熱にぼやけた視界は

「ぅ"ー…あたまいたぁい、」 「だから休むんですかって…言ったはずなんですけど、」 ム、っと効果音が付きそうな顔で、焦凍くんが言う。 そう、ことの始まりは四時間ほど前… 「うーん、なんか体だるくて」 「休むんですか？」 「いや、流石にそれほどでは無いと思うんだけどね…」 朝からどうにも体が重くて、体調でも崩したんだろうと思っていた。 まぁもちろん焦凍くんにはお見通しなわけで、朝から空気も重かった。 「でも、ホークスさん…そうやって倒れるんじゃ無いんですか、」 「いやぁ、それもそうなんだよなぁ…でもまぁ、ただの風邪だったとして 無理そうだったらちゃんと帰ってくるよ」 「…」 「ほんとだよ？」 「それならいいんですけど…」 まだ何か不服そう。心配してくれてるんだな…優しい。 ほっこりしていると、「あっ、」とまた焦凍くんが声を上げた。 「え、何」 「倒れる前に連絡してください」 「え、倒れる時にってこと？ｗ」 「はい、それなら俺も助けに行けるんで」 本人は至って真剣なんだろう。 でも…倒れる時に連絡、は…ちょっと無理かもな…っｗ 笑いをこらえながら、そんな焦凍くんの言葉に頷いた。 そこから一時間後。 俺は空の上で、一人…自分の体調不良と戦っていた。 「やばい…気持ち悪っ、頭いたっ、そんであっつ…熱中症の代表でしょこれ。」 これは絶対に熱中症だ。元々体調悪い中灼熱の外で飛び回ってたんだもんな。 そりゃこうなる。 妙に納得しながら、眉間に手を当てる。 なんか熱いかも…うーん、手袋越しじゃわかんない。 とりあえず…焦凍くんに連絡しとこっかな、 倒れる前に、って言ってたし。 そう思って、俺は近くのマンションの屋上に降り立った。 LINE♪ 「焦凍くん」＞ ＜「はい」 ＜「なんですか」 「今授業中？」＞ ＜「休み時間です」 「そっか、よかった」＞ 「ごめん、ちょっと体調悪いかも」＞ ＜「え」 ＜「ちょっと待ってください先生に行ってから行きます」 ＜「言ってから」 「え、いや今から授業でしょ？」＞ 「無理しなくていいよ」＞ ＜「いや大丈夫です」 ＜「えっと、近くにコンビニとかないですか」 ＜「どこでもいいので入って、位置情報お願いします」 「え、ほんとにいいって」＞ 位置情報の話から既読が付かなくなった。 誤字ってたし、結構焦ってるんだろうな… あー、ごめんイレイザーヘッド… しゅん、としながら、俺はちょうどすぐそこにあったショッピングモールに 入った。 スマホをいじって、位置情報のスクショを送ったところで、俺の意識は途切れる。 今思えば、あの時なんで周りの人に声を掛けられなかったんだろう… …と、いうわけです。 あの後焦凍くんの声で目が覚めたころには、俺はもうベッドの上にいた。 すごい、全然気づかなかった。流石ひよっこヒーロー…いや、ただただ俺が 気ぃ失ってたのかな…？まぁどっちでもいい。結局焦凍くんがすごいって ことに変わりはないんだから。 「だから休むんですかって…言ったはずなんですけど、」 「うーん、大人しく休めばよかったよ…はは、」 そんな乾いた笑みを零す間さえ、頭には激痛が走る。 はぁ…やっぱ熱中症かなぁ、まじかっこわる… 「…焦凍くん」 「はい」 「ありがと」 「はい？なんかそんなことこないだも言ってた気が」(はくの日小説引用：現在非公開) 「ふふ、そのくらい感謝してるってこと」 「はぁ…そうですか、 …じゃあ、」 そう声色を変えた焦凍くん。 かと思えば、「目瞑ってください」とか言い出した。 いったい何を… ーーちゅっ。 「…っえ」 「俺も、いつもありがとうございます」 そう言って、ふわっ、と笑う。 あぁだめだ…これ。 「えっ、ちょ、ホークスさんっ…！？」 俺はそんな焦凍くんの焦った顔を最後に、眠りについた。 この状況で寝れるのも、逆に才能だと思っている。