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ワン・デイ恋人
ハイリスクレッド
ショート・ショートストーリー✍24
☆
"One-day only" 1日限定
sweetheart 恋人同士
or
恋人未満…?
男の名は、真矢(しんや)
女の名は、真弓(まゆみ)
☆
二人が出会ったのはその年の5月、ゴールデンウィーク明けの日だった。
その年の3月、真矢の職場の先輩ひとりと同僚が2人、合わせて3人の退職があった。
真矢の職場は地元では名の通ったデザイン会社である。
6人でワン・チームの構成で、3チームがありそれぞれの案件を受け持ちたたき台から仕上げ処理までしていくのだが、退職した3人は真矢が所属するチームだった。
そんな訳で現職は、真矢に、Aさん、Bさんの3人、しかも退職した先輩はチームリーダーだったのだ。
4月になり新卒採用された新人が2人配属はされたのだが、新人2人はまったくのデザイン素人だったため、Aさんが新人のひとりCさんをティーチングしながら自分のワークメニューをこなし、Bさんが新人のひとりDさんをティーチングしながら自分のワークメニューをこなし、真矢は自分のワークメニューをこなしながらすべての漏れてきたワークメニューをもこなしていた。
5月になりゴールデンウィーク明けの日だった。
真弓が新人として真矢達のチームに配属されてきた、6人ワン・チームとして人数だけはこれで揃えられた訳である。
真矢から真弓への第一印象を表すなら、ズギューン!!
一目惚れした。
真弓から真矢への第一印象を表すなら、キューン!!
一目惚れしちゃった。
真弓もデザイン素人だったため、真矢は真弓をティーチングしながら自分のワークメニューをこなしながらすべての漏れてきたワークメニューをもこなす事となった。
そんな状況で、怒涛の様に毎日が過ぎていく。
真弓は健気に懸命に真矢からのティーチングに応え、微力ながらも常に寄り添った。
そんな2人、真弓と真矢を同じチームメンバーも他のチームメンバー達も仲睦まじく見ていた。
2人の寄り添い方は職場の同僚とか先輩と後輩とかの仲を越えているのではと見えていた。
同僚以上、先輩後輩以上、友達以上…もしかして、恋人同士なのかとも…
新人の3人、Cさん、Dさん、真弓で食事をする機会を得た時である。
徐ろに、Dさんが真弓に問いかけた。
「真弓さんは、真矢さんとお付き合いされてるの?」
すると真弓は嬉しそうに微笑みながら答える。
「いえ、お付き合いしてないわ、私、彼がいるから」
え!えぇ!!
DさんとCさんは同時に声を出していた。
さらに真弓が続ける。
「それに真矢さんには、彼女さんいるしね」
え!えぇ!!
DさんとCさんは再び同時に声を出した。
そう、真弓も真矢も公表はしてなかったがそれぞれに彼氏、彼女、恋人がいたのだった。
Cさんが呟いた。
「そうだったのね真弓さんと真矢さん、あんなに仲睦まじいのになんで恋人同士にならないんだろう不思議に思ってたから」
でも、と真弓が続ける。
「真矢さんの事、好きよ。同僚としても先輩としても、異性として男性として大好きよ」
それって…Cさんが続ける。
「真矢さんはわかってるのかな?」
真弓が答える。
「わかってくれていると思うは、私の気持ち」
じゃぁ、Dさんが呟く。
「真矢さんは真弓さんの事どう思ってるんだろ?」
真弓が答える。
「好意を持ってくれているわ、同僚としても後輩としても、異性として女性としてもね」
は、はぁ〜CさんとDさんのため息が同時に漏れた。
初夏になり真夏が過ぎて新人3人のデザイン知識とデザインテクニックは確実にスキルアップしていき、そろそろ秋の気配を意識し始めた頃の週末、金曜日の1日が終わろうとしていた時だった。
デザイン3チームのデザインワークスペースに営業部長が慌てふためいて駆け込んできた。
営業部長は誰に言うとも無く全員に聞こえる様に声を出していた。
『至急、至急、至急案件なんだ、対応してくれ、誰かお願いだ!』
その声に他のチームリーダー2人が営業部長の元へ近づいた。
2人の姿を見止めた営業部長は書類の束を手近なデスクに広げ先走りの説明を始めた。
真矢達のチームはリーダー不在のままなので遠巻きに様子を伺っていた。
しばらくするとひとりのリーダーが真矢の元へ近づいてきた。
『日曜の昼上げて、月曜の朝持ち込み締め切りの至急案件らしいから、土曜日は私達2チームで対応するから日曜にデザイン仕上げの応援に参加してくれないかな?』
真矢が返事を返す。
『全員がいいですか?』
『そうだね、仕上がり早ければ早い方がいいからね』
リーダーが返事をした。
そう言う事になり翌々日の日曜の朝、9時集合して仕上げ応援をして思惑通りに昼上げを達成する事ができた。
ひと段落つきそろそろと片付けを始めた頃、営業部長が人事部主任を引き連れてワークスペースに現れた。
人事部主任が徐ろに全員に向けて説明を始めた。
それは結果とし土曜日と日曜日の休日出勤した事になり、その取り扱いの説明だった。
土曜休日出勤に対しては残業勤務時間として取り扱うこと。
日曜休日出勤に対しては、今週内に代休を取るように各チーム現場に支障の無く対応をする事とされた。
とは言え、今週内は、月火水木金の5日間でチームメンバーは6人である。
なので、現場に支障無く対応できる曜日に2人代休を取るように指示され代休予定記入表が手渡された。
とりあえず真矢達のチームはそれぞれに代休希望日を書き出す事にした。
月→Aさん
火→Cさん
水→Bさん
木→Dさん
「真弓さんの代休希望は?」
真矢が真弓に尋ねる。
「真矢さんの代休希望は?」
真弓が真矢に尋ね返す。
「そうだなぁ、皆が代休希望の無い曜日のラストの金曜かな?」
真矢の答えに真弓は少し考えると、ジッと真矢の目を見つめ唇だけを動かした。
…一緒の曜日に代休しない…?
…いいね、何処か行くとかする…?
…ふふふ、神戸がいいなぁ…
オッケー!
唇だけを動かした話は合いは合意した。
金→ 真弓さんと真矢さん。
金曜の朝、真矢はまるで職場に向かうかの様に自宅を出た。
待ち合わせ場所には既に、真弓が待っていた。
真矢の車を見つけると真弓は素早く駆け寄り素早く乗り込んだ。
真弓が助手席に収まると真矢は市街地を避けながら車を神戸へと走らせた。
1時間も走らせると県境にさしかかる。
それまで、身を潜める様に無口だった真弓が真矢にひとつ尋ねた事で会話が始まった。
「今日の代休、彼女さんに言ってあるの?」
「いや何も、普通の平日だからね」
「そのよね、普通の平日よね、私も誰にも言ってない」
「平穏無事な平日として過ごしてほしいから」
「うん、平穏無事だよね」
うん、うん、と真弓は頷き納得顔になり少しだけ悪戯ぽく微笑み言葉を続ける。
「県境、越えたね~ここから恋人同士で良いよね~」
「もちろん恋人同士が良いよ」
「じゃ、呼び捨てで良い?」
「もちろん良い!」
職場では、全員が互いを呼ぶ時には、さん、付けが義務付けられている。
例え上司からでも、先輩からでもである。
職場での呼び捨ては、パワハラに、ちゃん付けは、セクハラを連想させるためなのだ。
もっとも恋人同士の呼び捨ては真愛を込めてである。
真矢、真矢、真矢〜!!
真弓、真弓、真弓〜!!
あははは〜テンション上がるわ〜!!
三ノ宮の駐車場へ車を止める。
車を止めると真矢は素早く降りて助手席を開け真弓をエスコートする。
どちらからともなく手を繋ぐ、腕を組み肩を寄せ合い身体を寄せ合いブラブラと歩く。
雑誌に載っていたカフェで雑誌に載っていたスィーツを食し、評判の高い珈琲を飲む。
テレビで特集していたベーカリーでパンをいくつも買い込み、雑誌でもテレビでも話題の中華街でランチをした。
ランチを終え、真弓が真矢に尋ねる。
「ねぇ、マリンピアって行ったことある?」
「うん、いちどだけある」
「どんな感じ?」
「あそこってベイエリアじゃん、だからロケーションが良くてさ、このロケーション見るためだけにでもまた来ても良いって思ったね、行く?」
「うん、いく、イク、行く〜もちろん」
マリンピアとは神戸の中心地より少し離れた所にあるショッピングとグルメを楽しめるエリアである。
三ノ宮から車を走らせ目的のマリンピアに着く。
真弓をエスコートして手を繋ぎ先ずはロケーションを目当てに展望デッキへと向かう。
「うわ〜ほんと〜素敵なロケーション、良かった真矢の好きなロケーションを2人で見れて」
展望デッキからの正面に明石海峡大橋が間近に見える。青空をバックに明石海峡大橋がでっかく間近にそびえ立ち海面からは太陽の光が反射したキラメキがさらにロケーションを映えさせる。
真弓と真矢は、手を繋ぎ腕を組み身体を寄せ合い特に宛もなくショッピングエリアをブラブラとしていく。
何気なく世界的有名アクセサリーブランドショップを覗いたとき店員さんから二人は声を掛けられた。
『いらっしゃいませ、ご結婚間近ですか?』
え?えぇ…
思わず真弓と真矢は見つめ合い曖昧に店員さんに頷き返した。
世界的有名アクセサリーブランドショップ内ををもじもじしながらグルリとしてショップをあとした。
真弓と真矢は再び見つめ合い声に出して笑いあった。
「すっごくお似合いの御二人ですね。だって」
真弓が嬉しそうに店員さんの言葉を繰り返しまた見つめ合い声に出して笑いあった。
時間は過ぎてそろそろ夕刻間近となった。
真矢が呟く。
「今日は天気もいいし夕陽綺麗なんじゃないかな」
真弓が答える。
「夕陽見たいなぁ〜」
「じゃ展望デッキで待機だな」
真矢は真弓の手を取り歩き始める。
展望デッキにあるベンチに座り肩を寄せ合い身体を寄せ合っていれば、あっという間に夕陽が真弓と真矢をオレンジ色に照らし染めてゆく。
気がつくと辺りには多くの人たちが夕陽に照らされオレンジ色に染まっていた。
真弓と真矢を照らすオレンジ色がだんだんと濃くなりバレンシアオレンジ色に変わり夕陽が完全に沈み辺りが夕闇に染まり始めた。
夕闇に包まれた展望デッキで真弓と真矢は互いに向き合った、真弓が真矢の胸に額をつけ消えそうな声で呟く。
…終わっちゃう…終わっちゃうよ、1日が…
まだ…まだ、大丈夫だよ…
真矢が切なく呟く。
真矢の呟きに額を離し顔を上げ瞳と瞳を合わせ静かに真弓は瞳を閉じた。
唇と唇が重なり合いふたつの影がひとつになる。
どれくらいかの時が経ち重なりから唇が離れると真弓が呟く。
…宝物、今日の1日が人生の宝物になったわ…
真矢はその呟きに応えるようにさらに強く真弓を抱きしめた。
しばらくして抱きしめを緩めどちらからともなく歩き始めた。
そろそろ県境にさしかかる。
車が地元エリアへと走り込んだ時だった、真弓の携帯電話が着信音を響かせる。
はっと真弓の表情が緊張で強張る。
すかさず、真矢は車内のミュージックボリュームをゼロにする。
真弓が恐る恐る携帯電話を取り出しディスプレイを覗く。
え?Dさんから?
音にならない声で呟き、通話を始める。
『はい、真弓です。はい、お疲れ様です。はい、大丈夫です。はい〜ほんとですか?はい、わかりました。は〜い、失礼します』
通話を終えた携帯電話をぐっと握りしめ真弓の表情が緩んでゆく。
え〜何、なに?
真矢が問いかけると、真弓が答える。
「そろそろ真矢の携帯電話が鳴るよ」
言い終えたと同時に真矢の携帯電話の着信音が鳴る。
真矢は携帯電話のディスプレイを確認しハンズフリーにするとマイク状態で通話を始めるた。
『真矢です。はい、Bさんお疲れ様です。はい、大丈夫ですよ。はい〜何って?ほんとに?はい、異議なしです。わかりました〜では明日、失礼します』
通話を終えた真矢を見つめて話しかける真弓の声が弾んでいる。
「明日、土曜日はチームリクレーションで、ワンダーランドへ行くってね」
「うん、車は僕とBさんが出して分乗乗り合わせだってさ」
「6人だもんね、明日も真矢の車の助手席に乗れますよぅ〜に!」
先ずは今日1日を終え、真弓を自宅まで送り帰宅した。
翌日の土曜日、朝の待ち合わせ場所に真矢が着くと既に、真弓とAさん、Bさん、Cさん、Dさんは揃っていて何やらミーティングをしていた。
おはようございます。真矢が全員に向かって声を掛け挨拶をする。
全員が真矢に向かって挨拶を返す。
申し合わせ通りの様にAさん、Cさん、Dさんが真弓を取り囲み背中を押しながら真矢の車の助手席の前に立たせる。
Bさんは自分の車の運転席で既にスタンバイしていた。
Aさん、Cさん、Dさんはすかさず身体を反転させBさんの車へと向い、全員が乗り込むと同時にいっせいに声を出した。
「真矢さん〜本日の詳細は真弓さんからなので責任持ってワンダーランドまで、レッツゴーです!!」
そして、Bさんの車が走り出した。
あら〜変な気を使わせちゃったわ~真弓と真矢は見つめ合い声に出して笑いあった。
案の定と言うか、申し合わせ通りであろう真弓と真矢は常にツーショットの行動がセッティングされていた。
絶叫マシーンに絶叫ハウス、カフェでの休憩もレストランでのランチタイムもツーショットで過ごしていた。
せっかくなので、真弓と真矢はこの好意に敢えて甘え肩を寄せ合いラブラブを演出して楽しく1日を終えようとしていた。
「記念写真、撮りましょう」
Bさんが全員に声を掛ける。
記念写真用の看板の前に全員で並ぶ。
真弓と真矢を真ん中に並べ、Aさん、Cさん、Dさん、Bさんが囲む様に並び数枚繰り返し撮影して、真弓と真矢を残して4人がその場を素早く離れ囃し立てが始まる。
「寄って寄って、肩を寄せ触れ合わせて、ラブラブな笑顔して〜」
あまりの囃し立てに真弓は頬を赤らめ、真矢は戸惑いながら笑顔が苦笑いになっていた。
そんな2人、真弓と真矢を見つめながらBさんとDさんが嘆きの言葉を並べる。
「お似合いだよね~いわゆる美男美女、可愛い女子とイケメン男子…なんで、相思相愛なのに恋人同士になれないのかね…?」
ともあれ、無事に?6人ワン・チームのリクレーションの1日の終了宣言がBさんからされ現地解散となった。
「真矢さん〜真弓さんを最後まで責任持って送り届けて下さいね~では、また、明日〜」
案の定Bさんの車は、Aさん、Cさん、Dさんを乗せて、お先に〜と帰路についていた。
そんな気遣いに感謝しながら、真弓と真矢は見つめ合い互いに抱きしめ合ってから助手席へと真弓をエスコートして真矢は車を走らせ始めた。
終わり。