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第五話
「一緒に帰らない?」
「……え?」
いつの間にか外が暗くなり、帰る準備をしていた時だった。
「えっと……私に言ってるの?」
「いや、潮しかいないでしょ」
けらけらと笑ってそういった彼。まるであの時みたいだ。
たしか状況も今と同じだったろうか。
なんて、考えている暇などない。
「あの、私たち反対方向……」
「それはそうだけど……門まで一緒に行こうよ」
……どうしよう。誘われたのは素直に嬉しい。
が、今日はどうしてもやらなければいけないことがあるのだ。私……の将来のため。
「……ごめん、今日先生に呼ばれてて。遅くなると思うから」
「全然待つけど」
「ありがと、けど大丈夫」
彼はまだ納得いかない感じだったが、渋々頷いた。
……犬みたいでなんだか可愛い。これを見られるのは私だけなのだろうか、と思うとちょっとした優越感に満たされる。
「それじゃあ、またね」
「うん、また明日」
さて、準備はできた。