているそうだ。何でも知っている、この街の先生とも言われているのだ。
今、叔母さんは、外を眺めている。
叔母さんが眺めている外の方には、子供たちが雪ではしゃいでいる姿が見えた。
叔母さん『子供たちは元気に遊ぶのが一番じゃ。』
そう言って、叔母さんは洗面所へといった。
私はお饅頭を食べ終わると、お茶を飲み始めた。
もう喉がカラカラだ。
お茶を一口飲んだ。やはり熱い。でも、雪が降っている中での熱いお茶は最高だ。
そう思って、お茶を少しずつ飲んでいると、叔母さんが戻ってきた。
叔母さんの手には、小さい何かがあった。
なんだろう、と思っていると、叔母さんがその小さい何かを机に置いた。
叔母さん『これは、この街の伝説の石とも言われている石なんじゃ。』
確かに、普通の石とみえる。
私は、これが伝説なんて…と思っていた。伝説なんてないと思っていたからだ。
叔母さんは、この伝説の石というものについて、詳しく話してくれた。
叔母さん『昔、この石を持っていた少年が、畑仕事をしていたのじゃ。畑仕事をしていたんじゃが、その時に石を落としてしまってな。』
叔母さん『少年が探しているとな、石が光ったのじゃ。お陰で少年は石を見つけることができた。』
叔母さん『石は光らない、そうじゃろう?この石は、いつか幸せをもたらすと言われるようになったんじゃ。』
凄い作り話だと思った。でも、作り話にしては、凄い話だなと思った。
叔母さんは、それをしまい、お茶を新しく入れてくれた。
『ありがとうございます。』
そう感謝した。
叔母さんは、また洗面所に行ってしまった。石を片付けに行ったのだろう。
でも、不思議だなぁ。洗面所に伝説の石?
そして、私はお茶を飲みきり、一言挨拶をして、家に帰った。
ちなみに帰る時に、叔母さんが作ったハンカチももらった。
最近ハンカチがどんどんと無くなっていくから、必要としていた。こんなところでもらえるとは思ってもいなかった。
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次の日、私は朝ご飯を作っていた。
私は一人暮らし。家は一軒家。使っていない部屋もある。
朝ご飯は、定番の目玉焼きにしようとしていたが、卵が無かった。この前のオムライスで使い切ってしまったんだろう。
買いに行こうとしたが、外は吹雪だった。私は諦めて、家にあった麺を使い、朝ご飯はうどんにした。
うどんは茹でて作るだけだから、簡単だ。でも、朝から麺はちょっとなぁ…と思っていたけれど、案外良かった。
雪が積もりやすい街。吹雪が終わったら、雪かきをしないといけない。
私は、地下に倉庫にしまってあった、雪かきのスコップを玄関に置いておいた。
吹雪になるとは思っていなかったから、昼、晩ご飯の分の材料があるか心配していた。
いざ、となって探すと、カップ麺が沢山あったので、まあいいかと思い、安心した。
そしてテレビをつけた。
お笑い番組、スポーツ、ニュースなど、いろいろやっていたが、私は興味がなかったので、テレビを切った。
暇だなぁと思って、こたつに入ると、こたつの上に置いてあったみかんが気になった。
あれ、こんなみかん、いつ買ったっけ…
謎に思っていると、思い出した。この前の子供の親から貰ったのだ。
みかんを剥いて、食べるととても甘かった。
こんなに甘いみかんを食べるのは初めてかと思った。
でも、みかんを静かに一人で食べるのもなんだかなぁ…と思ったので、またテレビをつけ、つまんないお笑い番組をじぃーっと見つめるのであった。
そして、いつのまにか昼になった。
まあ、朝起きるのが遅かったから、早く昼になってもおかしくない。
昼はカップラーメンを食べることにした。それしか無かったからだ。
美味しい。カップラーメンってこんな味したんだ…と興味津々になった。
私のお仕事は、ネット上でできる簡単なお仕事だ。でも、それでもお金は沢山もらえる。
私はお金をぱぁっと使ってみたいと思った。
でも、親、さらに近所の人からも知られ、全力で止められた事がある。
使いたかった…と心の中で泣いていた記憶がある。
そしてふと窓を見ると、なんと吹雪が弱くなってきたじゃないですか。
明日は止んでほしいな。
ドンドンドン!!
え?
玄関のドアを外から叩く音がした。
何事!?と思ったので、ドアを開けてみた。
そうしたら、昨日会った叔母さんだった。
叔母さん『ごめんねえ急に。』
『いえいえ。』
叔母さん『おにぎり、握ってあげたよ、ほら、お食べ。』
そして叔母さんは、すぐに私の家を立ち去った。
でも、なんでドアを叩いてきたんだろう。インターホンあったのにな。
私は暖かいおにぎりを手で持つと、温もりが感じられた気がした。
おにぎりを一口食べてみた。美味しい。
私はおにぎりのぐが気になった。
あの叔母さんだし、梅干しかな?と思ったが、梅干しではなかった。
おにぎりの具は、この前見せてもらった石だった。
びっくりしすぎて、おにぎりを床に落とした。
なんで!?叔母さん、寝ぼけてたのかもしれない…!
と思って、叔母さんに電話をかけようとした。
でも、電話に出ない。なんなら、電話を通話するための通話するボタン知ってるのかなぁ…と電話をかける前に心配していた。
この石は大切なのに、何故おにぎりに…?
しかも洗面所にあったもの、下手におにぎりの中に入れたりはしない。
やはり意図的なのか、寝ぼけていたのか。
私は困惑した。
おにぎりから、石を取り出すと、あることに気がついた。
石が前見た時より少し、明るかったのだ。
石は光っているのか?と思うと、さらに石が明るくなったのだ。
私はびっくりして、石をおにぎりの中に戻した。
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あれから数日後、ようやく吹雪が止んだ。
早速叔母さんの家に行った。
石は、私が大切に保管していた。でも、流石にもう返そうと思った。
そして、家に着いた、と思った。
家がなかったのだ。
この前まであった家が、なかったのだ。
『え…?』
思わず声を出してしまった。
家を壊すのなら、普通何か一言言ってくれるはず、私は近所の人に叔母さんのことを聞いてみたが、
誰一人、叔母さんを知っている人はいなかった。
私は、家に戻った。
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でも、家に、叔母さんがいたのだ。
『え、叔母さん…!?なんで私の家へ…!』
と思っていると、
叔母さん?『わたしゃ、叔母さんじゃないよ。』
叔母さん?『わたしゃね、ㅤㅤㅤㅤㅤなんじゃよ。』
この時、私は初めて、空白は美しいと思った。
その後から、私は空白を愛した。
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私は空白という文字を愛している。
空白に埋もれてみたい。
私は空白という文字を愛している。
空白は綺麗で美しい。
私は空白という文字を愛している。
空白を愛してやまない。
私は空白という文字を愛している。
空白は、私を消してくれるから。
シンプルで、安心できる、それが空白。
それが…空白。
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ㅤㅤㅤㅤㅤは、まるで花びらのように散っていた。
誰も真似できない散り方に、見ていた人は驚いた。
この瞬間も、誰かが死んでいく。
ㅤㅤㅤㅤㅤは、空白を愛する、いわゆる神様だった。
石を知っていたのはㅤㅤㅤㅤㅤだけ。
この街の歴史を知っていたのも、ㅤㅤㅤㅤㅤだけ。
この街の人、建物、食べ物、全てはㅤㅤㅤㅤㅤが生み出した物だった。
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読んでいただきありがとうございました。