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淡い星屑
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昔聞いた、金平糖は星のカケラっていう話。
あの話以降、金平糖がだいすきになった。
星のカケラだなんてきっと幸せを運んできてくれる。
そう思っていつも何かあった時には金平糖を食べる。
それが私の習慣になっていた。
今日も、お母さんと喧嘩して、お弁当も持たずに家を出てきてしまった。
一番後ろのすみっこの席でカリカリと金平糖をこっそり食べる。
食べながら前をぼーっと見ると色素の薄い、明るい色のつむじが目に入った。
前の席の人は確か、栗原あゆむ。
「んー、金平糖いっこちょーだい」
いきなり振り向き、話しかけてきた。
・・・正直この金平糖をやるつもりは無い!高かったし、できるだけ手持ちの金平糖は多く持っていたい。
ぎゅっと鼻の上にしわを寄せて少し睨む。
「...ふーん。金平糖くれるんだったらこれあげたのに。」
そういって栗原が振ったのは、
瓶に詰まった、たくさんの小さな金平糖たち!!
「そ、そそそそそれは...!!!あの、鳥取の...星屑金平糖!!!」
高級品で、めったに見かけない代物。ネットで見てから、喉から手が出るほど欲しかった...!!
うぐぐと呻いてから、栗原に金平糖を一粒渡した。
「やった。瀬名さんの金平糖ゲット。」
そういうと栗原はティッシュに包んで丁重にポケットにいれた。
…変な人。
「栗原くん、その星屑金平糖、くれるんだよね?」
「うん。もちろん。」
そういって彼は私の手に瓶をすべらせた。
ふぉぉぉぉ!!これがマボロシの星屑金平糖!!!ご尊顔をお拝み出来ることがあろうとはっ。
「ありがとう、栗原くん!」
そういって私にできる最上級の笑みを浮かべた。
「栗原くん、この金平糖、どこで見つけたの?」
率直に気になったことを聞いてみた。
「あー、うちの親の友達がコレ作ってるんだ。」
製造者の友達なの!?
栗原が家のことを話しているのはものすごく珍しい。
ミステリアスなイメージで知れ渡っているんだ。
「ふ~ん...。」
「...。あはぁ」
そう言って、ヘラっと笑った彼は苦しそうに顔を歪めた。
「栗原さん?大丈夫?」
__| 《「...ごめん」》__
消え入りそうな声でなにか言って、彼は席を立って何処かへ行ってしまった。
「あ、ちょ、栗原!?」
思わず呼び捨てで言ってしまった。
ボーゼンと立ち尽くしていたら、クラスメートのささやき声が聞こえてきた。
__「え何、あの二人付き合ってんの?」__
__「茫然自失状態だぁ。逃げられたのが嫌なのかなぁ?ま、ミラはそんなことされる前に服の袖つかんじゃうけどねっ!」__
や、、違う...突然逃げられたからびっくりしてるだけだよ?
昼休みになり、私はモヤモヤとした気持ちのまま、いつものように弁当を...あぁあ!!
お弁当忘れたんだった...。
・・・購買には嫌な思い出が在るから、行きたくないんだよなぁ。
教室で途方に暮れていると、栗原が私の机の上に焼きそばパンと金平糖が乗ったメロンパン、穴が開いたところにキャンディーが流され、ステンドグラスのように見えるクッキーを置いた。
「えっ、えっ......」
あまりに急で、返事ができない。
「あげる。お弁当ないんでしょ?」
「えっ、なんでわかったの?!」
「いつもの持ってないから。」
いつもの...あ、タータンチェックの巾着!
「そんなとこまで見てるなんて...。なんか、こそばゆい、かも...。」
「あっ、あ、...ごめん、キモイよね」
!? !? !?
「どうしてそうなるの!?なんか体がむず痒いというか...っ
なんか、こう...言葉にできないけれど、キモいとかはおもってない!まったく!」
そう言うと彼は心底ほっとしたような顔で微笑んだ。
しかし、すぐにくしゃっと笑顔を潰し、顔を強張らせた。
「ごめん...ッ、俺、...。」
「栗原...?」
「おれ、瀬名さんに、うそついてた...ッ」
嘘...?
「栗原、どういうこと!?ほんとのこと言ってよ!何?お芝居でもしてるの!?」
「これは事実なんだ。俺、その金平糖、親の友達がくれたって言ったけど、本当は、必死で探し回って買ったんだ...。ごめん...っ」
「必死で探し回ったなら、自分で食べなよ!」
--- 「ちがう。俺の、自分のためじゃない!瀬名さんのためだ!」 ---
「ふぁぃぃ!?」
どういうこと!?
なぜか顔面が熱くなっていく。
--- 「瀬名|芽《めぐみ》さん、ずっと前から好きでした。おれと、付き合ってください。お願いします!!!!!」 ---
ずっとまえからすきでした
ずっと前から好きでしたァアアア!?
「う、そ...!」
ちょっと...
ナニコレ...
「なっ、、何この感情~!!!」
__「ちょっとぉぉ!!逃げないで―!!」__
そこからは必死で逃げて逃げて逃げて。
もう死に物狂いで、赤い頬でひたすら走って。
なんなのよ...っ
何、この感情,,,っ!