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箱入り姫と6人の騎士 ⑦
赤都 乃愛羽
嫌!……るぅとくんの心臓なんでしょ……? ねえ! 戻してあげて……っ!」
退院したばかりのシェアハウス。自分の胸に手を当て、狂ったように叫ぶちぐの声がリビングに響き渡った。
「私はどうなってもいい……っ、私、こんなの望んでない! るぅとくんを返してよ!!」
あまりの衝撃に、ちぐの足の力が抜け、床に崩れ落ちる。その華奢な肩を、ななもり。が痛いほどの力で抱きしめた。
「落ち着いて、ちぐ……! 無茶言わないで。もう、戻せないんだ……」
「離して! 嫌だ、嫌だ!!」
ちぐは泣き叫び、自分の胸をかきむしろうとする。その手を、さとみところんが左右から強引に押さえつけた。
「やめろ! せっかくあいつが命がけで守った体に、傷つけるんじゃねぇ!!」
さとみの怒鳴り声は、泣いているようにも聞こえた。
「ちぐ……聞いて」
莉犬が、ちぐの目の前に膝をつき、その濡れた頬を両手で包み込む。
「るぅとくんはね、死んだんじゃないんだよ。君の中で、今も生きてるの。君が泣けばるぅとくんも悲しむし、君が笑えば、あいつの心臓は喜んで動くんだ……」
「……違う。そんなの、るぅとくんじゃない……っ」
ちぐが首を横に振るたび、ドクン、ドクンと、胸の奥で鼓動が激しく跳ねる。まるで、彼女の絶望に呼応するように。
「ちぐ。お前はもう、俺たちの『共有物』なんだよ」
ジェルが、冷え切ったちぐの背中を、這わせるように撫で上げた。
「るぅとの命を宿した、俺たちのたった一人の宝物。……お前が死ぬことは、俺たちが許さない。るぅとの心臓が、それを許さないんだ」
「……う、あぁ……っ」
ちぐは絶望に瞳を濁らせ、自分の胸の音を聞いた。
恋愛音痴だった彼女が、初めて「愛」という言葉の重みを知った瞬間。それは、一人の少年の命を食らって生き続けるという、あまりにも残酷で甘美な「呪い」の始まりだった。
「……いい子だ。もう、どこにも行かせないからね」
ななもり。が、ちぐの耳元で優しく、逃げ場を塞ぐように囁いた。