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スパイリーマンのモーニングルーティン
Numa Goshiki
白い髪に青い目。奴に会ったが最後、
六ヶ所の銃創が残り、死ぬ。
《こはく》
宵の琥珀。彼はそう呼ばれている。
《はんまとら》
宵の琥珀こと範馬寅は、現在も闇の中にて、
暗躍している。
「今日も、仕事頑張るか・・・・・・」
ワシ、ピッチピチの六十四歳。
朝三時起床、朝ご飯を食べながら
時事を追う。
昨日の事から一年以上前の事まで様々な事を
覚えていく。ワシはピッチピチの六十四歳
だから、十五分もあれば余裕で百以上の物事を
暗記できる。そこいらの若者には負けんぞ。
歯を磨きながら銃の手入れを行い、
朝日を見ながらヨガをする。
「シャンティ シャンティ シャンティ」
健康第一。心身の手入れはスパイたるもの
絶対に欠かせない。それを思い知ったのは、
三十四年と七ヶ月四日前だったかな・・・・・・
あの頃のワシは若気の至りでちょけが
酷かった。それは、ヤクザたちの臓器売買の
現場へ行った時、面白半分で正座で
スナイパーを構えた時だった。スコープに
目を当て、あとは引き金を引くだけという
その時、ふくらはぎに一筋縄を張ったような
痛みが走った。長い時間半分土下座状態で
構えていたせいで、攣ってしまった。
それを機に、任務前のストレッチは怠らない
ようにしている。
そうだ。今日の任務は久しぶりに
それで行こう。三十四年と七ヶ月四日ぶりに
正座でスナイプしよう。楽しみだなー。
朝五時。ワシ、出っっっ勤っ!!
今日の任務はヤクザを一組殲滅すること。
本当は近距離の拳銃を持っていくのが正解
だけど、やりたいものはやりたいのだから
遠距離狙撃をする。
ワシは無邪気な六十四歳。
雑居ビルの屋上からヤクザの屋敷の周りを
見回っている構成員を撃つ。六発。
コスパは悪いけど六は好きな数字だから、
しっかりと相手には敬意を持ち、
好きをぶつける。
それから正座することは忘れない。
今日の一大イベントだから。
正座をしてスコープを覗き込むために
体が前に行き、更に顔を上げるから首が
痛い。しばらく頑張って、屋敷の中から
人が全員出てきたところで殲滅完了。
さすがにスナイパーだけは無理があるから、
さっき屋敷へちょいとお邪魔して
時限爆弾を放り込んできた。
それを見つけたからだろう。
ドカーンッッ
おーー。ちょっと早めの花火が見れたな。
これはこれは豊作だ。ワシ、満足。
「あ゛ぁ゛っ」
首が今更攣った。痛い痛い痛い痛いっ
今度からもっと首のストレッチを・・・・・・
ふうっ。首を伸ばしてなんとか治した。
殲滅した後始末はワシの所属する組織の
誰かに任せて、ティータイムにするか。
朝六時半。
ワシ、ティータイム。ベランダで優雅に
紅茶をすする。んーっ、うまい。
パンっ
銃声が響いた。はぁ、ワシの優雅なティー
タイムを邪魔しよって。発射先を見ると、
黒い服を着た男が家の前に立っている。
しょうがない、ワシもお返しをやろう。
懐から拳銃をだす。そして・・・・・・
女の子がやったら妖艶すぎて、誰もが鼻血を
出してしまうポーズっ。
なんだ、その目は。
笑ったっていいじゃないのよ。
こっちが恥ずかしくなってきちゃったわよ。
そのポーズのまま、発砲。六発。
さて、優雅なティータイムの続きを。
ワシ、なんでもできちゃう六十四歳。
もちろん本気を出せば体型だって顔だって、声だって自由自在に変えられる。
でも、遊び心は大切なんだよ。
さて、八時には日本から紛争地のど真ん中へ
飛び立つから、支度をしないとな。
ワシ、スパイやってる六十四歳。
夕飯はピザがいい。