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友達作り⑮友達
星
「すみませんっ! 勝手に抜け出してっ!」急いで頭を下げるグループのみんな。怯えきった彼女たちの姿を見て、奈々は確信した。(この子だ……! この子が、天野空……!)「そこの子、誰」空ちゃんは不記嫌そうに奈々の方を向いて、ツンと指をさす。「空、ちゃん……」奈々がぽつりと呟くと、空ちゃんは「ふーん、この子ね」とでも言うかのように指を下ろした。「私のこと知ってるみたいね。そうよ、私は空。まさか1組の子にまで知ってもらってるなんて、さすが私」髪をかきあげて不敵に笑う空ちゃんを見て、奈々は心の中で絶句した。(思っていたキャラと全然違う……っ!)「この子は関係なくてっ、ただ話をしていただけでっ!」お願いだから信じて!と縋り付くように叫んだのは、ちよだった。(ちよちゃん……)自分の身を挺して庇おうとしてくれるその姿に、奈々は胸が熱くなる。(違うっ! 今はこんな感動してる場合じゃないっ!)「いじめて」空ちゃんが、氷のように冷たい声で命じた。「え……?」グループのみんなの動きが、ピタッと止まる。「誰……を?」一人が恐る恐る聞き返した。「その子よ」空ちゃんが再び指をさしたのは――。「私……!?」奈々だった。「その子、邪魔なの。とにかく消して」(消して……っ!? 信じられない。中学生が、日常でそんな恐ろしい言葉を使っていいわけがない!)あまりにも残酷な命令に、奈々は背筋が凍りつく。「だ、だめっ!」沈黙を破って叫んだのは、ゆりだった。「えっ」奈々も、空ちゃんも、驚きに目を見開く。「私もっ! 奈々ちゃんだけはっ!」「うちも! 奈々ちゃんだけは見逃してください!」涙をためながら、みんなが次々に声を上げて空ちゃんを止めようとする。(みんな……)さっきまで「悪グループ」と呼ばれていたはずの6人が、今の奈々の目には、傷つきながらも立ち上がる本物のヒーローに見えた。(こんなところで負けたくないっ! みんなが守ろうとしてくれてるんだもん、私も精いっぱい頑張らなくちゃっ!)奈々がギュッと拳を握りしめ、覚悟を決めた瞬間。「あんたたちはどうでもいいのっ! 私の命令に答えたらいいのっ! だってあんたらは、私の操り人形なんだからっ!」空ちゃんの甲高い怒鳴り声が、暗い廊下に響き渡った。その迫力に、グループのメンバーは全員ビクッと肩を震わせる。(操り人形……。ひどい、ひどすぎる……!)ゆいたちが今までどれだけ苦しんできたかを知っている奈々は、胸の奥から煮えくり返るような怒りが湧き上がってくるのを感じた。「だからっ、あんたらは私の言う通りにしとけばいいっ! だってあんたらはっ」空ちゃんが「操り人形だもん」と言い募ろうとした、その瞬間。「操り人形なんかじゃないっ!」気がつけば、奈々は叫んでいた。自分でもびっくりするくらいの大きな声だった。でも、奈々は言葉を止めなかった。溢れる怒りと悔しさが、次から次へと口から飛び出していく。「みんなは操り人形なんかじゃないっ! 生きている人間だよ! 空ちゃんの召使いじゃないの! みんなが自由に生きるから、生きてる意味があるんだよっ!」奈々は一歩前に出て、空ちゃんを真っ直ぐに睨みつけた。「それをあんたが勝手に操っていいわけない! ゆいちゃんも、ももちゃんも、みんな本当は、誰かを傷つけるんじゃなくて、みんなと仲良くしたいって泣いてたんだよ! 怯えさせて、大切なものを奪って支配するなんて、そんなの、本当の『友達』じゃないっ……!」廊下に奈々の叫びが響き渡り、激しい余韻を残して静まり返った。ゆいたちは、奈々の背中を見つめたまま、涙をボロボロと流している。自分たちの痛みを全部代弁してくれた奈々の言葉が、彼女たちの心を完全に救っていた。「は……?」空ちゃんは、生まれて初めて激しく反抗されたかのように、顔を怒りで歪ませた。「なによそれ。あんたに関係ないじゃない。うざい、本当にうざい……! おい、あんたたち! 何突っ立ってんの!? そいつを今すぐ殴りなさいよ! 命令を無視したら、次は何を川に捨てるか分かんないからね!?」金切り声を上げる空ちゃん。しかし、6人はもう、さっきまでの怯える操り人形ではなかった。「……もう, 嫌」ゆいが、涙を拭いて一歩前に出た。「え……?」空ちゃんが目を見開く。「もうあんたの言うことなんて聞かない。大切なものを捨てられたって、またみんなで探せばいいもん。うちらは、もうあんたの操り人形じゃない……。奈々ちゃんは、うちらの、本当の友達だから!」ゆいの言葉に続くように、かのんも、かなも、ゆりも、ちよも、ももも、奈々の隣に並んで空ちゃんを強い目で睨み返した。「あんたたち……! 裏切る気!? 私に逆らったらどうなるか……!」顔を真っ赤にして地団駄を踏む空ちゃん。そのときだった。「そこまでだ、天野」聞き覚えのある、低くてぶっきらぼうな声が、暗い廊下の向こうから響いた。驚いて全員がそっちを見ると、そこには腕を組んで、もの凄く怒った顔をした佐藤くんが立っていた――。