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恋に堕ちて。
わたしは、小学校のはるきくんがすきになりました。
はるきくんはね、すっごく足がはやくて、かっこいいんだよ。それに、やさしいの。
だから、すきっていってきたんだけど、はるきくんは、ごめんね、って。
かなしかった。
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3年生になっても、はるきくんはわたしのことをすきにならない。
でも、お友だちでいられるから、ちょっとだけうれしい。
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5年生になってから、男子と女子の間には見えない“かべ”ができた。
少し前まで男子と女子が交ざって遊んでたのに、今は男子と女子が2人でいればすぐカップル呼ばわりされる。
周りでは少しづつカノジョになる女子も増えてきたけど、そのにわかカノジョ達よりもわたしの方がずっと愛が長くて深い。1年生の頃からずっと春樹くんのことが好きだったんだから。
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中学校に入ってしばらく経った。
私はまだ春樹くんのことが大好き。だから、そろそろ春樹くんも私の思いに応えてくれるはず。
そう思っていた。
雪の降る帰り道、だったかな。
春樹くんと学年で1番の美人、佳奈が恋人つなぎしながら歩いていた。
なんで?あの子、中学校に入って初めて会ったはずなのに。
もしも習い事が一緒だったりネッ友だったとしても、さすがに小1からずっと好きな私にとってはにわかも同然。
思い立ったらすぐ行動。
5年前調べておいた当時の習い事の名簿には佳奈の名前はどこにもなかった。
そこで、冬休みを1週間使って春樹くんの習い事にこっそりついていった。まずは5年前も通っていたスイミングスクール。次に、学習塾。剣道のお稽古。どこにも佳奈の姿はない。
少年サッカーの時、私は男子更衣室に入り、春樹くんのスマホを鞄から取り出した。4桁の暗証番号が必要らしい。そのために私は、春樹くんと佳奈の生年月日、付き合った日、その他もろもろの数字を把握している。
佳奈の誕生日がヒットした。会話は今年の秋から始まっている。
私は6年近く待ってたのに、他の|女《こ》はこの程度の期間で好きになるの?許せない。
怒りが最頂点に達した。
神様、もう1回やり直させてください。そしたら私は、
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目を覚ましたら、私はベビーベッドの中にいた。あ、私、生まれ変わったのか。
佳奈のお母さんが私を見た。
「目が覚めた?佳奈」
その言葉を聞いて、私が誰に転生したのか、そしてその未来を察した。
笑いが止まらなかった。
やっと叶った。
今度こそ、春樹くんと結ばれる。
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まだ幼稚園の春樹くんが遊んでいるのを見つけた。
私は、春樹くんが離れた隙に、その鞄からハンカチを抜き取った。
しばらく待って、そのことに気づいたあたりで、そのハンカチを持って彼の前まで歩み出た。
「これ、落としたでしょ?どうぞ」
「あ……ありがとう」
「お名前、なんていうの?」
「はるき」
「春樹くんっていうの。私は佳奈」
「かなちゃん。よろしくね」
春樹くんは笑った。
前世の私が知らない、幼い春樹くん。
好きだよ。
私も笑った。
「よろしくね!」
春樹くんは、ハッピーエンドは、もう私のもの。
小説一覧見てたら1番昔に埋まってたやつを仕上げてUP。