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部隊スペードの決闘 第5話
林沢レオ
前回のあらすじ
藤浪は日犯団の塚本からJCIPAが買収されかけていること、宮城と大葉が狙われていることを知る。その頃2人は、任務に向かわされているところだった。
大葉さんは車に乗り込んだ後一言も喋らなかった。退院後初の仕事。かつ先日初めて会った人間と共にである。大葉さんは間違いなく今日の仕事がストレスに感じているだろう。
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「着いたよ。行こうか」
大葉さんが口を開いた。やはり顔は能面のように冷たく、生きた人間の感じがしない。
今日のターゲットはある大企業の社長。僕らは取引先の人間ということで彼と密会する、という設定。ビルは全面閉館らしいが、裏口から入れば僕らは入れる。
僕らはビルに入り、エレベーターに乗り込んだ。
8階のボタンを押す。そこで僕の携帯が鳴った。
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「もしもし宮城くん!今どこ!」
喫茶店を飛び出し、電話をかけた。
「どこって…例のビルのエレベーターですけど」
「今すぐ降りろ!逃げるんだ!」
死んでほしくない。ただでさえ大葉ちゃんの件は自分のミスなのに。また誰かが怪我をする。誰かが死ぬ。
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エレベーターから降り、とりあえず階段へ向かった。1階へ駆け降りる。大葉さんはこの時も冷たい顔をしていた。
車へ乗り込み、今度はこちらから藤浪さんへ電話を入れる。
「もしもし、もうビルから出て車です。どこに向かえばいいですか?」
「よかった…じゃあとりあえず木村ちゃんのとこへ。気をつけて!」
なぜ藤浪さんはあんなに焦って僕らを止めていたのだろう。考えながら赤信号を待っていると、
「つけてきてる」
大葉さんがそう呟いた。
「へ?」
「つけてきてんの!後ろの車!黄色のあれ!!」
そういうと大葉さんは助手席から運転席へ飛び移って僕の膝へ乗り、猛スピードで右折した。
「ちょっと!どこ行くんですか!?そっちじゃないでしょ!?」
「当たり前でしょ!場所知られるわけにはいかないんだから!」
大葉さんは鬼の顔をしながら運転していた。彼女は黄色い車を撒けるならなんでもいいらしい。
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撒いてからだいぶ経った後も車はとんでもない速さで走っていたが、ようやく木村さんのところへ着いた。
「すみません、大葉さん」
「なんで謝ってんの、あんたの所為じゃないよ」
大葉さんはそう言って笑ってくれた。今朝の笑顔とは随分と弱々しい笑顔だった。