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#9
図書室の奥、棚の隙間
「……チッ、重森かよ。最悪だ」
九郎が低く舌打ちした。重森先生に見つかったら、即「保護者呼び出し」&「反省文の嵐」は確定。
中1の二人には刺激が強すぎる罰ゲームだ
「ど、どうしよう九郎! 私、足が震えて……っ」
はじめがパニックで涙目になると、九郎は「静かにしろ」とはじめの口を自分の手でそっと塞いだ。
ドン、ドン、ドン。
重森先生の足音が、隠れている棚のすぐ角まで来ている。
「おい、誰かいるのか? ……そこに隠れても無駄だぞ。出てこい」
重森の野太い声が、静かな図書室に響く。はじめは恐怖で九郎のシャツをちぎれんばかりに握りしめた。
その時、九郎がはじめの耳元で、熱い吐息混じりに囁いた。
「……いいか。俺が合図したら、反対側の窓から走れ。……俺が囮になる」
「えっ、やだ! 九郎だけ怒られるなんて——」
「……黙れ。……お前を守るのが、俺の役目だろ」
九郎ははじめの額に、コツンと自分の額をぶつけた。
昨日の「おでここっつん」より、もっと切実で、もっと男らしい熱。
九郎の瞳は、恐怖を押し殺して、はじめを真っ直ぐに見つめている。
「はじめ、……行け!」
九郎がガタッとわざと本棚を蹴って、反対方向へ走り出した。
「あ! 貴様、待てっ! 止まらんかぁー!」
重森先生の怒号と共に、足音が九郎を追って遠ざかっていく。
はじめはその隙に、震える足で反対側の非常口へ。
「……九郎……っ!」
夕暮れの校庭に飛び出したはじめ。
数分後、校門の影で息を切らして待っていると、九郎が、走ってこっちにやってきた。
「……ふぅ……っ。……なんとか、巻いたわ。」
「九郎! 大丈夫!? 怪我してない!?」
駆け寄るはじめを、九郎は力いっぱい抱きしめた。
心臓の音が、お互いの胸を通じて響き合う。
「……怖かった。……でも、お前を捕まえさせなくてよかった」
九郎はそう言うと、はじめの頬をむにゅっとつねって、いつもの意地悪な笑みを浮かべた。