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サンヌキカノ〜兄弟の恐怖〜
沙濘
サンヌキカノ―
その都市伝説が引き起こした兄弟の悲劇とは―
ぜひお楽しみください―
―沙濘―
「なあなあ、ちょっと来てくれよ。窓に、猿みたいなやつがいるんだけど」
「はぁ?見間違いだろ。とりあえず顔ぐらい洗え」
「ちょっと待ってくれよ。どう見ても変だって。」
「もしかして―」
ここはリビング。庭には、燦々と太陽の光を浴びて輝いているリラがある。
そして、まるでリラを隠すかのように窓に張り付いている…
猿と人間の中間みたいなやつ。
兄の真司とは違い、オカルトが大好きな僕には、《《それ》》がなにかわかる。
そう―
サンヌキカノの来訪を知らせる者だ。
猿は少し笑い、近くに何かを置きながら言った。
『サンヌキカノというのが来るから、来たらこれを見せろ。自分で取ったと言えば
向こうもくれるから、あとは庭に埋めてしまえ』
言い終えるや否や、そのまま素早い動作で塀を越えていった。
猿がいたところには、人間の奥歯のようなものが落ちていた。
---
--- 3日後 ---
---
とうとうやってきた。サンヌキカノが。
腰の曲がった老婆だった。
僕が引き出しから歯を取り出そうとしたら―
真司が奪い取った。そしてサンヌキカノに言った。
「《《俺が》》取りました!」
「では私からもあげよう。君は?」
サンヌキカノがいう。と言っても歯は真司が取ったものしかない。
黙っていると、「では」という声がして、僕の歯が飛んでいった。
だが、真司は、俺を助けようともせず、庭の裏口から出ていった。
そこで、僕の意識は途切れた。
---
--- 真司 ---
---
はぁ、全く。弟のオカルトっぷりには狂気じみたところがあったが、本当に
やってくるとは…サンヌキカノが。
咄嗟に歯を奪い取った結果、弟を亡くした。
俺は、弟を犠牲にして生き残ったのだ。
帰ってきた頃には、弟は出血多量で死んでいた。
僕は弟の歯を埋めた。
弟が大好きだったリラの花の前に。
サンヌキカノからもらった歯は、毒がある彼岸花の前に埋めておいた。
そして葬儀も終わり、喪も明けたある日、
俺はぼーっと道を歩いていた。
すると、弟の声が聞こえた。
「真司、前!」
なんと、前から大型トラックが来ていたのだ。
弟のおかげで助かった。
俺はあんなにひどいことをしたのに。
その晩、布団の中で俺はあることに気が付き、骨の髄まで震え上がった―
さて、最後の意味は分かりましたか?
都市伝説も恨みも、どちらも恐ろしいですね。
ちなみにですが、リラの花の花言葉には、「友情」などとありますが、
結婚ができないという花言葉もあるそうです。
弟が残した恨みかもしれませんね。
私は何者かって?急ですね。それは…
―沙濘、またの名をサンヌキカノ―