公開中
よるのあめ
--- 「ひとりになりたい」 ---
そう思いながら雨の中、真夜中の住宅街を歩く。 紺色の傘をさして。あてもなく。
別に誰かと喧嘩しただとか勉強か嫌になったとかじゃないけど、たまに一人になりたくなる。誰の目にもつかない場所に行きたい。ただそれだけ。
雨のせいで寒いのかまた別の何かか《《孤独感》》というのだろうか、それが次々と襲って来るそんな感覚。どうにかしたくてただただ歩く。
傘に叩きつけられる雨の音、靴の音、明るいのは街灯の明かりだけ、後は真っ暗。この感覚がなんだか気分を落ち着かせてくれた気がする。
ひたすら歩いてふとスマホの時計を見る。どうやら日付が変わった直後のようだった。自分はどこに行きたいのか、雨はいつまで降り続けるのか、そんなことも考えつつまた歩き始める。
そういえば家は大丈夫だろうか。誰も起こさないように出てきたつもりだか、バレていないだろうか。バレてたら結構困る。かれこれ10回以上こんな風に歩いている日があるのだか、これまでに5回バレているのだ。何故バレる。訳が分からない。今度バレたら盛大に怒られるかもしれない。
ふと、ポケットに手を突っ込んでみると、飴が入っていた。包みを開くと丸い飴玉。口の中に放りこむとみたらし団子のタレみたいな味がする。 カンロ飴だった。ちょっと溶けているが気にしたら終わりだ。気にしない。
雨も小降りになってきてそろそろ家に帰りたくなってきた。歩いてきた道を引き返す。結構な距離を歩いて来てしまったようだ。
飴玉を転がしつつスケジュールを立てる。
少し寝て起きてから何をしようか。
どうせ休みだから片付けをしたり読んでいない小説や漫画を読むことにしようか、それとも…
抱えていた《《孤独感》》はどこへやら、今は少しでも前を向けたらな、なんて思っている自分がいる。
雨と飴
どんな〈あめ〉が好きですか