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第3章:凍てつく記憶《ループスの封印》
星環領域《セレスティア》の北端―― そこには、永遠に雪が降り続ける祠があった。 氷に覆われたその地は、星霊ループスが封印された場所。 忠義の星霊は、怒りと悲しみの記憶に囚われていた。
無名は、雪を踏みしめながら祠へと向かっていた。 彼の足跡はすぐに雪に消え、風が笑うように吹いていた。 だが、彼の瞳は真っ直ぐに祠を見据えていた。
「寒いね。 でも、あの人の心のほうが、もっと冷たいかも」
彼は、祠の前に立ち、手をかざした。 氷が震え、星霊の声が響いた。
「私は、忠義の星霊。 主を守るために、牙を振るった。 だが、主は空白に飲まれ、私は怒りに囚われた。 氷は、私の記憶を封じた。 あなたは、私の怒りを受け止められるか?」
無名は、静かに笑った。 その笑顔は、雪のように儚く、優しかった。
「怒っていいよ。 大切なものを失ったら、誰だって吠える。 でも、吠えるだけじゃ、星には届かない。 あなたの声を、俺が届けるよ」
その言葉に、氷が砕けた。 祠が光を放ち、狼の咆哮が空に響いた。
無名の手が輝き、氷の魔法陣が展開される。 狼の幻影が現れ、敵の魔力を凍てつかせる。
ループス・ハウリング: 敵全体に沈黙+魔力低下。 氷の咆哮が、怒りを浄化する。
雪が舞い、空が震え、封印が解かれていく。 ループス座が、夜空に戻る。 その輝きは、忠義と赦しの光だった。
「あなたの優しさが、私の怒りを溶かした。 忠義は、痛みを抱えるもの。 あなたたちの旅は、記憶を癒すもの。 次に待つ星霊は、理を超えた者。 彼は、魔法を構築する者。 あなたの知性が、彼の封印を解く鍵となる」
無名は、雪の祠を後にした。 空には三つの星座が輝いていた。 だが、次に向かうのは――風の塔。 そこには、封印された星霊《リブラ(てんびん座)》が眠っている。