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序幕
あの日、医師に『心臓病』と告げられた13年前の時から、私は独り、白く揺れるカーテンとそこから見える景色しかない病室にいる。
普通と違う心臓と、何回も手術した体のせいで私の体は脆く、外なんて身に覚えがある時にはほとんど行っていない。
大人になるまでに心臓の鼓動が止まってしまうらしい。
それならせめて、まだ生きている今、この寂しさから抜け出したい。
沢山お友達を作って、沢山話して、今までがなかったかのような充実した気分で逝きたいなあ。
そんな事をいつも考えて、暇をつぶす。
でも、今日はそんなに暇にはならなかった。
スライドドアが開く音がして、私はそちらに振り向く。
そこに居たのは、担当看護師さんの厚四さん。
「萌歩ちゃん、あのね、隣に新しく此処に入院して来た子がいるの。萌歩ちゃんと同じような患者さん。良ければ仲良くしてくれないかな?」
いつもの日常と、変わったような気がした。
両親だけじゃなく、他の子ともこれから過ごせることが、何より嬉しかった。