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みなとの過去、、
ゆうせいのマンションに着き、ドアが閉まった瞬間のことだった。ゆうせいは星太郎を背後から抱きしめ、首筋に深く顔を埋めた。「……ゆうせい?」「嫌だ。あいつの話、しないで」いつも余裕たっぷりなゆうせいの、子供のように駄々をこねる掠れた声。背中から伝わる心臓の激しい鼓動に、星太郎は胸を突かれた。ゆうせいは、あの小柄な元カレの存在に、酷く嫉妬し、怯えているのだ。星太郎はそっと身を翻し、ゆうせいの広い胸に手を当てて、その真っ直ぐな瞳を見つめた。「ちゃんと話すよ。俺と、みなとの過去のこと」リビングのソファに並んで座り、星太郎はぽつりぽつりと、過去の記憶を紐解いていった。「みなととは、高校の終わりに付き合ってたんだ。初めて男の人を好きになって、付き合えたのが嬉しくて、俺、必死だった。でも……みなとはいつも、どこか冷めてた」星太郎は、自分の膝の上で握りしめた手をそっと見つめる。「みなとはさ、小さくて可愛くて、誰からも好かれるタイプだった。だからいつも周りに人がいて、俺の優先順位はいつも最後の方。寂しくて『会いたい』って言うと、『重い』って笑われるのが怖くて、俺、ずっと物分かりの良いフリをしてたんだ」「……星太郎」ゆうせいが痛ましそうな目を向ける。「結局、みなとが別の街の大学に行くタイミングで、あっさり振られちゃった。あの時は本当にボロボロだったな。だから、さっきみなとが言ったんだよ。『昔の俺の時とは大違い』って。俺、みなとの前では、寂しがり屋の自分を出すことすらできなかったから」星太郎は、そこで言葉を区切り、ゆうせいの大きな手を包み込むように握った。「でもね、ゆうせい。お前の前だと、俺、全然平気じゃないんだ。昼間、手を繋がれてドキドキしたのも、さっき嫉妬してくれたのが嬉しかったのも、全部ゆうせいが特別だからだよ。俺が今、本当に好きなのは、ゆうせいだけ」その言葉が終わるか終わらないかのうちに、ゆうせいの腕が星太郎を強く引き寄せた。昼間のベンチの時とは違う、壊れそうなものを確かめるような、強くて熱い抱擁。「星太郎……」ゆうせいの声が、今度は愛おしさで震えていた。「俺、お前を絶対に寂しくさせない。重いなんて絶対に言わない。だから、ずっと俺の隣にいて」「うん……約束する」不安が消え去った部屋の中で、二人はどちらからともなく、深く、甘いキスを交わした。過去の傷跡を、ゆうせいの大きな体温が優しく溶かしていくようだった。