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Episode6.人間不信のお嬢様が修学旅行の準備をする話。
「えーと、じゃあまず実行委員を決めまーす」
えーただいま修学旅行の準備中です。
「帰りたい…」
「頑張ってね」
「遥花ぁ…」
遥花に頼み込まれてきています。正直つらい。
「はいはいはいっあたしはぁ宝生さんがいいと思いますぅ!」
「うわあ来たね」
「ごめんなさい、広報部が忙しくて…だから私は海音寺さんを推薦します」
うああああああああこのためだったのね、遥花ひどい…
「あ、う、」
みんなの視線が怖い。みんなヒソヒソと言っている。
「海音寺さんだー」
「やってくれないかなー」
こういうプレッシャーは嫌いだ。だからいつもこんな時は権力と気迫でやり過ごしてきた。遥花に言われてもそれはできない。
「やらn…」
「えーじゃあさじゃあさ、男子は伊織でどお?伊織もいいっしょ?」
「まあ。」
人の発言をぶった切るなんて神経がどうかしてるんじゃなかろうか。
「えーと、では男子は京極さん、女子は海音寺さんでいいですか?」
「〜〜〜〜っ!!!!!!!」
勝ち誇った笑みを浮かべる遥花と彼方が視界に映る。
(こいつら絶対共犯だ)
と、まあこうして私は実行委員になってしまった。よしサボろ…
「サボろうとか思わないでね。せめてこれだけでもやって」
「遥花、絶交しよう」
「や・だ☆」
「…」
うん、遥花と絶交してもこっちが損するだけだ。諦めよう。
「ではこのあとは実行委員に引き継ぎます。」
「…まず前提として、この学校ではクラスごとに好きな場所にいけます。どこに行きたいですか。ちなみに国内限定です。」
伊織が話すだけで女子の黄色い歓声が上がる。たしかにきれいな声だけど、そんなにいいだろうか。
「確かに声は好みな方だけどさ…」
「ん?なんか言った?」
「あ…いや何も」
「あ、そう」
「行きたい所ある人。」
私が話しただけで男女ともに黄色い声が上がる。今度こそ訳がわからない。
「はいはいはいっ京都がいいでぇす!」
さっきからこいつはうるさい。文のことである。
「俺は沖縄に行きたいな」
「俺北海道!」
「他、ありますか?」
あくまで淡々と、仕事を進める。公務だと思えばいい。
「ないでーす」
「では、この3つのどれがいいか、投票します。挙手してください。」
伊織も淡々と進めていく。
「京都に行きたい人。」
5人。
「沖縄に行きたい人。」
20人。
「北海道に行きたい人。」
10人。
「じゃあ沖縄でいいですか?」
「はい」
「次、行動班を決めます。」
「はいはい行動班ってなんですか?」
「行動班は文字通り班行動を一緒にする班です。えー決め方は、自由です!ただ、男女均等な5~6人にしてください」
自由に動いて好きな人と組むことができる。他人が苦手な私にはうってつけのシステムである。
「もちろん私と組んでくれるよね?」
遥花に近寄る。
「もちろん」
やった。もうこれで平和は保たれる。
「じゃああとは誰にしようか。」
「ねえねえ、人いないなら俺たちと組まない?」
げ、文もいるのか…
「いいよ〜」
「海音寺さんは?」
「別に」
イヤだけどね、他の人と組むよりゃマシってもんだよねってこと。
「じゃあ明日からは細かい行き先とか決めてもらうぞ〜」
「はーい」
チャイムが鳴る。
「10分後HRやるぞ〜」
私は席を立って非常階段へと歩く。3人が転校してきてから、授業に出る回数が増えている気がする。減らしたい。