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ちょっとのトラウマ
この馬鹿主がああああああああああああああ大遅刻してえええええええええええええええええええええごめんなさいいいいいいいい
その日を境に、水曜の六限は黒名くんと会っていた。それだけだと怪しいから、たまにほかの日にも会ってたけど。他愛のない、普通の話。今日のパンがおいしかったとか、この歌が好きとか。こんな話は世一とりんりんとしかできなかった。こうやって後輩と話せるのが嬉しかった。とある日、黒名くんはこんな質問をしてきた。「瑠歌は、サッカーもうやらないのか?」返答に困った。「うーん、やりたいと思うこともあるよ。でもね、ボールに触れない。無理。怖くなっちゃってさ。」「トラウマか?」「うん。七年前のことだけどね。」私は目を閉じるとその日のことを話し始めた。
あの日は、秋だった。秋トーナメント決勝の日。私は少年サッカーチームのキャプテンとしてボールを持ってフィールドを走っていた。一枚、二枚とディフェンスを抜いた。最後の一枚も抜いて、ゴールキーパーと一対一。三メーター横に仲間はいた。出せって騒いでたからよく覚えてる。でも嫌だった。ゴールのためだけに走ってきたんだから。一番美味しいところをやるもんかと右足を振り切った。ボールは弧を描きながらゴールネットに突き刺さる。それと同時に試合終了の合図があった。4対5。最後の最後に点を決めた。私たちのチームが勝ったの。でもみんなそんないい顔をしてなかった。理由は簡単。全部私が点を決めたから。誰がどう見てもこのフィールドの王者は唯一の女子である私。それが気に食わなかったらしい。試合後の話の時に、コーチは私に言ったんだ。「君はこのチームにいないほうがいい」って「ワンフォーオールが大事だ」って。その瞬間、私はこう言ってた。「それで世界に通じるとでも思いで?」と。「海外サッカーなんて中心人物とその他。たった一人のヒーローで成り立ってる。そのヒーローになるためにみんなが努力してるのでは?正直、日本サッカーなんてスポーツマンシップ以外は二流、もしくはそれ以下です。」その頃はエゴイズムなんて言葉知らないからね。「ちょっと悪い言い方かもしれないけど、フィールド上では自己中心的にならないと。優勝どころか順位は下がるばかりですよ。それともサッカーは趣味で、本当は優勝なんて目指してないとおっしゃりたいのですか?ほかの方法で金なんて集められるから。金さえあればいいわけではないんですよ。命かけてんですよ彼らは。」そのあとが最悪だった。メンバーに殴られたんだ。コーチにも一発お見舞いされた。母さんはその少し後にきて、泣いてる私を見てすごく怒ってた。何でうちの子が努力したのを認めないんだって。コーチはこう言ったよ。日本的なサッカーじゃないってね。でもね、母さんすごくて。私が学校から帰ったら毎日河川敷とか近くの広場で有名サッカー選手のゴールとか、ドリブルとかを真似して、毎日笑顔で今日はこんな練習したんだよって言ってるって反論したの。コーチびっくりだよ。だってチームにサッカーを習いに来てるんじゃなくて、披露する場所。独学でやってるって知っちゃったんだもん。こんなん誰もやってない。その日からコーチもチームメイトも私を腫物のような扱いをした。反吐が出そうになったよ。それからボールを触ろうとすると、足の力が抜けちゃうんだ。黒名くんは誰も向けてくれなかった目を向けてくれた。哀れみでも、同情でも、共感でもない。何て言えばいいか探している。それでも私を見つめ続けてくれていた。嬉しかった。私の話を聞いた人は、たいてい私を見世物にするかのような目で見てくるから。泣きそうになって空に目を移すと、あの日と同じような青空が広がっていた。
書き方変えました!これからこれで行きます。