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計画
星太郎は悪戯っぽく笑い、ゆうせいの手を引いてダイニングテーブルへと導いた。チャーハンは確かに少し冷めかけていたが、二人の間にはまだ熱い空気が漂っている。
「こっちの方が美味しいよな」星太郎は一口食べてから、またゆうせいにウインクした。
「バカ……」そう言いながらも、ゆうせいの口元は自然と緩んでいた。こうした日常の何気ない瞬間が、なぜか胸をじんわりと温かくさせる。
食後、片付けを終えると二人はソファに並んで座り、窓の外に広がる夜景をぼんやり眺めた。星太郎がゆうせいの頭を自分の肩にそっと預からせると、ゆうせいは少し躊躇してから、そのまま寄りかかった。
「明日、授業ある?」星太郎の低い声が頭の上から響く。
「うん、二限から」
「なら、もう少し一緒にいていいか」
その言葉に、ゆうせいは顔を上げて星太郎を見つめた。普段はクールで、少し近寄りがたい雰囲気をまとっている彼が、今は柔らかい表情で自分を見下ろしている。そのギャップに、心臓がまた高鳴るのを感じた。
「……別に、帰れって言ってないし」
「よし」星太郎は満足そうに答え、ゆうせいの髪をそっと撫でた。
テレビの電源を入れ、何気ないバラエティ番組が流れ始める。水曜日のダウンタウンだ。しかし二人の注意は画面には向かっていなかった。肩と肩が触れ合い、時折視線が交差するたびに、またそっと手が絡み合う。
「なあ、ゆうせい」しばらくして、星太郎がまた口を開いた。
「今度の週末、デートしないか? ちゃんと計画して」
ゆうせいは目を丸くした。「デート? 星太郎が?」
「何だよ、その驚き方は」星太郎は苦笑いしながら、ゆうせいの鼻をつまんだ。「付き合ってるんだから、デートくらいするだろ。映画とか、食事とか……お前の好きなもの、何でもいい」
胸がきゅっと締め付けられるような感覚。ゆうせいは俯き、握られた星太郎の手を見つめた。「……水族館、いいかな」
「水族館?」星太郎の声に少し驚きが混じる。
「ダメ?」ゆうせいが心配そうに顔を上げると、星太郎は大きく笑った。
「いや、いいよ。意外な趣味だなって思っただけ。水族館か……悪くない。暗いし、人も多いし、適度に隠れて何かできそうだしな」
「っ! そ、そんな下心で誘ったわけじゃないんだから!」
星太郎の大笑いが部屋に響き、ゆうせいもつられて笑ってしまった。笑いが収まると、自然とまた二人の距離は縮まり、今度は優しく、深いキスを交わした。
夜が更けるにつれ、ゆうせいの瞼が次第に重くなっていく。星太郎の胸の中でうとうとし始めた時、耳元で囁くような声が聞こえた。
「泊まっていけよ。朝、送っていってやるから」
眠気に霞む意識の中で、ゆうせいは小さくうなずいた。それだけで十分だった。星太郎はそっとゆうせいを抱き上げ、寝室へと運んでいった。
ベッドに横たわり、星太郎の腕に包まれながら、ゆうせいは最後の思考を巡らせた。
一週間前までは、ただの先輩と後輩。それが今、こうして同じ布団で息を合わせている。すべてが急で、少し怖いほど現実的で──それでも、この温もりは紛れもない本物だった。
「星太郎」眠りに落ちる直前、ゆうせいがかすかに呼びかける。
「ん?」
「……ありがとう。デート、楽しみ」
星太郎は答えず、ただゆうせいの額にキスを落とした。それだけで、すべての気持ちが伝わった。
窓の外、神戸の夜はまだまだ深く、二人だけの小さな世界は温もりに満ちていた。明日も、その次の日も、この先の長い日々も、きっとこうして続いていくのだろう──ゆうせいはそう信じて、星太郎の鼓動を子守歌に、深い眠りへと沈んでいった。