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サプライズの代償 ―止まったままの時計―
月
「ひかるくん?」その名前を呼んだのは、数年ぶりだった。街の雑踏の中、あかりは「彼」を見つける。昔、いつも隣で笑っていたはずの面影はあるけれど、今の彼はどこか遠く、冷たい空気を纏っている。勇気を出して声をかけるあかり。「ねえ、……久しぶり」彼は一瞬だけ足を止める。けれど、その瞳にあかりを懐かしむ色はなく、ただ素っ気なく「……ああ」とだけ答えて視線を逸らした。あかりは、なぜ彼がそんな風に変わってしまったのか、ショックで立ち尽くす。
あかりは諦めきれず、二人の思い出の場所である公園へ彼を呼び出すメッセージを送る。ベンチで彼を待つ間、あかりは「二人の時間が止まってしまったあの日」を思い出す。当時、あかりは光を喜ばせたくて、彼の親友とこっそりサプライズの相談をしていた。しかし、二人で密談している様子を光に見られてしまい、そこから光の態度は一変。そのまま、説明する機会もないまま疎遠になっていたのだ。
夕暮れの公園。もう来ないかもしれないと思ったその時、光が現れる。今の彼はまだ冷たい態度を装っているが、あかりは逃げずに彼に向き合う。「あの日、本当は何を見てたの?」あかりの真っ直ぐな問いに、光はついに重い口を開く。「お前が、あいつのこと好きだって……そう思ったんだ」光は、あかりが自分ではない誰かを好きになったと思い込み、傷つくのが怖くて自分から壁を作っていたことを打ち明けた。あかりは「光くんを喜ばせたかっただけ」という真実を伝える。自分のためにあかりが動いていたことを知り、光は目を見開いた。光の冷たい仮面が崩れ、数年分の後悔と愛おしさが溢れ出す。二人の間の誤解が解け、止まっていた時間が再び動き出す。それは「幼馴染」ではなく、一人の「男と女」として新しい関係を築き始める一歩となったのであった。